2008年春3月、奈良薬師寺の日光・月光菩薩が東京国立博物館で開かれる国宝・薬師寺展のため史上初めてそろって金堂を出た。背中の光背をはずし360度鑑賞可能となった姿は人間の姿に近づき、私たちに迫ってくる。
奈良の薬師寺は、天武9年(680年)に天武天皇によって発願されたが創建当時の建築は東塔をのぞき、火災によって焼失した。しかし、昭和以来の写経勧進によって、白鳳伽藍として創建当時の姿が復元されるという奇跡ともいえることが実現した。750万巻を越える大衆の写経による浄財がそれを支えたのだ。薬師寺はその恩に報い、生き辛い時代を生きる人々の心の浄化に役立てたらと史上初の日光・月光菩薩そろっての公開を決断した。
番組は、自らの心を見つめて写経をする人々の群像を交えながら、この春、日光・月光がそろって金堂を出て東京に到着し、現代を生きる人々と出会うまでを追った。 特別に許可された普段は見られない角度から撮影した薬師三尊像、満月の夜の東塔など伽藍のひときわ美しい姿は私達に何かを語りかけてくる。
日本が青年のようにのびやかでおおらかな伸び盛りの時代に作られた祈りの形が、現代と出会う歴史的な瞬間を伝える。
今の写経ブームに火をつけた薬師寺。人々が薬師寺に託した願いとは何だろうか。それを作った古代人の人々の高い志と、写経に願いを託す現代人の思いを重ね、白鳳時代の美と時代感覚を描く。
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