デジタル放送におけるさまざまなサービスや情報を「いつでも・どこでも」利用するために薄型・軽量で可搬性の高いディスプレイが求められている。フレキシブルで丸められる超薄型のディスプレイは携帯性や収納性が高く、地上デジタル放送における移動体受信はもちろん、家庭内のディスプレイとしても利便性が高い。柔軟な高分子材料を用いた高分子有機EL素子(polymer electroluminescent diode)はこのようなフレキシブルディスプレイの候補として期待されている。また高分子有機EL素子は印刷やインクジェット法などの塗布プロセスによって作製可能であるため、大型、高精細なディスプレイを低コストで作製できるという特長をもつ。しかし、ディスプレイの低消費電力化と長寿命化が現状での大きな課題となっており、特に消費電力の点で発光効率の大幅な改善が求められている。 有機EL素子では、蛍光と燐光の2つの発光過程が存在することが知られているが、通常の有機材料では蛍光のみが発光し、燐光は熱となってしまうため、発光効率は原理的に5%を超えることができない。したがって、発光効率の抜本的な改善には、燐光を利用することのできる新規な燐光材料を開発する必要がある。しかし、燐光発光の発現は困難であり、これまでに数種類の低分子材料が報告されているだけで、高分子材料の報告例はない。 当所では、高分子有機EL素子の効率改善を目指して、燐光発光の得られる高分子材料を実現するための新しい高分子構造を検討し、それらの合成に初めて成功した。この材料を用いるとともに素子構造の最適化を行った高分子有機EL素子では、赤色、緑色、青色の3色で5%以上の高い外部量子効率が得られ、燐光発光による高効率化を実現することができた。本報告では、当所で開発した燐光性高分子の特徴と、高分子有機EL素子のさらなる発光効率向上のための、高分子構造やデバイス構造の検討について述べる。