No.113 2009年1月発行

高密度磁気記録 特集号

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • 次世代高密度磁気記録技術へのアプローチ
    村岡 裕明 / 東北大学電気通信研究所 教授
    ↓概要

    概要
    磁気記録はこれまで音楽録音やテレビ番組録画にカセットテープやビデオテープとして各家庭に広く普及し長い間使われてきたなじみ深い技術である。この技術を厳密に定義すると,アナログやデジタルの電気信号を微小な磁石(磁化と呼ばれる)の並びとしてテープやディスクに記録し,これを好きなときに再生して元の電気信号を取り出す技術である。この技術の範ちゅうには,音声や映像を録音・録画する磁気テープだけでなく,切符やクレジットカードなどの磁気カード類,スーパーコンピューターからパソコンに至るコンピューター,更に,家庭用AV機器に内蔵されている磁気ディスク装置など多種多様な応用が幅広く含まれている。特に,情報系・映像系の応用においては高度に発達した最先端情報システム技術の中核を成す現代の高度情報社会に欠かすことのできないハイテクである。この磁気記録に本質的な革新が最近起こった。

解説・報告

  • 高密度磁気記録技術の研究動向
    林 直人 / 材料・デバイス 栗田 泰市郎 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
      放送の基盤技術の1つである映像記録に関する主要な技術として,高密度磁気記録技術がある。当所においても開所早期からその研究開発を行ってきた。それらの研究成果は,VTR・磁気シート・ハードディスクなどの記録装置として新たな放送サービスを実現するために利用されてきた。現在においても,放送のデジタル化や高画質化に伴い,記録装置の更なる大容量・高速・省電力・小型化を目指した研究開発を進めている。本稿では,記録媒体を中心に,放送における磁気記録技術の変遷とその高密度化技術の研究動向および当所で研究開発を進めているスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)用記録装置の開発の概要について述べる。
  • 高密度磁気記録シミュレーション技術
    宮下 英一 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
      NHK技研では,スーパーハイビジョン(SHV)のような超高精細映像を記録するための超高速・超大容量の記録デバイスの開発を行っている。ハードディスク(HDD)は大容量で転送レートが高いという特徴を有しており,超高速記録システムを構成する基盤デバイスであると考えている。小型で大容量のSHV記録システムを実現するために,HDDのいっそうの高速化・大容量化が求められている。HDDの高密度化を更に進めるためには,記録媒体の高性能化とともに新しい記録方式の検討が必要になる。また,信頼性の高い記録システムを実現するための新たな大容量記録デバイスの開発が期待されている。記録媒体の高密度化や新しい記録方式の開発には,マイクロマグネチックシミュレーション法が有効である。本稿では,高密度記録媒体の設計や新しい記録方式を検討するために,当所で開発したマイクロマグネチックシミュレーション法とその解析例について解説する。

論文

  • CoPtCr-SiO2グラニュラー垂直磁気ディスクの高密度記録特性
    川那 真弓 / 材料・デバイス椎野 弘崇 / 材料・デバイス宮下 英一 / 材料・デバイス林 直人 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
      垂直磁気記録の更なる高密度化には,隣接する記録ビット同士がつながるビットパーコレーションを抑制することが有効であると考えられている。一方,磁気クラスターサイズは記録限界を決定する重要なパラメーターであるが,従来の磁気力顕微鏡では分解能が不足していたので,小さな磁気クラスターサイズを正確に測定することは困難であった。今回,約5nmの高い分解能を持つ磁気力顕微鏡を用いて,CoPtCr-SiO2グラニュラー垂直磁気ディスクの磁気クラスターサイズを測定し,磁気クラスターサイズと高密度での記録特性の関連について調べた。その結果,磁気クラスターサイズと同程度の記録ビット長でビットパーコレーションが起こり始め,このビットパーコレーションがSNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)を劣化させる原因であることを明らかにした。
  • 磁性ガーネット膜を用いた磁気テープの光再生
    岸田 雅彦 / 材料・デバイス林 直人 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    磁気テープの高速再生の実現を目指して,磁性ガーネットを磁気転写膜に用いた磁気テープの 光再生方式を提案する。本方式は複数のデータトラックの並列・同時再生を可能にする。試作 した磁気転写膜では,膜厚1μm当たり約5°という比較的大きなファラデー回転角が得られ た。記録ビット長0.385μmの磁気テープを0.367m/sの速度で走行させて,光再生実験を行った 結果,30dB以上のCNR(Carrier to Noise Ratio:搬送波対雑音比)が得られた。

研究所の動き

  • 超高精細・高速光変調素子 ↓概要

    概要
    電子は「電荷」のほかに「スピン」と呼ばれる性質を持っている。スピンには「上向き」と「下向き」の2つの向きがあり, この性質を利用した新しい機能を持つデバイスが注目されている。 当所では,スーパーハイビジョン用の光記録装置や立体映像表示用のデバイスの開発を目指して,電子のスピンを利用した超高精細・高速な空間光変調器の研究開発に取り組んでいる。
  • 高度BSデジタル放送における新多重化方式 ↓概要

    概要
    高速ダウンロードサービスとは「多数の利用者に安定した伝送ができるBS放送の伝送路を用い,高品質コンテンツを短時間でダウンロードできるようにする放送サービス」である。通信回線を用いるサービスとシームレスに利用できるようにするための研究開発を進めている。このサービスの実現に向け,放送伝送路にIP(Internet Protocol)パケットを効率よく多重する方式を開発した。

論文

  • 磁気記録媒体及びその製造方法,並びに磁気信号再生手段及び磁気信号再生方法 ↓概要

    概要
    本発明は,サーボ信号(トラック位置を示す信号)とデータ信号とを別々の記録層に分けて記録する磁気記録媒体の構成方法およびサーボ信号の記録方法と磁気信号再生方法を提供する技術である。本発明により,データ領域を最大に確保できるとともに,外乱あるいは書き込み制御ミスでサーボ信号が消去されることがなくなり,磁気ディスクの記録容量の増大と信頼性の向上が図れる。
  • 薄膜パターン形成方法,薄膜積層体及びトンネル磁気抵抗素子 ↓概要

    概要
    本発明は,磁気ヘッドやMRAM(Magnetic Random Access Memory)に使われるトンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistive)素子の微細化技術である。本発明を適用することにより,電子線リソグラフィー(電子線で描画する方法)を用いた従来の薄膜パターン形成方法では困難であった長辺の長さが100nm以下の長方形パターンのTMR素子を容易に形成できるようになり,高密度記録に適したTMR磁気ヘッドやMRAMを実現することができる。