NHKスペシャル

吉永小百合 知られざる“母”への思い

今年、日本を代表する女優 吉永小百合さんが自らの半生を見つめながら、日本の“母”を演じようと格闘した。
吉永さんが挑んだ作品は「母(かあ)べえ」(監督・山田洋次)。周囲の多くの人々を失いながらも家族を愛し戦前戦後を生き抜いた“日本の母”の実像を描き、その家族愛や母の悲しみを伝える作品である。
家族の絆が薄れる今、戦時下の過酷な状況で家族のために耐え忍び、精神的支柱となっていた“日本の母親”の姿を伝えたいと山田監督が主演を吉永さんに依頼した。

しかし、“本物の母親”を演じることは、吉永さんにとって厳しい挑戦であった。
女優 吉永小百合の存在感を最大限に生かした自然な演技をのぞむ山田監督の要求に応えるという高い壁がそびえていたからである。
またその一方で、吉永さんにとって“母”とは特別な想いを持つものでもあった。
それは、吉永さんが“母”という存在と離れざるをえない人生を送っていたからである。

戦前戦後を生き抜いた“昭和の母”の姿とは何だったのか。
女優として、人として生きることとは。そして今、吉永さんの母を思う気持ちとは、母の大切さとは…。
今回、初公開された実母の歌集や遺品とともに、母への思いを取材。これまでメディアに長期取材を許したことがなかった吉永さんの映画製作現場に半年以上密着した。
番組では、“演じることと生きること”の間で揺れながら生き抜いてきた一人の女性の姿を見つめる。