No.362008/03

電子透かし
人間・情報 主任研究員 合志 清一

 映像・音声のデジタル化は我々の生活を豊かにする一方、新たな問題も生み出しています。民生用ビデオカメラの小型化・高性能化・低価格化は、映画コンテンツの違法コピーというこれまでに無かった新たな問題の原因となっています。小型カメラを映画館に持ち込み、スクリーンを撮影し、これをDVDにコピーして配布する事は違法行為です。最近、映画館では映画本編の上映前に、ビデオカメラの持ち込みや撮影の禁止が喚起されています。しかしながら、このような違法行為に対して有効な技術はありませんでした。

電子透かしとは
 「電子透かし」とは、映像や音声を僅かに変化させてコンテンツにデジタル情報を埋め込む技術です。この変化は非常に僅かで人間の目や耳にはわかりません。電子透かしを用いると著作権信号等様々な情報をコンテンツに直接埋め込むことができます。コンテンツがコピーされるとコンテンツとともに電子透かしで埋め込まれた情報もコピーされます。埋め込んだ電子透かし信号は検出装置を用いると検出することができます。
 暗号やスクランブルはコンテンツを保護する手段として広く用いられています。しかし、暗号は一度解かれてしまうとコンテンツ保護の役割は果たしません。電子透かしは何回コピーされても、コンテンツと共に残ります。
 電子透かしは10年ほど前から研究が盛んになった技術です。これまでコンテンツのデジタルコピーによる違法な複製に対する著作権保護技術として提案されてきました。しかし従来の電子透かしは画面をビデオカメラで撮影した映像信号からは検出できませんでした。画面を再撮すると、埋め込んだ電子透かしが消失してしまうからです。これに対し、今回NHKと三菱電機が共同開発した電子透かしは映画館のスクリーンやテレビ画面に表示された画面を再撮しても残ります。VHS等のアナログコピーを行っても電子透かしの埋め込み情報は消えません。

コンテンツ産業の発展
 今回開発した電子透かしを用いて、いつどこで上映された映像であるかを示す情報を埋め込むことで、再撮が行われた映画館を特定することが可能となります。新作映画配給直後に再撮した映像・音声から作成された違法DVD流通の抑止に貢献できるものと考えています。テレビ画面は年々大きくなっています。再撮もいつしか映画館だけの問題ではなくなるかもしれません。この技術は更に広い範囲で応用することが可能と考えています。
 テレビ番組や映画は人類共有の知的財産です。著作権を尊重しコンテンツ産業の健全な育成を図ることで、知的財産を今以上に豊かな形で次世代に引き継ぐことができます。著作権を守るための技術開発とその技術を導入するための法律・制度の整備を進めることでデジタル化によるコンテンツ産業の一層の発展が望まれます。




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