NHKスペシャル

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大アマゾン 最後の秘境

第3集 緑の魔境に幻の巨大ザルを追う

6月12日(日)午後9時00分

密林での100日間の滞在取材、撮影データは数百時間。これがNHKスペシャルの現場取材!

約100年前に撮影されたと言われている、伝説の巨大ザル。この写真や数々の目撃証言を手掛かりに、NHKの田所勇樹ディレクターが向かったのは、アマゾンの奥地。放送される番組時間は、たった50分。その50分を伝えるために、田所ディレクターが現地で取材したは期間なんと100日以上。

アマゾン奥地での取材生活は、国内で過ごす他のNHK職員とは全くの別世界……。

忍耐、辛抱、そして不屈の希望を持った取材の裏側を、田所ディレクター、そして村田真一プロデューサーに聞きました。これぞ、NHKスペシャルの現地取材!

(ライター・塩谷舞)

100日を超える密林取材、食料は現地の魚や果物

田所勇樹ディレクター(現地での様子)

—今回、伝説の巨大ザルを探しに……という企画はいつスタートされたのでしょう?
村田
3年前に企画が立ち上がったんです。まずは調べられるだけのことをこちらで調べて、2年前から田所ディレクターが主に現地取材に入りましたね。
—2年前から取材を!?
田所
はい。3回に分けて、合計100日ちょっとでしょうか……地元の方が狩りをする時の仮眠場所に利用する小屋の横に、ぼくら取材班の小屋を作ってもらいました。サルに出会う可能性を高めるために、人里から遠く離れたジャングルの奥地、目的のサルの生息地のすぐ近くに取材拠点を設けたんです。

取材の拠点となったキャンプ地

サルを撮るために水に浮く撮影台を設置

—100日もの間、食料はどうしているんですか?
田所

まず、今回は4K映像を撮影するカメラを持って行ってたので、機材だけで300キロを越してしまったんです。すでに大荷物で、あまり余計なものは船に積めないんですよね。

だから、食料は原則現地調達でした。地元の人に、魚釣りと料理をしてもらいました。焼き魚やスープなど、アマゾン地魚メニューの毎日でした。ピラニアはなかなかおいしかったですよ。

田所
ただ、おいしい地魚料理も毎日続くと……。フリカケだけは日本から持参していたので、それをふりかけて、ささやかに日本食を懐かしんだりしていました。アマゾンでは「アサイー」という、最近日本でもブームになっているヤシの実がとれるんですが、その絞りたてのジュースは最高でしたね。

狂犬病など、複数の予防接種を受け取材に挑む

—お腹を壊したり、しませんでした?
田所

焼いて食べるので、そうそうお腹は壊しませんよ。

ただ、吸血コウモリが狂犬病を持っていることがあり、襲われると危険です。だからあらかじめ狂犬病の予防接種は受けていきました。あとは、A型肝炎、腸チフス、黄熱病……他にもありましたかね。とにかく、できる限りのリスクヘッジをしてから現場に行きます。

現地にシャワーはないので川で水浴びしたり、植物の茎を切って、したたり落ちる水を飲んだり、何があるかわかりません。

—やっぱり、NHKディレクターの中でも身体と精神の強い人がアマゾンに抜擢されるのでしょうか……?
田所
いや、どうなんでしょう……むしろ弱いくらいですけどね……。でもずっと自然番組『ダーウィンが来た!』のディレクターをしていたので、慣れているといえば慣れているのですが、今回の『大アマゾン』は未だかつてない厳しい現場でしたね……。
—これまでとは、全然違う?
田所
違います!だって狙うのは、絶対に実在する生きものではなくて、伝説かもしれない生きものなんですよ。希少な生物を追う……という番組ならありますが、いるかどうかもわからない動物を探す、まるで雲を掴むような取材のスタートでした……。

ダニの痒みに耐えられず、眠れない夜

—地図のない宝探しみたいなものですね……。そんな中で一番キツかったことは何ですか?
田所
ダニですね。全身ダニに刺されて、大変なことになりました。

カメラマンの背中

—これは……。
田所

これはカメラマンの背中なんですけどね。

靴下2枚と長靴を履いてるのに、その中までダニに刺されるんです。気づけば全身を刺されている……。無数に刺されると、夜になると痒みが耐えられなくなるんですよ。右腕がかゆくなって、左手がかゆくなって……。

