似ているけど違う!? 小惑星と彗星(すいせい)

はじめまして。このコーナーを担当させていただくことになりました、東京大学の宮本と申します。私は小惑星や火星など、太陽系にある固体天体について、主に探査機の情報を利用して研究しています。このコラムでは小惑星の探査やその科学的な背景などについて、ご紹介していきたいと思います。

はやぶさ初号機やはやぶさ2が、謎に満ちた小惑星の探査を行っている、ということは良く知られているようです。ですが実は、その小惑星という言葉に厳密な定義がない、ということをご存知でしょうか?

いやいやそんなこと言ったって、小惑星は文字通り太陽系にある小さい惑星のようなものでしょ、とお考えになるかもしれません。それは大まかには正しいのですけれど、細かいことを言い出すと難しく、一方で科学的には面白いのです。

たとえば小惑星と同じように小さな天体に、彗星があります。彗星は、ほうきぼしとも呼ばれるように、尾が伸びた姿をしていますが、これは彗星が持つ揮発性成分が、太陽光で暖められて蒸発し太陽と反対側に広がったものです。

この彗星が太陽から遠い領域にあると、表面の温度は低いままです。すると揮発性成分が蒸発せずに尾が作られません。これは彗星と呼ぶべきでしょうか、小惑星と呼ぶべきでしょうか?

また尾を作る揮発性成分が、完全に枯渇してしまうこともあるかもしれません(このような彗星は枯渇彗星核などと呼ばれています)。これまた小惑星と、何が違うのでしょうか?

さらに、惑星間塵(わくせいかんじん)と呼ばれるものがあります。地球の周辺や地球と火星の間などで、数μメートルから数センチメートルくらいの大きさの無数の塵が見つかっています。恐らく太陽系中のあらゆるところで見つかるのでしょう。ではいったいどれくらいの大きさから、小惑星と呼べば良いのでしょうか?

こうした問いに厳密に答えることは難しく、そのため小惑星や彗星、惑星間塵を厳密に定義できずにいるのです。そのためこれらを総称して、太陽系小天体と呼ばれるようになりました。しかしその一方で、やはりある程度は互いを区別できる用語があった方が便利です。

そのため科学の現場では、厳密では無いことを承知した上で、太陽系小天体のなかで、比較的太陽に近い領域にありながらも、彗星の尾のようなものが無く、塵というほど小さくないものを、小惑星と呼んでいます。

というわけで、小惑星と呼ばれる天体がどういう天体なのかうまく言えないけれども、その小惑星を調べるのが小惑星探査機、ということになります。しかしそれくらい謎に満ちている対象を調べるわけですから、小惑星探査は探査を行うたびに、驚きの大発見がもたらされているのです。

※小惑星は主に火星と木星の間に存在し、数十万個はあると考えられている

宮本英昭
東京大学大学院工学系研究科教授/ TeNQ リサーチセンター長