指向性マイクの研究

特定方向の音をくっきりキャッチ!

複数の音源が存在する番組制作環境では,狙った音のみをクリアに収音することが求められる場合がある。当所では,特定方向の音声のみを収音できる指向性マイクロホンの開発を行っている。より鋭い指向性を持つマイクロホンを実現するためには,マイクロホンそのものの構造を改良する方法と,多数のマイクロホンを組み合わせる方法がある。今回,それぞれの方法の長所を生かした指向性マイクロホンを開発した。

マイクロホンの構造改良による指向性収音

「ショットガンマイクロホン」(以下,ガンマイク)は,音波をキャッチする振動板の前面に,紙が貼られたスリット付きの音響管を取り付けたシンプルな構造により,指向性のある収音を実現する(1図)。電源を必要としないため,屋外の収音でも簡単に使うことができる。しかし開発にあたっては,試行錯誤しながら指向性を調整し,設計に必要なパラメーターの値を求めているのが現状である。そこで,ガンマイク内部での音波の挙動を物理的に計算し,設計パラメーターを自動的に最適化する手法を開発した。

多数のマイクロホンによる指向性収音

ガンマイクは,低い周波数の音に対して鋭い指向性を形成することが苦手である。そのような低い周波数の音に対して,多数のマイクロホンを組み合わせた「マイクロホンアレー」と呼ばれる技術を用いることで,特定方向から到来する音波を強調するとともに,それ以外の方向から到来する音波を打ち消すことができ,鋭い指向性を形成することができる。このマイクロホンアレー技術とガンマイクを利用し,1か所の設置で広帯域に22.2ch音響を収音できるワンポイントマイクロホンを開発した(2図)。

開発したマイクロホンは,これまでに大相撲などのスポーツ中継の制作で活用された。今後,更なる性能の向上を目指して研究を進め,スーパーハイビジョンをはじめとした番組制作に活用していく。

1図 ショットガンマイクロホンの構造
2図 22.2ch音響ワンポイントマイクロホン