—現地の方は刺されないんでしょうか?
田所

同じように刺されているはずなんですけどね、耐性があるようでこんなに腫れないんですよ。我々が真っ赤になってるのを見て、みんな「なんだそれ!」って驚いていました。

あとは、突然の大雨にも苦労しました。カメラを守るためにも、現地の方が葉っぱでこんな屋根を作ってくれているのですが……まぁ、ご覧の通りです。

にわか雨を急ごしらえの小屋でしのぐ

地元の人は、葉っぱを巧みに編んで屋根を作る

アマゾン最強の肉食獣、ジャガーの近距離威嚇

—危険な動物に巡り合ったりしましたか?
田所
ジャガーですね。こちら撮影した様子ですが……

—こんな至近距離で肉食獣に? ものすごく危険なのでは?
田所
このジャガーは樹の枝の上にいたんですよ。すごく珍しいんですけどね。僕らが訪れた雨季は、地面が水没しているので、彼らは木の下に普通は降りてこないんです。僕らをこうして睨んで、威嚇してくるだけでした。
—襲ってこないとわかっていても、怖いですよ。でも、貴重な映像ですね。
村田
樹の上にいるジャガーもそうですし、今回はかなり珍しいお宝映像がたくさん撮れましたよ。100日以上の執念で……。
田所
撮影をしたのは、僕らだけじゃないんですよね。僕たちがあまりにも長いこと、一生懸命に伝説の巨大ザルを探しているのですが、なかなか見つからない。そのとき現地で大猿を目撃したと言う方が「大猿は絶対にいる。この映像を撮れなきゃ、俺の人生の汚点だ!」とまで言ってくれて、撮影を自ら志願してくれたんですよ。彼は信頼できる男だったので、日本に一時帰国する際にはカメラを預けて、定期的にSDカードのデータを転送してくれました。

防犯カメラを監視し続けるかのような編集作業

—過酷なアマゾンから渋谷のNHK本部に戻られたら、だいぶほっとされたのでは?
田所
いやいや、編集作業前に確認しないといけない膨大な撮影映像が11テラバイトもあったんですよ。ぞっとしますよね。(※1テラバイト=1,000ギガバイト。キロバイト、メガバイト、ギガバイトの次の単位)
—11テラ!!
村田
取材も大変、でもそれ以上に大変なのが編集ですよね。カメラマンのカメラ数台、据え置きで設置していたカメラ、それに現地の人が撮影してくれたカメラのデータ……何百時間の映像を50分に編集するんですから。据え置きのカメラなんて、めったに動物なんて映りませんしね。
—まるで、防犯カメラで犯人を探しているような……。
田所
まさにそんな感じですよ。

アマゾンにまた行きたい?「すぐにはちょっと……」

—田所ディレクターは、また行きたい、と思いますか?
田所
自然番組を作ることはね、子供のころからの夢だったんですよ。そして今回みたいに「未確認の生物を探せ」だなんて酔狂な仕事、本当に幸せですよね。また行きたいかと言われると……、100日以上もいましたからね、すぐにはちょっと……でも。とても魅力的な場所なので、またいつかは行きたいですね。
—そうですか。次に制作したい番組は?
田所
パタゴニアや、アタカマ砂漠ですね。
-やはり、南米に行かれるんですね。100日以上の現地取材、そして数百時間の撮影データの編集……本当にお疲れ様でした。そのオイシイ部分が凝縮された50分、ありがたく拝見させていただきます!


田所勇樹(たどころ・ゆうき)

2003年、NHKにディレクターとして入局、初任地の鹿児島放送局にて様々なジャンルの番組制作を行う。2008年からは「ダーウィンが来た!」を始めとする自然番組専属のディレクターとして奉職。今も撮影のために世界中を飛び回る。これまで手がけた主な番組は「モウコノウマ」「ダンゴムシ」「アフリカウシガエル」など。大学時代は昆虫学を専攻し、ダンゴムシの生態研究にのめり込んでいた。


村田真一(むらた・しんいち)

1981年、NHKにディレクターとして入局、以来自然番組の制作に携わる。ドキュメンタリー番組の最高峰のひとつと言われるイタリア賞を受賞した『NHKスペシャル 映像詩 里山』をはじめ、『アジア 知られざる大自然』『大自然スペシャル 赤道・生命の環』など数々の大型自然シリーズを企画・制作してきた。自然番組制作部の中で、海外との国際共同制作を最も数多く手がける国際派プロデューサーでもある。

6月12日(日)午後9時00分

第3集 緑の魔境に幻の巨大ザルを追う

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