NHKスペシャル

“震災タイムカプセル” 拝啓 二十歳の自分へ

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今年1月、岩手県・三陸沿岸の山田町でタイムカプセルが掘り起こされた。8年前、東日本大震災の直後に埋められたものだ。当時、大沢小学校を卒業したばかりの6年生29人全員が「二十歳の自分へ」と題して手紙を書き、カプセルに入れた。今年二十歳となり成人式を迎えた彼らは、今の自分に宛てた手紙と再会した。
被災によって、彼らは多感な10代を厳しい環境の中で生きてきた。復興に向けて頑張ると誓い潜水士となって防潮堤など復興工事に携わる人。故郷を離れたものの、今も震災の記憶にさいなまれる人。身近な人の死に向き合えずにいる人。
あれから8年。二十歳という人生の選択の時を迎えた彼らは、震災直後の自身からのメッセージをどう受け止め、どのように次の一歩を踏み出すのか?二十歳の若者たちの旅立ちの時に密着する。

放送を終えて

この番組を作るきっかけとなったのは、NHKが8年前の震災直後に取材をしていた大沢小学校の子どもたちの映像記録だ。映像には、生まれ育った故郷が壊滅し、大切なものを数多く失った中でも、未来の町や自分に何かを託して手紙を書く、彼らの力強い姿が記録されていた。
みんなは今、どうしているのだろう。取材を進めると、みんなが全く別々の震災後の人生を歩んでいることが分かった。卒業生の中には、震災の時の経験があったからこそ、今の職業を目指したと力強く語り、震災を受け入れている人もいれば、未だに、津波に飲まれた肉親の死を受け入れられず、あの日と向き合えずにいる人もいる。家も家族も無事だったから、自分は被災者とは言えないと、心の内に苦しみを抱え込んでいた卒業生もいる。
あの震災を経て、大きく人生がかわったみんなが、手紙に記した将来の自分と違っていようとも、今どんな人生を歩もうとも、1人1人の人生の歩み方、震災の向き合い方があって良いと思う。自分の人生を自分で切り拓いていくことこそが、尊く、大切なことなのではないか、そんな当たり前のことを、大沢小学校のみんなに教わった番組作りだった。

ディレクター 高橋裕和