No.126 2011年3月発行

音響 特集号 ~スーパーハイビジョン音響の収録・再生と評価~

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巻頭言

  • 音響特集号に寄せて
    鈴木陽一 東北大学電気通信研究所教授
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    概要
    音は私たちにとって掛けがえのないものである。コミュニケーションの手段として重要であり,音楽として生活を彩ってくれる。時に,音は騒音として煩わしくもあるが,危険を察知するには大変有用である。当然,放送とコミュニケーション技術における音の役割は大きい。ラジオやCDなどのように音はそれ自体で独立したメディアとなる。更に,音は映像と高い相乗効果を発揮する。無声映画はいざ知らず,現在,音のないテレビジョンや映画を想定することは,まず,不可能であろう。

解説

  • 22.2マルチチャンネル音響方式の標準化動向
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    概要
    将来の高臨場感放送を目指して研究開発を進めているスーパーハイビジョンの音響方式 は22.2マルチチャンネル音響方式である。22.2マルチチャンネル音響方式は,現行のデ ジタル放送で採用されている5.1マルチチャンネル音響方式と比較して,我々が普段聞い ている音により近い音響印象を再現できる3次元音響再生方式である。22.2マルチチャ ンネル音響方式の概要と,現在進めている国際標準化の動向について解説する。
  • 物理音響モデルに基づく音響システムの研究動向
    安藤彰男
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    概要
    臨場感の高い音響を実現するために,さまざまな音響システムが研究開発されている。 これらは,基本となる2チャンネルステレオのチャンネル数を増やすことでより高い臨 場感の実現を目指すマルチチャンネル音響システムと,物理音響的な理論に基づいて音 場の波面の正確な再現を目指す音場再現システムに大別することができる。本稿は,聴 取エリア全体の音場の再現を目指す波面合成方式WFS(Wave Field Synthesis)や最適 聴取位置における音の方向の再現を目指すアンビソニックス(Ambisonics)など,後者 に関する理論的な背景と最近の研究例を紹介する。また,物理音響的なアプローチに よって,異なるチャンネル数を持つマルチチャンネル音響信号間の変換を行う方式につ いて解説する。

報告

  • 音楽録音用超広帯域マイクロホンの開発
    小野一穂/ 杉本岳大/ 田辺逸雄 / 岩城正和/ 黒住幸一†2/ 安藤彰男/ 今永敬嗣†3
    退職 †2NHK-ES †3三研マイクロホン(株)・退職
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    概要
    放送番組の高品質なアーカイブスや,DVD-AUDIO(DVDオーディオ),SACD(スーパーオー ディオCD)など従来のメディアよりも高い周波数の音まで収録可能なメディアへの2次利用を 目的に,周波数100kHzまで収音できる音楽録音用超広帯域マイクロホンを開発した。周波数 100kHzまで収音できるマイクロホンとしては計測用マイクロホンがあるが,計測用マイクロホ ンの振動膜は小さい。従って,計測用マイクロホンは,感度が低く,等価雑音レベルが高いので 音楽録音には適していない。そこで,音の回折効果と振動系の共振を積極的に利用した新しい設 計手法を開発し,高いSN比と広い周波数特性の両立を実現した。
  • 後方の感度を抑圧した狭指向性マイクロホン
    杉本岳大/ 岩城正和/ 小野一穂/ 安藤彰男/ 石井武志 / 今永敬嗣†2/千葉裕
    三研マイクロホン(株) †2三研マイクロホン(株)・退職
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    概要
    屋外収音における音質の向上を目指し,後方の感度を抑圧した狭指向性マイクロホンを開発し た。音響管を用いたラインマイクロホンカプセルと2個の単一指向性マイクロホンカプセルを組 み合わせた構造を採用し,特に,1kHz以下の後方の感度の特性を大幅に改善した。開発したマ イクロホンでは1kHz以下の帯域において,従来のラインマイクロホンと比較して後方の感度を 10 dB以上抑圧することに成功し,周囲の雑音の影響の受けにくいマイクロホンを実現した。複 雑な信号処理回路は必要なく,一般的な放送用のマイクロホンと同じ48 Vファンタム電源での駆 動が可能である。開発したマイクロホンを中継番組で使用し,放送用のマイクロホンとして実用 上,十分な品質であることを確認した。
  • 主成分分析に基づく個人性頭部伝達関数の推定
    松井健太郎/安藤彰男
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    概要
    頭部伝達関数(HRTF:Head-Related Transfer Function)を用いて立体的な音響を提示するバ イノーラル再生においては,聴取者本人のHRTFを忠実に再現することが良好な再生をするため に重要である。しかし,聴取者本人のHRTFの測定には多大な労力とコストを要するので,主成 分分析による基底展開と,部分的な測定からHRTFを合成する簡便な推定手法を検討した。ま た,HRTFの所要近似精度を主観および客観評価実験を行って求め,提案手法の有効性を検証し た
  • 音楽聴取における「感動」の評価要因~感動の種類と音楽の感情価の関係~
    大出訓史/今井篤/ 安藤彰男/谷口高士†2
    NHK-ES †2大阪学院大学
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    概要
    人の好みや感性を考慮して音響システムを評価するために,体験のすばらしさを表現するときに しばしば用いられる「感動」という言葉を用いて評価尺度を検討した。我々は,これまでに心理 実験を行って感動を表現する言葉(以下,感動語)を分類し,感動という言葉で表現される心理 状態が一意ではないことを示した。本稿では,分類した感動語から感動評価尺度を作成し,音楽 聴取における感動を評価させた。その結果,感動の評価値が同程度であっても,楽曲によって感 動評価尺度の評価の傾向は異なり,音楽によって喚起される感動の種類も異なることがわかっ た。また,同じ楽曲を評価した場合に,感動を大きく受けた評定者とあまり受けなかった評定者 の評価値の差は音楽の感情価測定尺度よりも感動評価尺度で顕著であること,感動の評価値は感動評価尺度の評価値の重み付き線形和で近似できることなどがわかった。

