5月25日(金)の研究発表の概要です。


スーパーハイビジョン用120Hzイメージセンサー
 技研では、より高品質で臨場感のある次世代放送サービスを目指して、画素数が水平7680×垂直4320、フレーム周波数が120Hz(順次走査)、階調が12ビットで、広色域RGB表色系を採用したフルスペックスーパーハイビジョンの研究開発に取り組んでいる。今回、フルスペックスーパーハイビジョンカメラの実現に向けて、画素数、フレーム周波数ならびに階調の仕様を満たす、有効撮像領域の対角長が約25mm、消費電力約2.5WのCMOSイメージセンサーを試作した。
 本報告では、画素数約3300万でフレーム周波数120Hz、階調12ビットという高速動作を実現するために新たに開発した、超高精細・高フレームレートイメージセンサー用2段サイクリック型A/D(アナログ/デジタル)変換回路と多並列信号出力回路について説明する。また、それらの回路を用いたイメージセンサーの構成、仕様、動作について述べる。さらに、撮像実験などによって得られた本イメージセンサーの諸特性や、本イメージセンサーを適用した動作検証用の3板式カラーカメラのシステム構成について紹介する。


スーパーハイビジョン用プラズマディスプレイ
 スーパーハイビジョン方式では、高い臨場感と豊かな質感の映像を表示するために、大画面で高い精細度のディスプレイが求められる。技研では、大画面化が比較的容易であり、優れた動画表示性能、高いコントラスト、広い視野角特性などを特長とする、自発光・直視型の表示デバイスであるプラズマディスプレイ(PDP)の開発を進めてきた。今回、世界で初めてフル解像度(7680×4320画素)の対角145インチのPDPの試作に成功した。
 本報告では、対角145インチ、画素ピッチ0.417mmの大画面超高精細PDPに、スーパーハイビジョン映像を安定に動画表示するために開発したパネル駆動技術を紹介する。開発した駆動技術では、ディスプレイの明るさを制御する際に、画面の垂直方向に隣り合う複数ラインの画素を同じ明るさで表示する、複数ライン同時走査技術を適用し、パネルの走査駆動を高速化する。さらに、この技術を適用する明るさの範囲と、同時走査のライン数を適正に選ぶことで、高速化に伴う画質低下を抑えた安定な動画表示特性を得ることができ、全画面のラインの走査を可能とした。


スーパーハイビジョン音響用バイノーラル技術
 技研では、スーパーハイビジョンの音響方式として、22.2マルチチャンネル音響の研究を進めている。この方式は、テレビの視聴位置を取り囲むように立体的に多数配置したスピーカーにより、3次元的な音響空間の再現を可能とするものであるが、これを家庭で簡易に再生するための要素技術としてバイノーラル技術の研究を進めている。バイノーラル技術は、音源から両耳までの音の伝搬特性(HRTF)を模擬することにより、音を聞く人に任意の方向から音が到来するかのように知覚させるものである。この技術を応用することで、22.2マルチチャンネル音響を、ヘッドホンや従来のステレオ装置など、より簡易なシステムで再生することができる。
 本報告では、バイノーラル技術の基礎となるHRTFについて、その測定から補正手法まで概説するとともに、応用例として、中継車やロケ現場での音響モニタリングに使用されている22.2chヘッドホンプロセッサーを紹介する。さらに、22.2マルチチャンネル音響を、視聴者前方に置いたスピーカーだけで再生する方式について紹介し、研究の現状と実用化に向けた取り組みを述べる。


スーパーハイビジョン放送に向けた次世代地上大容量伝送技術
 2011年7月24日に全国(東北3県は2012年3月31日)で地上アナログテレビジョン放送が終了し、テレビジョン放送のデジタル化が完了した。技研では、次世代の地上放送でスーパーハイビジョンを家庭に届けることを目指して大容量伝送技術の研究・開発に取り組んでいる。技研で開発し日本の地上デジタル放送方式となっているISDB-Tを基本に、偏波MIMO−超多値OFDM技術を用いて伝送容量を拡大し、UHFの2チャンネルを用いた試作システムで地上波によるスーパーハイビジョンの伝送を実現した。
 本報告では、次世代地上放送に向けた大容量伝送技術について紹介する。まず、水平偏波・垂直偏波を用いて偏波多重伝送を行う偏波MIMO技術と、変調多値数を4096まで拡大した超多値OFDM技術の具体的な構成を説明した後、偏波間のレベル差やマルチパス歪(ひず)みに起因する伝送特性の劣化を改善するために適用したLDPC符号の復号方法の工夫や偏波間インターリーブ等について報告する。さらに、市街地で実施した野外実験の結果について紹介し、最後に今回技術展示するUHFの2チャンネルを用いたスーパーハイビジョン伝送実験の概要について述べる。


ソーシャルテレビシステムteledaでの視聴行動分析
 近年、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が爆発的に普及しており、ユーザー同士でテレビ番組の視聴体験を共有する動きが活発化している。技研では、テレビ番組の新たな楽しみ方を提供するため、放送サービスとSNSを融合したソーシャルテレビシステムteledaを開発している。teledaでは、過去に放送された番組や現在放送中の番組を見ながら感想を書き込み、視聴体験を共有する機能が提供される。放送局と視聴者という「縦のつながり」だけでなく、視聴者同士の「横のつながり」を構築することで、視聴者は他の視聴者とのコミュニケーションを介して新たな番組に出会う機会が広がる。
 本報告では、提案するサービスモデルと、番組やソーシャルグラフなどのリソースを公開するためのteleda APIを中心とするシステムを説明するとともに、2010年度に行った参加者数1000人、実験期間3ヶ月にわたる実証実験の概要と視聴行動分析の結果を紹介し、放送サービスとSNSを融合したサービスの可能性について述べる。さらに、機能を拡張して2011年度に行った実証実験の概要を紹介し、今後の取り組みについて述べる。


日本語テキストから手話CGへの翻訳技術
 NHKは、聴覚障害者向けに字幕放送の拡充に努めているが、手話を母語とする聴覚障害者向けに手話サービスの拡充も求められている。この実現のために、技研では、日本語テキストを手話CG(コンピューターグラフィックス)に自動翻訳する技術の研究に取り組んでいる。手話は日本語とは異なった文法体系であるので、言語間の翻訳処理が必要であり、今回、我々はコーパス(大量に集められた言語データベース)に基づく自動翻訳技術を開発した。
 本報告では、我々が開発した自動翻訳技術、ならびに本技術を用いて試作した気象情報の日本語−手話CG翻訳システムについて紹介する。自動翻訳技術では、日本語と手話の対訳コーパスを用いることにより、手話の文法を意識することなく翻訳することができる。また、対訳コーパスを節や句の単位に分割して、直接利用したり(用例翻訳)、学習データとして間接的に利用することにより(統計翻訳)、さまざまな日本語表現を手話に翻訳することが可能となる。手話CGは、この翻訳結果に、すでに開発した大規模対訳辞書を適用することで、広範囲にわたる手話を表現できる。

5月24日(木)から27日(日)午前10時から午後5時まで
講演/研究発表