NHKスペシャル “血糖値スパイク”が危ない ?見えた!糖尿病・心筋梗塞の新対策? 放送:10月8日(土)午後7時30分?午後8時43分 NHKG

健康診断では「血糖値は正常」と言われたのに、知らないうちに体中の大事な血管が痛めつけられ、突然死やがん、認知症まで招いてしまう――。そんな恐ろしい「血糖値の異常」がいま日本人に蔓延しているという事実が、最新研究によって明らかになってきました。名付けて“血糖値スパイク”(食後高血糖)。その知られざる実態と、超簡単な撃退法を大特集!

健康診断では見つかりにくい「血糖値の異常」

「血糖値」とは血液中を流れる糖分の量を示すもので、一般的な健康診断の検査項目にも入っています。これが一定値より高い状態が続くと「糖尿病」と診断されます。
ところが最近の研究で、糖尿病ではない人の中に、「普段は正常だが、“食後の短時間だけ”血糖値が急上昇する」という現象が起きていることがわかってきました。それこそが、今回取り上げた「血糖値スパイク」。番組の調査では、健康診断で正常と言われていた働き盛りの世代65人のうち、20人で“血糖値スパイク”が起きていることが判明。また別の調査では、やせ型の20代女性の5人に1人に、“血糖値スパイク”が起きているというデータもあります。老若男女、誰にでも起こりうる問題なのです。
厄介なことに、この“血糖値スパイク”は「空腹時の血糖値」を調べる通常の健康診断などではなかなか見つけられません。食後1~2時間のうちに血糖値を調べない限り、“血糖値スパイク”が起きていることに気づきにくいのです(下図を参照)。

青線は、健康な人の1日の典型的な血糖値の変化。ゆるやかに上下している。
一方、赤線が「血糖値スパイク」が起きている人。
とがった針のような血糖値の急上昇が、食後にだけ起きるのが特徴だ。
(血糖値が140以上に急上昇すると、「血糖値スパイク」と判定される。)

突然死のリスクを高める”血糖値スパイク”

心筋梗塞を起こして病院に運ばれた40代の男性。検査の結果、心臓から延びる太い血管が「動脈硬化」を起こして細くくびれ、血流が滞っていました。これまで男性は、健康診断で心臓に問題を指摘されたことはありません。しかし、医師から告げられた思いもよらない動脈硬化の原因は、“血糖値スパイク”。なぜ食後の血糖値の急上昇が、動脈硬化を引き起こすのでしょうか?
イタリアの最新研究で、そのメカニズムが突き止められました。血管の内壁の細胞を糖分の多い液と少ない液にかわるがわる浸し、血糖値の急上昇が繰り返されているような状態にしたところ、細胞から大量の「活性酸素」が発生することが判明。活性酸素は、細胞を傷つける有害物質です。“血糖値スパイク”の状態を2週間続けると、細胞のおよそ4割が死んでしまいました。実はこれが動脈硬化につながる原因。
血管の壁が傷つくと、それを修復しようと集まった免疫細胞が、傷ついた血管壁の内側に入り込んで壁を厚くし、血管の内側を狭めていきます。それが「動脈硬化」です。“血糖値スパイク”が繰り返し起きている人は、血管のあちらこちらで少しずつ動脈硬化が進行し、やがて心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高まると考えられます。

動脈硬化によってふさがり、血流が滞った状態の心臓の血管。
こうした動脈硬化が至るところで多発するのが、「血糖値スパイク」を起こしている人の特徴であることがわかってきた。

認知症・がんのリスクを高めることも

通常、食事から摂取された糖分は、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって筋肉の細胞などに取り込まれ、血液中に残る糖分の量(=血糖値)は適正に調整されています。
ところが、生まれ持った体質や生活習慣の乱れが原因で、細胞が糖を吸収する能力が低下することがあります。すると、インスリンが頑張っても、血液中の糖をうまくに細胞に送りこむことができず、血糖値が急上昇します。そこですい臓は、さらに大量のインスリンを出し、なんとか糖を細胞に取り込ませて血糖値を正常レベルに戻します。このようにして、針のように上がり下がりする“血糖値スパイク”が生じるのです。
最近、この「インスリンの多い状態」が体に及ぼす“悪影響”が、明らかになってきました。インスリンが多い状態では、記憶力が衰えやすいことが、ネズミの実験で確かめられたのです。脳を調べると、「アミロイドベータ」という物質が蓄積していました。この物質は、アルツハイマー型認知症の原因とも言われ、脳の神経細胞を死に至らしめる有害な老廃物です。つまり“血糖値スパイク”が生じて体内のインスリンが多い状態の人は、脳内で「アミロイドベータ」の蓄積が進んでいる可能性があるのです。 さらにインスリンには細胞を増殖させる働きがあるため、がん細胞の増殖も促す危険性が指摘されています。

アミロイドベータが脳に蓄積すると、神経細胞が死んで脳が萎縮してしまう。
これがアルツハイマー型認知症の原因とも考えられている。
「血糖値スパイク」は、そんなアミロイドベータを増やしてしまうことが、最新研究でわかってきた。

“血糖値スパイク”が起きているかどうか、どうすればわかる?

