No.502009/05

連載 「放送を支える記録技術」(全4回)
 連載「放送を支える記録技術」では、「ビデオテープ」に代わる新しい映像記録メディアとして高性能化が著しいハードディスクの高密度記録技術と、飛躍的な大容量化が将来期待できるホログラム記録技術について紹介します。

第4回 「ホログラム記録」
材料・デバイス 室井 哲彦
 取り外して保管したり持ち運び可能な記録媒体として、Blu-Rayのような光ディスクが実用化されています。しかし、超高臨場感映像スーパーハイビジョン用の光ディスクには、Blu-Rayディスクの100倍以上の記録容量と転送速度が必要です。このような映像を記録・再生するための光記録技術として、3次元的な体積記録が可能なホログラム記録技術の研究に取り組んでいます。
ホログラム記録の原理と課題
 ホログラム記録では、“1”と“0”のデジタル信号に対応する白と黒を縦横に並べたページデータと呼ばれるデータを記録・再生に用います(図1)。データを記録する際には、ページデータを空間光変調器に表示して、ページデータと同一の白黒が縦横に並んだ信号光を作ります。この信号光と参照光を同時に記録媒体に照射して、両者の干渉により生じる干渉縞(ホログラム)を記録します。データを再生するときは、記録のときと同じ角度から参照光のみを記録媒体に照射し、その回折光をカメラで受光することによりページデータが再生されます。記録と再生に用いる参照光の照射角度を変えることにより、記録媒体の同一箇所に複数のページデータを多重して記録できるため、ホログラム記録は従来の光ディスクの数10倍から100倍程度の大容量化が可能となります。また、データを2次元のページデータとして扱うため、従来より高いデータ転送速度が得られると期待されています。ホログラム記録では、フォトポリマーという材料を記録媒体に用いることにより、高密度な多重記録とともに、記録データの長期保存性が期待できます。しかし、記録の際に、フォトポリマーの反応が原因で記録媒体が微小に収縮し、干渉縞がひずんで記録されてしまうという現象が発生します。これまでは、この干渉縞のひずみにより再生されたページデータが劣化するという問題がありました(図2(a))。

図1 ホログラム記録におけるデータの記録

波面制御技術を用いた干渉縞ひずみ補償
 この問題を解決するため、光の波面を制御する技術を用いて再生データの劣化を改善する手法を開発しました。この手法は、光の波面を制御するデバイスを用いて、ホログラムに照射する参照光の波面を、干渉縞のひずみを相殺するように制御し、光学的に干渉縞のひずみを補償します。この光波面を制御するデバイスを適切に制御することが課題とされていましたが、生物が環境に合わせて進化する過程を模した遺伝的アルゴリズムを用いて制御する手法を開発しました。その結果、干渉縞の歪みの補償に適した参照光の波面を得ることができました。これにより、従来、媒体収縮による干渉縞のひずみのため再生できなかったデータが再生できるようになるなど、再生データの劣化を大幅に改善することができました(図2(b))。
 今後、この技術を用いて記録密度の向上を図り、大容量記録と転送速度の高速化が可能なホログラム記録装置の実現を目指します。
(a)干渉縞のひずみ補償なし
(b)干渉縞のひずみ補償あり
図2 ホログラムからのデータの再生


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