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「見えない貧困」 3人の実像

2017年3月6日

一見、不自由ない暮らしを送っているように見える子どもでも、「見えない貧困」と「剥奪」に苦しんでいる場合がある。「見えない貧困」が招く剥奪とはどのようなものなのか? 中学3年生、高校2年生、高校3年生の生活からその実態が見えてきた。

中学3年生 彰君のケース

中学生の彰君(仮名:15)は、母親の陽子さん(仮名)、高校生の長女(18)、小学生の次女(11)とともに関西地方で暮らす4人家族。週に5日、病院でパートをしている陽子さんの収入は月におよそ14万円。児童扶養手当などを含めても相対的貧困の状態で、家賃や光熱費などを引くとほとんど手元には残らない。家族の暮らしは一見、不自由なく見えるが、家具や家電、ピアノなどそのほとんどが、人から譲ってもらったもの。彰君が持っている運動靴は穴のあいた一足のみで、制服のシャツは3年間姉のお下がりで通した。本もほとんど買ってもらったことがない。

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彰君は中学校の3年間、バスケットボール部でキャプテンとして活躍してきた。しかし、経済的な事情から高校でバスケを続けることは諦めている。
「お母さんがどんだけ頑張っても収入とか大体分かってるってのもありますし。自分も我慢できることなら我慢せなあかんなっていう」
彰君は、家庭の経済的な事情を友達に話したことはない。
「なんか人より劣ってるっていう言い方はたぶん変なんですけど、友達みたいに欲しいもんすぐ買ってもらえんかったりとか、そんなん(経済的な事情)は、あんまり言いたくないですね」

高校2年生 理恵さんのケース

アルバイトの実態について行われた学校のアンケートで、「働くことが多くて、少ししんどいです」と書いた理恵さんは、高校入学と同時にアルバイトを始めた。アルバイトは週4日。休日は1日8時間、平日は4時間働いている。ファミリーレストランでの仕事を終えると、すぐに次のアルバイト先のコンビニに向かう。

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母親の収入は手当も含めて、およそ月18万円。理恵さんはそれには頼らず、月におよそ7万円のアルバイト代を生活費や友達との交流費、さらに通学費用や進学のための積み立てにあてている。母親と理恵さんの収入をあわせると、世帯収入25万円近く。アルバイト代が家計の支えになっている。

週末は働きづめのため、疲れがたまって学校を休むことも増えた。
「朝から学校に行くのがしんどくなって。みんなにも気をつかうし、学校を休むくらいなら行かなくてもいいんじゃないかと悩んだ時期もあったんですけど、やっぱり学校をやめたら今ここでやめたら、この先、何もできなくなるかもしれないし」

まもなく高校3年生になる理恵さんの一番の悩みが進路の選択だ。理恵さんは、専門学校や大学に進学したいと、アルバイト代をためている。しかし、その貯金だけでは進学することはできないと言う。
「就職だとそんな学費もかからないから、お母さんは就職だとうれしい感じだと思います。自分がもし就職しないで専門学校に行くというと驚くと思うし。そんなお金ないと言われそうだなと、そういう面では、怖い気持ちはありますね」

高校3年生 真央さんのケース

英語の教師になりたいと大学進学を目指している高校3年生の真央さん(仮名)。成績は学年トップクラスだ。

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両親と3人暮らしの真央さん。父親は定年退職しており、年金があるため相対的貧困にはあたらないが、住宅ローンの返済などで余裕はない。真央さんは、パート収入で家計をやりくりしている母親に負担はかけられないと進学費用は親に頼らず、奨学金を借りることにした。
「無利子なのと、二種の有利子なんで、あわせて月12万円です。嫌だけど、まあ仕方ないですよね。自分の夢なんで。かなえるために借りてるんで」

しかし、間近に受験が迫るなか、奨学金を借りても入学できないリスクに直面した。問題となったのは奨学金の支給が始まる前に払わなければいけない入学金など78万円。真央さんは、教育ローンを借りるしかないと学校の先生から説明された。学生モデルが笑顔を浮かべる教育ローンのパンフレットを見ながら、真央さんはこうこぼした。
「笑っている場合じゃないんですよ、これを借りるときは。合格は頑張ればできるけど、行くのは自分が頑張っても難しいですよね。なかなかしんどい」

詳しくは、子どもに広がる「見えない貧困」

この記事は、2017年2月12日に放送した 「NHKスペシャル 見えない“貧困” ~未来を奪われる子どもたち~」 を基に制作しています。
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