No.312007/10

翻訳パレット
〜効率的で品質の良い翻訳作業のために〜
人間・情報 熊野 正

 NHKでは、海外向けサービス「NHKワールド」や、国内向けの二カ国語放送や携帯向け外国語ニュースサービスなどのために、毎日多くの外国語番組を制作しています。これらの番組の原稿は一般に、日本語で書かれた原稿を翻訳者が翻訳して作成しています。私たちは、このような翻訳作業を効率的に、かつ品質よく行うための、コンピューターによる支援技術の研究を進めています。

翻訳者とコンピューターによる翻訳作業の分担
 たとえば、日本語のニュース原稿を外国語に翻訳する作業のコンピューターによる支援を考えます。コンピューターが元の原稿を全自動で翻訳する「自動翻訳」は、一見、最良の支援方法のように見えます。しかし、日本語の原稿をそのまま外国語にしただけでは、日本語視聴者とは異なる興味や背景知識を持った視聴者に適切に番組内容を伝えることはできません。また番組の時間枠の制約などさまざまな理由のため、翻訳者は、外国語番組の原稿作成において、しばしば元原稿の内容や構成に手を加えます。私たちは、このような内容や構成に関わる検討は翻訳者が行い、コンピューターはさまざまな調査や提案を行うという分業が、翻訳品質の維持と翻訳作業の効率化を両立する一つの解になると考えています。

翻訳パレットによる協調的な翻訳作業
 現在私たちが開発している「翻訳パレット」は、翻訳者がコンピューターとこのような協調作業を快適に行うことを目指した翻訳ツールです。翻訳パレットは翻訳対象の原稿を読み込むと、あらかじめ過去の原稿翻訳例データベースの中から共起に基づいて単語や表現の対訳を自動収集しておいたものを用いて、翻訳元原稿中の単語や表現の翻訳を自動的に提案します。また、翻訳者の指示に応じて、過去の翻訳例を検索し提示する機能を持っています。翻訳者は、提示された過去の翻訳例などを参考に翻訳の方針をたて、必要に応じて提案された翻訳を使いながら翻訳原稿を執筆することができます。
 現在、この他にも、電子辞書やインターネット検索を利用した翻訳の提案など、いくつかの機能が実装されています。今後も引き続き有用な検索や翻訳提案を行う機能を開発し取り入れていくことで、より翻訳者の役に立つツールを目指したいと考えています。

*共起…単語や表現の対が共に現れること。大量の日本語記事とその英訳を対比した時、常に対となって出現(共起)する単語同士は対訳である可能性が高い。この性質を使って対訳を自動収集する。

翻訳パレット画面



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技研だより NHK放送技術研究所