夢を技術に、夢を現実に
テレビは進化する
振り返れば、日本のテレビ技術は、高柳健次郎というひとりの研究者の情熱と使命感によって蒔かれた無線遠視法の延長上に多くの有名無名の技術者たちの営々とした努力の中で現在まで発展してきた。夢を実現しようとする情熱は、今までなかった新しいテレビを今後も次々と生み出すことになるだろう。
1994- 放送の未来を切り開く
テレビは進化する
20世紀はしばしば「映像の世紀」といわれた。21世紀はさらに放送と通信が融合したデジタル技術による未踏の世界に入っている。メディアは「3-Screens」の世界を拡張し、すでに進化を続けている。さらに、スーパーハイビジョン、フレキシブルディスプレイ、壁面ディスプレイなどが近未来の放送の視界に入りつつある。
立体テレビの夢、フィクションから現実へ
立体映像への興味はいつの世も人を引き付ける。高柳健次郎もテレビ放送の始まった1953年、学会誌に「立体映画に就いて」と題する小論を寄稿し、その技術は将来のテレビ技術者に必要となるだろう、と記している。
立体映像の研究は古く、現在でも用いられる種々の方式の多くが1900年代初頭までに提案されている。究極の方式といわれるホログラフィは1948年の発明である。これらをテレビに応用する試みはこれまでもなされてきたが、いずれも基礎研究にとどまってきた。
技研では古くから視覚の研究を通じた立体映像の研究がなされてきた。1980年代後半には、立体視やメガネ無しディスプレイなどの研究が盛んになり、その中でハイビジョン技術を2眼式立体に応用した立体ハイビジョンを、1989年に技研公開で初めて展示した。高精細映像に立体感が加わった相乗効果は大きく、NABショーをはじめ展示で大きな反響を呼んだ。また、PDPによる時分割表示などディスプレイやカメラの開発、撮影手法など技術研究のほか実験的な番組制作もおこなわれた。
インテグラル立体テレビ
技研では実物に近くより自然な立体テレビを目指した研究開発を1994年に開始した。インテグラル立体テレビは、2Dでは画素に相当するレンズを多数並べた「レンズ板」を撮影と表示の双方に用いる。実物から発せられる光線をそのまま再現できる、空間像再生型の立体方式である。ホログラフィと同様に実物のような像が形成される方式である。
インテグラル方式もホログラフィも、これまでの2D映像とは比較にならないほど膨大な映像情報となる。スーパーハイビジョンをもはるかに超える超高精細な映像デバイスの開発に加え、立体映像の特徴を活かす新たな番組制作手法も必要となってくる。これらの研究はその途に就いたばかりである。
その先の未来へ
立体テレビとはいえ、人間の持つ五感のうち代表的ではあるが映像と音声という2つの感覚にのみ訴えるものでしかない。触覚など、他の感覚と結びついた新しい放送形態の可能性が残されている。白黒からカラー、そして高精細化へと進化してきた道筋とは異なる、より大きな飛躍が必要になる。
スーパーハイビジョンの実用化のさらに将来を臨む未来へとテレビの進化が続いている。
立体ハイビジョン
(NABショー 米ラスベガス、1991)
初期のインテグラル立体テレビ
(1997/1998年)
インテグラル立体テレビで再生された3D映像(見る位置を上下左右に変えて見える映像を合成)

