No.602010/03

スーパーハイビジョンの表色系
テレビ方式研究部 正岡 顕一郎

 スーパーハイビジョンは、より高い臨場感や質感の再現を目指したシステムです。色彩についても、実在する物体の色を忠実に表現できるように、できるだけ広い範囲の色(広色域)を再現できることが望まれます。映像システムで色を表現する仕組みのことを「表色系」と呼びます。ここでは、スーパーハイビジョンの広色域表色系を紹介します。
 カラーテレビは赤(R)、緑(G)、青(B)の三つの原色の信号を足し合わせて色を再現します。したがって、どのような色を三原色に選ぶかによって再現できる色の範囲が決まります。
 ハイビジョンのRGB三原色の色度点を図1のxy色度図上で示します。馬てい形をした曲線はスペクトル軌跡と呼ばれ、レーザーのような単波長光源の色度に相当します。また、スペクトル軌跡の両端を結んだ直線を純紫軌跡と呼び、スペクトル軌跡に含まれない紫色を表しています。人間が見ることのできる色は、この馬てい形の内側で表現され、馬てい形の中心部から縁に向かって色の彩度が高くなっています。ハイビジョンで再現できる色はRGB三原色の3点を結んだ三角形の内側のみになります。また、図中の基準白色は、R、G、Bが同じレベルの時の色度で、ハイビジョンではD65*1と定められています。
 これまでのテレビは、ハイビジョンも含め、主にCRTの蛍光体の特性の制約からRGB三原色が定められました。しかし、近年のFPD技術の進歩によりCRTの色域を超えた色再現が可能になり、テレビ方式の広色域化の要求が高まっています。このような状況の中、臨場感の高い映像システムの実現を目指すスーパーハイビジョンの色再現について、CRTの制約にとらわれないかたちで検討を行いました。その結果、他のメディアとの互換性、実在する色の再現、コストと性能、デバイスやディスプレイの実現性の観点から、R、G、Bともにスペクトル軌跡上の色を用いる新しい表色系を提案しています。
 図2に、ITU-R*2に提案しているスーパーハイビジョンの三原色色度点とポインターカラー*3と呼ばれる実在する物体色のデータベースの色度分布を示します。ハイビジョンでは、一部再現できない物体色がありましたが、提案の表色系ではほぼすべてを再現できることがわかります。今後、スーパーハイビジョンの他の映像パラメータについても検討し、臨場感の高い映像システムの実現を目指します。

*1 D65 : CIE(国際照明委員会)が定める平均的な昼光色の標準の光
*2 ITU-R : 国際電気通信連合の無線部門で、放送を含む無線技術の標準化機関
*3 ポインターカラー : 実在する表面色の色域を表す測色データ

図1 ハイビジョンの三原色
図2 スーパーハイビジョンの三原色とポインターカラー



Copyright 2010 NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved.
許可なく転載を禁じます。

技研だより NHK放送技術研究所