Director's Cut

第6集 あなたのワンカットが世界を変える

チーフ・プロデューサー 伊川 義和

9.11の朝のニューヨーク

  • 1
  • 2

今回、アメリカのネットワークテレビ各局から、2001年9月1日のニューヨークの映像を大量に取り寄せました。世界が震撼したあの1日を、映像によって時系列で克明に描きたいと考えたからです。

特に力を入れたのは、テロが起きる前のニューヨークの映像です。普段の静かな朝が、ある時を境に一変する、そのコントラストを描きたいと考えました。その過程で、事件前のニューヨークを上空から捉えたヘリコプターの映像を見つけました。撮影したのはNBCニュースです。

  • 1
  • 1

ニューヨーク市に隣接するニュージャージー州の道路に出来た陥没を撮影するために、ヘリコプターは飛んでいました。通常であれば、こうした交通情報の映像はすぐに消されるのですが、偶然にもワールドトレードセンターの最後の朝の姿を撮影していたために保存されたそうです。あの1日は、おそらく人類史上もっとも多くの映像が記録された日ではないかと思います。

911 世界はその瞬間を目撃した

倒壊するワールドトレードセンター

  • 1

ワールドトレードセンターへの1機目の突入を撮影したのは、3台のカメラによってです。ほかの撮影目的で街に出ていたカメラが偶然記録しました。

2機目の突入は、私が把握しているだけでも、少なくとも60台のカメラが撮影しています。1機目の突入を受けて多くのメディアがカメラを向けていたからです。そして、ビルの倒壊も現地に集まっていたメディアの無数のカメラによって撮影されました。この映像を撮影したのは、FOX5のカメラマンです。

  • 1
  • 1

当時、ビルが崩れ落ちるとは誰も予想していませんでした。彼は後にインタビューでこのように語っています。「建物の崩壊が始まった時、私はわずか200フィート離れたところで撮影をしていたのです。暗闇と煙に圧倒されて、建物から逃げました。後ろから何が飛んで来るか分からなかったし、とりあえず走ったのです。自分を落ち着かせようとして呼吸をしました。そして、祈りの言葉をつぶやいたのです。あの時は、これで終わりだと思いました。」

レディー・ガガによる追悼の歌

これは、2011年9月にラスベガスで開催されたアイハートラジオ音楽フェスティバルの映像です。ここでレディー・ガガは、数日前に自殺したジェイミー・ロドマイヤー君に歌を捧げました。

  • 1
  • 1

ジェイミー君はレディー・ガガの熱烈なファンでした。「it gets better」に投稿する映像の中でも、ガガの曲を歌ったり、ガガのポーズを真似たりしていました。ジェイミー君の死がインターネットを通じて人々の関心を集める中で、ガガもジェイミー君のことを知り、彼のために歌ったのです。

この「HAIR」という曲は、髪の色がそれぞれ違うことを通して、多様性の大切さを伝えています。ガガが歌ったことで、リトルモンスター(ガガのファンの呼称です)たちによって、ジェイミー君を追悼する人々の環はさらに広まっていきました。

  • 1
it gets Better

ボストン爆破テロ事件の監視カメラ

  • 1

この映像は、ボストン爆破テロ事件が起きた当時は非公開でしたが、2015年3月に事件に関する裁判で証拠として公開されました。犯人とされるツァルナエフ兄弟は、兄は逃走中に射殺されましたが、逮捕された弟は裁判が続いていました。

弁護側が「弟は兄に従っただけだ」として事件の主犯ではないと主張したため、この映像が検察によって証拠として提出されたのです。映像には、被告が爆弾の入ったリュックを足下に置いて立ち去る様子が収められています。弁護側の主張はこの映像などによって覆され、被告には死刑判決がくだりました。

  • 1
数千台の防犯カメラが捉えた犯人

廃墟と化したシリアの町

これはロシアのインターネットメディアが、2016年1月にシリアのホムスをドローンで撮影した映像です。シリア第三の都市だったこの町に、今、人影はほとんど見えません。

  • 1
  • 2
  • 1第3集「ナチズムの終焉」より

この映像を見た時にまっさきに思い浮かんだのは、第3集で使用した第二次世界大戦直後の廃墟と化したベルリンの空撮映像です。ニュースではシリア情勢は連日のように流れていますが、実際にこのような映像を見ると、国民の半数が難民となったという現実を突きつけられます。

しかも、この町は過激派組織ISによってこのような廃墟となったのではありません。政府軍と反政府軍による激しい交戦によって町は廃墟と化したのです。いかにシリアの政情が混乱しているかが、この映像からも伝わって来ます。

  • 1
つかの間の春 町は廃墟になった

海岸に打ち上げられたシリア難民のこども

シリーズの中でただひとつ21世紀を扱った第6集は、現在進行形の世界情勢をにらみながら編集を行いました。2015年に世界が最も衝撃を受けた映像と言えば、このトルコの海岸に打ち上げられた3歳のシリア難民・アイラン君の映像だと思います。トルコのド・アン通信が、映像と写真を撮影しました。

  • 1
  • 1

撮影したカメラマンの一人は、「私にできる唯一のことは、彼の叫び声を届けることだった。今日から何かが変わることを期待する。」と語りました。その言葉の通り、世界は変わりました。そして、編集が進む中でパリ同時多発テロ事件が起き、さらに世界を憎しみが覆います。

映像が世界を引き裂き、世界をつなぐ....第6集のテーマとしていた状況が、まさに起きていました。現代に生きる者として、このことを最終集で描かなくてはならないと、制作スタッフの誰もが思いました。

  • 1
私を信じてくれるなら抱きしめて