NHKスペシャル 「地球市場・富の攻防」(10回シリーズ)

第9回 最強商品・スーパースター
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  2002年、アメリカのプロバスケットリーグNBAに、ひとりの選手が衝撃的なデビューを果たした。身長226センチ、中国人選手、姚明(ようめい)である。姚明選手は低迷していた所属チームを躍進させたと同時に、ビジネスの面でも莫大な利益をチーム、リーグ全体にもたらした。試合会場には多くの中国人がつめかけ、観客数は飛躍的に伸び、放映権料は中国のテレビ局が争い、高騰した。
 グローバリズムが最も劇的に進んだのがスポーツビジネスの世界である。多チャンネル化で巨大なテレビマネーを得たサッカー、バスケット、野球などの各球団は破格の年棒を用意して世界中からスーパースターを根こそぎさらってきた。狙いは海外市場の開拓である。外国から選手を引き抜けば、その国での放映権料が手に入り、スポンサー企業の知名度が高まる。もはや国内市場が飽和状態を迎え、プロスポーツでは一挙にグローバル戦略を拡大させている。
 中国市場開拓の最強の広告塔、姚明選手をめぐって今、世界の企業が激しい争奪戦を繰り広げている。地球市場を制覇する決め手となる、スーパースター争奪の裏側にあるビジネス戦略を追う。



第10回 命をめぐる覇権 〜バイオビジネスの戦略〜
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遺伝子情報をもとに作られた抗がん剤
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がんに挑戦するバイオテクノロジー
 がんや白血病など、これまで不治の病とされてきた病気を薬で治す。最新のバイオテクノロジーは、画期的な医療を実現しようとしている。病気を引き起こす遺伝子の働きに着目し、タンパク質に直接働きかけるゲノム創薬である。
 スイスの大手製薬会社、ノバルティスファーマ社は、ゲノム創薬第一号とも呼べる、慢性骨髄性白血病の治療薬を開発、世界で5万人の患者の命を救った。ノバルティス社では、去年、860億円の売り上げを記録した。
 ばく大な利益をもたらすゲノム創薬。今、世界の製薬各社は、数千億円のばく大な研究開発費をかけて、し烈な新薬開発競争を繰り広げている。それだけの費用を投じても、ゲノム創薬の特許獲得競争に勝ち抜けば、余りある利益が見込めるからだ。
 しかし、新薬開発競争は一方で、特許の独占による医療費の高騰や、新薬の原料となる生物資源をめぐる途上国との衝突など、新たな問題を引き起こしている。
バイオテクノロジーの恩恵は人類の共有財産なのか、ひと握りの勝者のものなのか、世界規模で繰り広げられるゲノム創薬開発競争を舞台に、特許の世界を描いていく。