シミュレーション

“スーパー台風” 予測の誤差が招く
最悪のシナリオ

2017年12月4日

近い将来、もし本州にスーパー台風が接近し、その予測を誤ると、最悪の場合、どんな事態が起こりうるのか。台風や洪水、高潮の専門家の協力を得たシミュレーションの結果とは?

舞台は最も深刻な被害が予想される、東京の東部の海抜ゼロメートル地帯。250万人以上が暮らしている。

台風接近の24時間前、東京の東部のある自治体。

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区長「気象庁への問い合わせは?」
気象庁担当者の声「勢力は弱まる見込みです。関東に近づく頃には940hPaくらいになるではないかと思われます。」
区の職員「東京には来ないですかね?」
気象庁担当者の声「現時点では、東京は予報円の中心から外れています。」

このとき台風は、九州の東の海上、中心気圧は920 hPaまで発達。一方で、この時点の予測は、次第に勢力が弱まり、進路も東京からそれていくというものだった。

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江戸川区や葛飾区など、5つの区では、「広域避難」という独自の対策を打ち出している。
浸水の恐れがある地域の100万人単位の住民が、事前に、鉄道や車で区の外へ避難するという大規模な対策だ。

計画では、広域避難勧告を発表するのは上陸の24時間前。「930hPaで直撃する」という予測が出た場合とされている。しかしこの時点の予測は、940hPaで、広域避難の基準には達していない。

区長「勢力が弱まるなら、ひとまず様子を見よう。」

ところが予測に反し、その後も台風は勢力を維持し続ける。東京上陸15時間前の、午前0時。

気象庁担当者の声「台風の勢力は予想以上に強くなっています。関東に上陸する可能性も高まってきました。」
区の職員「えっ、そんな!」

940hPaという事前の予測は外れ、930hPaという勢力で東京に上陸する可能性が出てきたというのだ。時刻はすでに深夜。100万人単位の住民に広域避難を呼びかけるのは容易ではない。

自治体は、夜が明けるのを待って、「広域避難勧告」を発表。しかし、すでに台風上陸の9時間前。この段階からの広域避難は、困難を極める。

住民「ねえ、他の人たちが避難しているかどうか、様子見てきてよ。」
住民「雨が凄く強くて出られないよ…分かったよ。すぐ避難所に行くから」
住民「こりゃ無理だよ」

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雨や風が強まり、鉄道やバスは相次いで運転を見合わせる。一方、浸水の恐れがある病院では、広域避難勧告を受け、急遽、入院患者を周辺の病院に移す準備に追われる。

ところが…避難しようとする車で、大渋滞が発生。
救急車車内「ダメだ、まったく進めない」

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そして午後3時。台風は930hPaの勢力で上陸。東京湾には、5メートルもの高潮が押し寄せる。大雨で増水した荒川が氾濫。避難途中の人や車が次々と飲み込まれる。

浸水域は江戸川区や葛飾区など5つの区の3分の1以上に及び、最悪の場合、死者は数千人に上る恐れもあるという。

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台風が去ったあとも危機は続く。逃げ遅れた住民は数十万人にも上り、浸水域に1週間以上取り残される恐れがある。台風の予測を誤れば、多くの住民の命が危険にさらされるのだ。

詳しくは、未曾有の危機!? 予測不能な「異常気象」に挑む科学者たちの戦い

この記事は、2017年9月9日に放送した 「NHKスペシャル シリーズ MEGA CRISIS 巨大危機Ⅱ~脅威と闘う者たち~ 第2集 異常気象・スーパー台風 予測不能の恐怖」 を基に制作しています。

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