No.120 2010年3月発行

動画用フレキシブルディスプレー 特集号

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • 動画用フレキシブルディスプレー特集号に寄せて
    染谷 隆夫 / 東京大学大学院工学系研究科教授
    ↓概要

    概要
    こんなにもたくさんのディスプレーが人々の生活の中にあふれかえるとは,一体誰が予想していただろうか?そして,これからもその数はきっと増え続ける! 液晶ディスプレーの出現によって,ディスプレーは「四角い箱」から「薄い板」のような存在になった。薄くて軽くなることによって,高精細ディスプレーを装着した携帯電話やノートパソコンをポケットやカバンに入れて楽に持ち運べるようになった。また,生活空間の中に大型ディスプレーをたくさん置いても邪魔ではなくなった。軽量・薄型化が進むに従って,ディスプレーを使うシーンがますます増え,人々の生活になくてはならないものとなった。

解説・報告

  • フレキシブル有機ELディスプレーの研究動向
    時任 静士 / 表示・機能素子研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    プラスチックフィルム上に有機EL(Electroluminescence:電界発光)素子と有機薄膜トランジスターを組み合わせたフレキシブル有機ELディスプレーは非常に薄くて軽く,柔軟性に富み,持ち運びに便利なフルカラー動画用携帯端末ディスプレーとして期待されている。本稿では, フレキシブル有機ELディスプレーの要素技術を,基板,表示部,トランジスター部に分けて解説するとともに,プロトタイプディスプレーの試作動向について紹介する。
  • フレキシブル液晶ディスプレーの研究動向
    藤掛 英夫 / 表示・機能素子研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    大画面薄型テレビが普及していく中で,携帯性に優れて多様な視聴スタイルが実現できるフレキシブルディスプレーが次世代表示技術として期待されている。液晶方式のフレキシブルディスプレーには,ガラス基板で培われた大面積化・高精細化技術が転用可能であり,さまざまな 照明環境に適応できるなどの特徴がある。現在,動画および静止画用途のフレキシブル液晶ディスプレーの実現に向けて,プラスチック基板の間隔を保持するスペーサー技術,液晶材料,フレキシブルバックライトなどに関する研究・開発が精力的に進められている。本稿では,それらのフレキシブル液晶ディスプレーの研究動向をNHKの取り組みを含めて解説する。
  • フレキシブルディスプレー用薄膜トランジスター(TFT)技術の研究動向
    山本 敏裕 / 表示・機能素子研究部 主任研究員
    ↓概要

    概要
    動画表示用の携帯ディスプレーとして,フレキシブルディスプレーの研究・開発が進められている。フレキシブルディスプレー用の薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)の半導体としてはさまざまな材料が試みられており,それぞれ特徴を有している。その中でも有機TFTは柔軟性・軽量性・耐衝撃性に優れており,携帯型の機能デバイスに使用するTFTとして有望である。本稿では,フレキシブルディスプレー用TFTの概要およびプラスチック基板上に形成するTFTとして最も有望と考えられる有機TFTの基本構造と特性について述べる。

論 文

  • 有機TFT駆動による5.8インチフレキシブル有機ELディスプレーの試作
    中嶋 宜樹 / 表示・機能素子研究部 工学博士、 武井 達哉 / 表示・機能素子研究部、 藤崎 好英 / 表示・機能素子研究部 、 鈴木 充典 / 表示・機能素子研究部 、 深川 弘彦 / 表示・機能素子研究部 工学博士、 本村 玄一 / 表示・機能素子研究部 、 佐藤 弘人 / 表示・機能素子研究部 工学博士、 山本 敏裕 / 表示・機能素子研究部 、 時任 静士/ 表示・機能素子研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    有機TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)駆動によるフレキシブル有機EL(Electroluminescence:電界発光)ディスプレーを試作した。今回,有機半導体を低ダメージで微細化できる高分子隔壁構造を導入し,キャリヤー移動度などの電気特性と画面内での動作の均一性に優れたトランジスターアレイをプラスチック基板上に作製した。更に,リン光有機EL素子の材料や層構造の最適化を行い,高効率・低電圧化を達成した。これらを組み合わせて5.8インチのフレキシブル有機ELディスプレーを試作し,表示の輝度や画面内での均一性を改善した。
  • 2層発光層を有する高効率青色リン光有機EL素子
    深川 弘彦/ 表示・機能素子研究部 工学博士時任 静士/ 表示・機能素子研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    自発光の表示素子である有機ELをフレキシブルディスプレーに応用するためには,発光効率を向上させる必要がある。そこで,高効率化が特に困難であった青色のリン光有機EL素子の高効率化を行った。まず,大きな3重項エネルギーと高い電荷輸送性を持つ発光層材料を開発し,それを青色リン光有機EL素子の発光層に用いることで高い発光効率を得た。次に,素子内に2つの発光層を導入し,19%という非常に高い外部量子効率を得た。以上の結果は,開発した材料と素子構造が,今後,青色リン光有機EL素子の発光効率を改善するために非常に有効であることを示している。
  • 低電圧動作・高コントラストのフレキシブル液晶ディスプレーの開発
    藤掛 英夫/ 表示・機能素子研究部 工学博士 佐藤 弘人/ 表示・機能素子研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    大画面で高画質のフレキシブル液晶ディスプレーを実現するために,2枚のプラスチック基板を液晶/ポリマー複合膜で保持した液晶素子の研究を進めている。本方式の素子には高速液晶を用いており,高画質の動画表示が期待できる。今回,プラスチック基板と液晶配列を安定化させるポリマーの硬質化と減量を行い,薄膜トランジスターで駆動可能な低電圧動作を実現した。更に,高コントラスト表示を実現するために,液晶組成を制御して,表示欠陥を低減し黒表示を改善した。作製した液晶素子に高精度な電極形成技術を適用してフレキシブル液晶パネルを試作し,発光ダイオードと導光板から成るフレキシブルバックライトと一体化した。更に,トランジスターマトリックスの外部回路を構成して,液晶パネルをフィールド色順次法で駆動するA4サイズのフルカラー動画ディスプレーを試作した。

研究所の動き

  • インテグラル立体テレビ ↓概要

    概要
    あたかも目の前に実物があるかのようなリアルな立体像が表示できれば,これまで以上にテレビ映像を楽しむことができる。当所では,このような自然な立体像を再現するための将来の立体テレビの研究を進めている。
  • 音声合成による株価の自動読み上げ ↓概要

    概要
    NHKラジオ第2放送の番組「株式市況」では,約830の株価を42分間で読み上げている。決められた時間で多くの株価を早口で読み上げるという仕事は,ベテランのアナウンサーにとっても苦労する仕事である。そこで,高品質な合成音声を用いて,株価を自動的に読み上げるシステムを開発した。

発明と考案

  • フレキシブルTFT基板及びその製造方法とフレキシブルディスプレイ ↓概要

    概要
    本発明は,有機薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)駆動フレキシブルディスプレー用のフレキシブルTFT基板を製造するための技術である。フレキシブルTFT基板となるプラスチック基板に信頼性の高い高性能なTFT素子を,高い開口率で作製することができる。
  • インク組成物,有機EL素子の作製方法 ↓概要

    概要
    本発明は,インクジェット印刷技術で有機ELディスプレーを作製するために必要な有機EL用インクを作製するための発明である。インクジェットで有機EL素子を形成するには,有機EL材料を溶媒に溶解してインクを作製する必要がある。本発明により,インクジェット法での吐出と成膜に最適な有機EL用インクの作製が可能となる。