福岡県久山町では九州大学と共同で、40代以上の住民およそ8000人を対象に大規模な健康調査を行い、そのおよそ2割に“血糖値スパイク”が生じていることを突き止めました。同様な状況が全国で生じているとすると、日本全体で“血糖値スパイク”を生じている人は1400万人以上もいると推定されます。
さらに大量の調査データを分析したところ、どんな人が“血糖値スパイク”を起こしやすいかという「条件」も明らかになってきました。それを基に、今回番組では九州大学の研究者と共同で、“血糖値スパイク”の危険度を判定できる「チェックテスト」を作成しました。“血糖値スパイク”の起こりやすさに影響する8つの大きな要素から、あなたが“血糖値スパイク”を起こしているかどうか、その危険性を判定することができます。ぜひ試してみてください。

“血糖値スパイク”危険度チェック “全国のみなさんの集計結果

どうすれば”血糖値スパイク”を解消できる?

チェックテストで“血糖値スパイク”の危険度が高いと判定されたら、どうすれば良いのか?ご安心ください。実は最新研究で、恐ろしい“血糖値スパイク”も、ごく簡単な食事や生活の工夫によって、たちまち解消できることがわかってきているのです。
重要なポイントは、ご飯やパンなどに多く含まれる糖質が体に吸収されるスピードを遅くし、血糖値の急上昇を抑えること。
番組では、大きく3つの対策をご紹介しました。

◆対策1 食べる順番は「野菜」⇒「肉・魚」⇒「ご飯・パン」

食物繊維を多く含む野菜などを最初に食べると、食物繊維が腸の壁をコーティングし、後から糖が入ってきた時に、その吸収をゆっくりにする作用があります。
その次に食べるなら、タンパク質や脂質を含む肉や魚など。胃から腸へ運ばれる際、タンパク質や脂質に反応して「インクレチン」というホルモンが放出され、その働きで胃腸の動きが遅くなります。
その後にご飯やパンなど糖質を含むものを食べれば、消化吸収に時間がかかるため、血糖値の上昇が緩やかになるのです。(とはいえ、糖質をたくさんとれば、やはり食後の血糖値の過剰な上昇を招きます。糖のとりすぎには気をつけましょう。)

◆対策2 「朝ごはん」はちゃんと食べよう!「ごはん抜き」は厳禁

実験によれば、1日3食を規則正しく食べている時には“血糖値スパイク”が生じなかった人でも、朝ごはんを抜くと、昼食の後に“血糖値スパイク”が発生。朝食も昼食も抜くと、夕食の後にさらに大きな“血糖値スパイク”が生じてしまうことがわかりました。つまり、しばらく何も食べずにいた後の食事では、“血糖値スパイク”が一層起きやすくなるのです。
忙しくても、きちんと3食食べることが、“血糖値スパイク”を解消する重要なポイントだったのです。

◆対策3 「食後すぐ」の「ちょこちょこ動き」が効果的!

“血糖値スパイク”を抑えるには、運動も大事。と言っても、そんなに大したことをしなくても効果があることが、最近の研究で明らかになってきました。食事のあと、「食休み」と思って動かずにいると、とくに “血糖値スパイク”が起きている人はなかなか血糖値が下がらず、血糖値の高い状態が続いてしまいます。ところが食後すぐにちょっとした散歩をした程度でも、速やかに血糖値が下がることがわかったのです。
食後15分間程度は、消化吸収をよくするため、全身の血液が胃腸に集められます。すると胃腸の動きが活発になり、食事中の糖分もどんどん腸から吸収されて、血糖値が急速に上がりがちです。ところがこの間に体を動かすと、手や足の筋肉などに血液が奪われ、胃腸の活動が低下します。すると、食べたものに含まれる糖分の吸収にも時間がかかり、“血糖値スパイク”が抑えられるのです。
つまり、体を動かすなら「食後すぐ」が効果的!少し離れたところまでランチを食べに出て、食後すぐ歩いて帰るのも良いでしょう。日常的な動作程度でも、とにかく意識して食後すぐに活発に体を動かしてみることをお勧めします。

糖尿病ばかりか、心筋梗塞・脳梗塞、がん、認知症まで招く、恐ろしい“血糖値スパイク”。でも、血糖値が上昇するメカニズムを知り、それを抑える生活習慣を心がければ、たちまち解消できます!大事なのは、健康診断の「正常」という結果だけで慢心せず、自分の日ごろの血糖値の変化に意識・関心を持つことです。
「危険度チェック」でリスクが高いと判定された人も、上記のような対策を続けるうちに、血糖値が上がりにくい体が取り戻され、様々な病気のリスクを解消することができます。ぜひこれを機会に、ふだんの食事や生活の習慣を見直して、“血糖値スパイク”の脅威と決別しましょう!