No.36
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2002/07
〜自由に曲げられる自発光型
フレキシブルディスプレイを目指して〜
燐
(りん)
光性高分子EL材料の
開発
表示・光デバイス
主任研究員
時任 静士
薄くて軽く自由に曲げることができて、持ち運びに便利な自発光型フレキシブルディスプレイの実現を目指した有機EL素子の研究を進めています。
固体物質を電気で刺激することで光が出る現象を総称して電界発光(electroluminescence:EL)と呼びます。その物質の1つに有機EL材料があり、低分子材料と高分子材料があります。これまでEL素子用に広く研究が進められてきた低分子材料(柔軟性に乏しく丸められない)に比べて、高分子材料はまだ発光の効率が低く寿命が短いという問題があり、従来の蛍光の発光機構のままでは、大幅な高効率化・高輝度化は期待できないと言われています。
技研では、新しい機構で発光する高分子材料を開発しました。電気を流すことで生じる材料の励起状態には励起1重項状態と励起3重項状態があり、1:3の比率で生じます。一般に、励起3重項状態は光を発せず熱としてエネルギーを失いますが、特殊な分子構造にすることで光(燐光)を発生します。その分子構造は、電子や正孔などの「電荷輸送単位」が連なった高分子鎖の中に、高効率で発光する「燐光単位」を最適濃度で導入した構造です(図1)。
この高分子材料の場合、励起1重項と励起3重項の2つの状態を利用できるため、従来の蛍光の発光効率限界値5%の4倍、すなわち20%の発光量子効率が得られることが期待できます。赤・緑・青の3色(RGB)の燐光性高分子を用いて試作した高分子EL素子(図2)によって、従来に比べると高い発光量子効率を得ることに成功しました(図3)。
特徴
1.
分子構造を制御することにより、従来の蛍光の限界(5%)を超える高効率のRGB発光が得られます。
2.
素子構造が簡単なため、印刷法やインクジェット法などの簡便なデバイス製作技術を適用でき、大画面、高精細なディスプレイを低コストで実現できる可能性があります。
3.
添加物も含めてすべて高分子材料のため、フレキシブルなディスプレイに好適です。
今後は、青色の発光を一層鮮やかな青色に改善するとともに、発光効率をさらに高めるための改善を進めます。また、インクジェット法などの製作技術を適用して、フルカラーパネルの試作を行います。
本研究の高分子EL材料開発は、昭和電工(株)と共同で行いました。
図1 開発した燐光性高分子の基本的な分子構造
図2 試作した高分子EL素子の構造
図3 得られたRGB発光の量子効率と従来の最高値(□)および限界値(点線)
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技研だより
NHK放送技術研究所