No.118 2009年11月発行

3次元映像処理技術 特集号

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • 3次元映像への期待
    相澤 清晴 / 東京大学大学院 情報学環 教授
    ↓概要

    概要
     今や映像は生活のさまざまな局面で利用されるようになった。アナログ映像が主流であった15年くらい前までは,映像というと,身近には,通常の放送やアナログのVTRしかなかったように思う。デジタル映像が主流となった昨今では,デジカメや携帯電話やカムコーダーで映像を取得し,個人のPCに撮りだめしたり,インターネット上で共有したりすることがとても手軽にできるようになった。それらのCGV(Consumer Generated Video)以外の映像もインターネットには多く,結果としてそのトラフィック(情報量)の80%が映像だという推定もある。与えられるメディアではなく,自在に利用できるメディアになったことで,利用の多様さが後押しし,映像の浸透度は飛躍した。

解説・報告

  • 3次元映像処理の概要
    岩舘 祐一 / テレビ方式研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
    本稿では,複数のカメラで撮影した映像を処理し,さまざまな方向から見ることができる任意視点映像を扱う3次元映像処理の概要について解説する。当所では,3次元映像処理技術に関連して,将来の高臨場感映像技術や新たな映像制作技術の開発を進めている。その中で,複数のカメラの映像から被写体の形状を計測する技術,その形状に基づいてユーザーが視点操作できる技術,拡張現実感技術と組み合わせたアプリケーションなどを開発した。
  • 伝統舞踊の3次元映像アーカイブシステム
    片山 美和 / テレビ方式研究部 工学博士岩舘 祐一 / テレビ方式研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
     2004年度~2008年度に文部科学省からの委託研究「知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築」を受託し,東京大学と国際電気通信基礎技術研究所(ATR:Advanced Telecommunications Research Institute International)と共同で研究を行った。研究の目的は,能楽などの伝統舞踊を3次元的にアーカイブ化するためのソフトウエア技術を開発することである。その中で,能楽師の動的3次元モデルを生成する手法を開発するとともに,能舞台CGと合成することで,能楽の 全体シーンを3次元映像として表示できるシステムを試作した。

論 文

  • 多視点映像からの3次元モデルの生成
    久富 健介 / テレビ方式研究部冨山 仁博 / 研究企画部片山 美和 / テレビ方式研究部 工学博士岩舘 祐一 / テレビ方式研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
     人物を取り囲むようにカメラを配置して撮影した多視点映像から,フレームごとに3次元モデルを生成する手法およびモデル表面にカメラ画像をはり付けてモデルの質感を与えるテクスチャーマッピング手法について述べる。3次元モデルの生成手法に関しては,精度の高い被写体形状を安定して生成するために,局所的な形状特徴を考慮した拘束条件をステレオマッチング法に導入した。テクスチャーマッピング手法に関しては,表示視点に近い3台のカメラの画像をブレンドしてテクスチャーを生成し,モデル表面にマッピングすることで画質改善を図った。
  • 動的3次元モデルを利用したサッカーのシミュレーションシステム
    冨山 仁博 / 研究企画部岩舘 祐一 / テレビ方式研究部 工学博士
    ↓概要

    概要
     サッカーの試合を視覚的によりわかりやすく解説することを目的として,動的3次元モデルと拡張現実感技術とを組み合わせたサッカーのシミュレーションシステムを開発した。開発したシステムは,サッカーフィールドの模型をカメラで撮影した映像に動的3次元モデルを合成表示する機能と,動的3次元モデルで表現された選手間でのCGのボールのパスを表現する機能を持ち,インタラクティブな操作で選手の位置や向きなどのフォーメーションを変更することができる。
  • 研究所の動き

    • デジタル放送画質監視装置 ↓概要

      概要
        MPEG-2は情報を圧縮(削減)するための映像および音声符号化技術で,放送やDVDへの記録などの分野で広く使われている。映像の圧縮は人の視覚特性を巧みに利用して行われており,圧縮に伴う画質劣化はほとんど目立たないが,入力映像によっては,突発的・局所的に顕著な劣化が現れることがある。安定した品質の放送サービスを提供するためには,画質を常時監視する技術が必要である。
    • 脳活動を利用した視聴者心理状態推定技術 ↓概要

      概要
        番組視聴の質,例えば,番組を視聴しているときの集中度や興味の程度,番組に対する印象などを客観的に評価することを目的として,視聴時の視線や脳活動などの生体情報から視聴者の心理状態を推定する技術の研究開発を行っている。ここでは,笑いを誘う番組を視聴したときの番組に対する印象と脳活動との関係を調べた研究を紹介する。

    発明と考案

    • 多視点カメラ映像表現システム,装置及びプログラム ↓概要

      概要
       被写体の回りに複数のカメラを設置し,カメラの並び順に映像を切り替えることで,あたかも1台のカメラが被写体の周囲を移動しているかのような映像を生成することができる。しかし,すべてのカメラの視線や画角がそろっていないと,映像を切り替えた際に見苦しい映像になる。従来の手法では,カメラを機械的に動かして視線や画角をそろえていたが,カメラキャリブレーションなどに多大な労力を要した。この労力を低減するために,本発明では固定カメラを用いる。ただし,多視点カメラ映像に射影変換処理を施して,視線と画角をそろえる。これまでに,体操選手権,相撲,ロボコンなどの放送番組で利用した。
    • 多視点映像合成装置及び多視点映像合成システム ↓概要

      概要
       本発明は,多視点カメラ映像にボールなどの移動物体の軌跡を多視点映像として描画する技術に関する発明である。スポーツ番組などにおいては,サッカーのフリーキックなどのボールの軌跡を映像に描画し, わかりやすく解説する試みが行われている。しかし,2次元の映像ではボールの変化がわかりにくい場合がある。本発明を用いることで,滑らかに視点を切り替えながらボールの軌跡を擬似立体的に表現するこ とができる。また,空間中のボールの3次元位置が計測できるので,ボールの速度や加速度,高さなど物理的なデータを提供することも可能である。