No.109 2008年5月発行

超高感度撮像技術 特集号

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • 超高感度撮像技術への期待
    三村秀典静岡大学電子工学研究所長 教授
    ↓概要

    概要
    撮像デバイスで最も重要な特性は感度である。解像度も重要であるが,高感度でないと高解像化はできない。放送において高感度がいかに重要で,また,高感度撮像がいかにすばらしいかを広く知らしめたのは,1995年に函館空港で起きたハイジャック事件である。このとき,事件発生から翌朝まで,テレビはほぼすべてのチャンネルが報道特別番組となった。NHKはHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)カメラを技研から函館に急送し,夜間でも明るく鮮明な映像を放送し,視聴者を驚かせた。

解説・報告

  • 超高感度撮像デバイスの研究動向
    江上 典文 / 材料・デバイス栗田 泰市郎 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    超高感度撮像デバイスは,一般に,特殊用途の撮像デバイスと見なされがちであるが,撮像デバイスの時空間分解能をより高めるためにもデバイスの高感度化が不可欠であり,近年,超高感度化技術の重要性が見直されている。また,緊急報道はNHKの最も重要な使命の1つであるが,夜間に発生した地震などの広域災害や事件・事故をよりはやく視聴者に伝えるには,小型の超高感度カメラが不可欠である。更に,超高感度カメラを用いることで,番組制作での照明に要する電力の削減が可能となり,社会の要請である省エネによる地球温暖化防止にも貢献できる。本稿では,超高感度撮像デバイスの研究開発動向について概要を述べるとともに,代表的な超高感度デバイスであるHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)方式撮像デバイスの最新の研究開発概要とその応用例について紹介する。
  • 有機撮像デバイスの研究動向
    久保田 節 / 材料・デバイス相原 聡 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    当所では,小型で軽量なスーパーハイビジョンカメラの実現を目指して,「有機撮像デバイス」の研究を進めている。有機撮像デバイスは光を3原色に分離する機能と3原色のそれぞれの光から生成された電荷を読み出す機能を兼ね備えた新しい単板カラー撮像デバイスであり,単板式でありながら3板式と同等な撮像特性を得ることができる。本稿では,当所における有機撮像デバイスの研究開発の概要について報告する。

論 文

  • 15μm厚HARP光電変換膜
    大川 裕司 / 材料・デバイス宮川 和典 / 材料・デバイス松原 智樹 / 菊地 健司 / 材料・デバイス鈴木 四郎 / 材料・デバイス久保田 節 / 材料・デバイス江上 典文 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    我々は,夜間の緊急報道や自然科学番組制作を主な目的として,アモルファス(非晶質)セレンでのアバランシェ増倍現象を用いた高感度HARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)光電変換膜の研究開発を進めている。今回,アバランシェ増倍率向上による更なる高感度化を目指して,HARP膜厚を従来の8μmより厚くすることを検討した。これまで,厚膜化したHARP膜では,高輝度スポット光を撮影した際に膜欠陥が発生する問題があったが,厚さ15μmのHARP膜ではその動作温度を30℃以上に制御することにより,その発生が抑制できることを見いだした。更に,その温度に耐えうるようにHARP膜の耐熱性強化を行った結果,アバランシェ増倍率約200を有する信頼性に優れた15μm厚HARP膜の開発に成功した。
  • 1インチ256×192画素アクティブ駆動型HEED冷陰極HARP撮像板
    難波 正和 / 材料・デバイス、 本田 悠葵 / 材料・デバイス、 平野 喜之 / 特許、 宮川 和典 / 材料・デバイス、 渡部 俊久 / 材料・デバイス、 岡崎 三郎 /  、 瀧口 吉郎 / 材料・デバイス、 江上 典文 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    小型超高感度撮像デバイスの開発を目指して,電界放射陰極アレイに高感度なHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)光電変換膜を対向配置した冷陰極HARP撮像板の開発に取り組んでいる。今回は,撮像板の多画素化に向けて,カメラ実装時の配線数の大幅な削減や画素の高速順次駆動が期待できるアクティブ駆動回路を内蔵させたHEED(Highefficiency Electron Emission Device)冷陰極アレイおよびこれを適用した基礎実験用1インチ256×192画素撮像板(画素サイズ50μm×50μm)を試作した。撮像実験の結果,試作撮像板では外部からクロックや同期信号,駆動電圧などを加えるだけでNTSC規格での画素駆動が十分可能であることが確認できた。また,ハイライト(強い光)が入射した場合にも対応できるダイナミックレンジやHARP膜に由来する超高感度・画素数に相当する良好な解像度が得られ,高精細な超高感度,広ダイナミックレンジ撮像板の開発に見通しを得た。
  • 有機膜積層型光電変換素子の色分解特性
    瀬尾 北斗 / 材料・デバイス 相原 聡 / 材料・デバイス 渡部 俊久 / 材料・デバイス 大竹 浩 / 材料・デバイス久保田 節 / 材料・デバイス 江上 典文 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    次世代の超小型・高画質単板カラーカメラの実現を目指して,光の3原色それぞれに感度を持つ有機光電変換膜を積層した新しい撮像デバイスの開発に取り組んでいる。本稿では,有機膜積層構造でカラー撮像が可能であることを検証するために,光の3原色それぞれに感度を持つ有機膜を透明電極で挟み込んだ3枚のサンドイッチセルを試作し,これらのセルを積層した構造で色分解特性を評価した。その結果,試作した積層素子では,光の3原色にほぼ対応した光電流応答が得られ,有機膜を積層した構造で光の3原色を分離できること,すなわち,カラー撮像が原理的に可能であることが確認できた。

研究所の動き

  • 視覚障害者向けニュース速報読み上げサービス
    ~すべての方にいち早く緊急情報を~
    ↓概要

    概要
    地震や津波などの緊急気象情報は,すべての方にいち早くお伝えする必要がある。しかし,テレビ画面に表示されるニュース速報だけでは,目の不自由な方がその内容を知ることはできない。そこで,地震・津波速報の読み上げ音声を音声合成技術によって自動的に生成し,デジタル放送の仕組みによって自動的にお知らせする研究を進めている。
  • 電子透かし ↓概要

    概要
    映像・音声のデジタル化は我々の生活を豊かにする一方,新たな問題も生み出している。民生用ビデオカメラの小型化・高性能化・低価格化は,映画コンテンツの違法コピーというこれまでに無かった新たな問題の原因となっている。小型カメラを映画館に持ち込み,スクリーンを撮影し,これをDVDにコピーして配布する事は違法行為である。最近,映画館では映画本編の上映前に,ビデオカメラの持ち込みや撮影の禁止が喚起されている。しかしながら,このような違法行為に対して有効な技術はなかった。

発明と考案

  • 撮像装置および撮像装置の動作方法 ↓概要

    概要
    本発明は,アモルファス(非晶質)セレンを含む光電変換膜を用いた撮像装置において,温度制御機構を設けて光電変換膜の動作温度を制御することにより,動作中の光電変換膜の欠陥(白キズ)発生を抑制する技術である。本発明により,信頼性の高い高感度なHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)方式撮像デバイスの実現を可能とする。
  • カラー撮像素子 ↓概要

    概要
    本発明は,有機光電変換膜を積層した単板カラー撮像素子とその構造に関するものである。本発明による素子構造を適用することで,従来問題となっていた,積層素子作製時に有機光電変換膜が受けるダメージをなくすことが可能となる。