NHKスペシャル

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大アマゾン 最後の秘境

第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々

8月7日(日)午後9時00分

取材先は「未開の先住民族」。NHKのディレクターが挑む、アマゾンに暮らすイゾラドたちへの取材

アマゾンの密林に暮らしている、”隔絶された人々”という意味を持つ「イゾラド」。彼らは一切文明社会との関わりを持たない。

しかし、もし彼らが文明社会と出会ってしまうと……

「イゾラドに襲われた」という、アマゾンに住む人々の声が相次いでいる。彼らは木製の弓矢や槍で、自らが住む場所を奪ってきた文明側の人間や集落を攻撃することがある。

矢の先には毒が塗られていて、身体を射抜かれると死に至る場合も……。

こんな情報を得て、我々はなにを思うだろうか。私はせいぜい馬鹿みたいに口をあけながら、「アマゾンは広いんだな…想像を絶する人たちがいるもんだな……」と、感想を述べるくらいしか出来ない。それくらい、日本という国に暮らす我々からみると、「イゾラド」はまるで映画の中の登場人物のような、リアリティのない人間の姿に映ってしまう。

ただ、その「イゾラド」に取材を申し込んだ男たちがいる。いや、言語でのコミュニケーションが出来ないのだから、取材を申し込んだ……という書き方はおかしい。申し込む窓口なんてないし、そもそも近づくことすら非常に危険だ。

2016年、7月某日。イゾラド最前線基地から帰国した二人に話を聞いた。NHKの国分拓ディレクター(右)と、菅井禎亮カメラマン(左)だ。

「NHKの国分ディレクター」という名前を聞いて、「あぁなるほど、あの人か」と腹落ちする人も少なくないだろう。

国分ディレクターが過去に手がけた『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』というドキュメンタリーでは、先住民族と150日間の共同生活を行っている。

最近放送されたNHKスペシャルの、『ガリンペイロ 黄金を求める男たち』では、社会からドロップアウトし、黄金採掘をするならず者たちの「闇の王国」に辿り着き、そこでも泊まり込み取材を行った。

そして、いずれのドキュメンタリーでも菅井カメラマンがその最前でカメラを担いでいるのだ。

言語でのコミュニケーションが出来ない、そもそも鉢合わせることすら危険な「イゾラド」を相手に、彼らはどんな日々を過ごしたのだろうか?

(テキスト・塩谷舞)

—『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』の試写会を拝見しました。正直、想像を絶する世界すぎて、今あまり言葉が出ません……。そして、お二人が今こうして無事に帰国されているからこそ聞けることでもあるのですが……いつ弓矢が飛んでくるかわからないような現場に行くことに、ご家族やご友人は不安になられるのではないでしょうか?
菅井
そうですね。妻や子ども、友人には、どんな場所に取材に行くか……とは言わないですね。必要以上に、不安にさせてしまいますから。
—放送を見たらきっと「なんて危険な取材に行ってたんだ!」と衝撃を受けますね…。
国分
でも、僕らは何度も未開の先住民の取材をしてきていますからね。2002年に放送した『隔絶された人々 イゾラド』という番組の取材時にも先住民族と会ったことがありますから、今回特に危険だとは思わなかったですよ。ただ…
—ただ?
国分
前回は彼らの武器は「棒」だった。それが今回は「弓矢」だったんですよ。そうすると、離れていてもやられてしまいますからね。
—それは、14年経って武器が進化したということですか?
国分
いや、出くわしたのが別の部族だったんです。部族によって、武器の形状は異なります。

とある部族の使う「弓矢」

—なるほど……。しかし、絶対に「弓矢」のほうが効率が良いと思うのですが、それでも「棒」を使い続けている部族がいる……というのは、本当の本当に未開の人々なんですね……。部族を超えたイゾラド同士での情報共有とかも、していないんですね……。その、前回イゾラドと接触した際には、危害を加えられそうな雰囲気はなかったのでしょうか?
国分
ありませんでした。それに殺されるかもしれない、というような不安はなかったです。というのも、僕らがイゾラドに取材をする際には、ペルー政府関係者が密着していて、彼らは拳銃を持っているんです。
—じゃあもし、国分さんたちが攻撃されると……彼らは撃たれるんですか?
菅井
いや、あくまで空を撃って威嚇するだけです。でもその瞬間、せっかく言語がない中で歩み寄ったペルー政府とイゾラドの信頼関係が全て崩れてしまう。
—確かに……。「敵だ」とみなされますよね。試写会で拝見しましたが、イゾラドに「敵ではない」と認識してもらえるまで、文明側の人間が動物のモノマネをしたり、バナナを大量に運んであげたり……ゆっくりゆっくりと距離を縮めていく様子は、まるで何千年も昔の光景に見えました。「あぁ、昔の人ってこうして意思疎通をしていたのか」と錯覚してしまうほどに。

—ちなみに、今回のNHKスペシャル・大アマゾンシリーズは「4K映像」もその魅力の1つ……だと思っていたのですが、今回は普通の映像でしたか?
菅井
もちろんです。先住民族の方に取材に行くのに、大きな4Kカメラは持ち出せないですから。僕が4Kカメラを担いでいる姿は、あちらにはマシンガンを構えているように見えてしまうかもしれないでしょう。
—なるほど確かに……。その誤解を生んでしまうのは、非常に危険ですね。
菅井
はい。だから、このような取材の時には、一番小型のカメラを持っていきます。それでも、カメラのレンズに気を取られて彼らと目を合わせないような状況を作ってしまうと、非常に危ないです。だから先住民族の取材をするときは、小型カメラで、でもずっと目線は相手の目を見ておくこと。そうすることで「敵ではない」と認識してもらえるんです。
—その培われたノウハウが生かされる職場って……NHK以外には滅多となさそうですね……。イゾラドに限らず、これまでにもヤノマミなどの先住民族の方々を取材するとき、取材班の着ている服とか、持ち物とか、すべてが彼らにとって目新しい訳ですよね。「欲しい!」と言われたりしないんでしょうか?
国分
もし欲しがられたとしても、そこで彼らに衣服を渡して「自分が彼らに文明を伝えてしまった」ということになると、私は死ぬときに後悔してしまうと思うんですよ。
—先住民族には、ありのままの姿でいて欲しい、ということでしょうか?
国分
いや、彼らが文明社会に取り込まれるのは、もう時間の問題だとは思いますし、どちらが彼らにとっての幸せか、ということもわかりません。先住民のことに詳しい方の話では、あと1~2年でイゾラドという存在はいなくなる(未開の部族ではなくなる)とも言われていました。
—そんなに近い将来に……だから今回の番組タイトルが『最後のイゾラド』なんですね。
国分
おっしゃる通り。まもなく本当の意味での「イゾラド(=未開の部族)」はいなくなってしまうでしょう。それが良いか悪いかは、わかりません。でも、私たちはあくまで傍観者の立場として、ありのままを映す……ということしか、やっちゃいけないと思っているんです。
—アマゾンの人々を襲うイゾラドが悪なのか、そもそも彼らの楽園を侵略した近代文明側が悪なのか。どちらとも取れるし、どちらが正解とも言い切れないんですね。最初はあまりのカルチャーショックな映像に「アマゾンは広いんだな…想像を絶する人たちがいるもんだな……」という衝撃が先走りましたが……。噛み締めていくと、自分の中での倫理観を捉え直すような、脳裏に残るような作品でした。本当に、ありがとうございました。

8月7日(日)午後9時00分

第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々

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