研究所の動き

  • 人と人,人と番組を結ぶ公共放送サービスモデル
    teleda(テレダ)の実証実験
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    概要
    放送通信連携の時代における公共放送サービスを実現するための取り組みとして,視聴者同士が横につながる「公共の広場」を提供するためのサービスモデルteledaを開発している*1。teledaはビデオオンデマンド(VOD)の機能と番組レビュー・コメント機能およびソーシャルネットワークサービス(SNS)*2の機能を併せて持つプラットホームである。今回,放送文化研究所と連携してteledaの実証実験を行った。実験参加者は124名で,約3週間にわたりteledaを自由に使ってもらい,視聴ログやアンケートなどを解析して検証を行った。実験では,NHKオンデマンドで配信した見逃し番組や特選番組1,264本を提供し,そのうちの243本が実際に視聴された。
  • スーパーハイビジョンフル解像度カメラ PDF ↓概要

    概要
    スーパーハイビジョン(SHV)は,次世代のテレビジョンを目指して研究開発を進めている高臨場感映像システムである。当所では,SHVの魅力を広く知っていただくために,毎年の技研公開や海外の放送技術展示会などでSHVのコンテンツや各種機器のデモを行っている。 SHV映像の画素数はハイビジョンの16倍の3,300万画素である。しかし,2002年のカメラ開発当初は3,300万画素の撮像素子の製作が困難であったので,830万画素の撮像素子を4枚用いたデュアルグリーン方式(4板画素ずらし方式)でカメラを試作した。

発明と考案

  • 音響信号変換装置,その方法及びそのプログラム PDF ↓概要

    概要

    特徴と利用分野

    本発明は5.1,10.2,22.2などのマルチチャンネル音響を,臨場感を保ちながら少ないスピーカーで再生するための装置およびプログラムに関するものである。再生時のスピーカー数やスピーカーの位置を入力するだけで,そのシステムに適した信号に自動的に変換することが可能である。
  • 背面雑音抑制マイクロホン PDF ↓概要

    概要

    特徴と利用分野

    本発明は,後方から到来する音波に対する感度を広い周波数帯域で抑制するマイクロホンに関するものである。周囲雑音の影響で目的音の音質や明りょう度が劣化しやすい屋外の収音において,後方からの周囲雑音の混入を抑制することができるので,高いSN比で目的音を収音することが可能になる。

論文紹介

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  • 研究会・年次大会発表一覧 PDF