NHKスペシャル

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大アマゾン 最後の秘境

第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち

5月8日(日)午後9時00分

NHKの取材班が、アマゾンの奥地に住むガリンペイロと共同生活をした壮絶な50日

大アマゾン第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」。

NHKの取材班が向かったのは、アマゾンの名も知れぬ支流を何日もかけて遡ったところ。

「普通のブラジル人はあんなところ、取材しないよ。足も踏み入れない。奴らは破壊者と呼ばれて、ネガティブレッテルを貼られているからね」

そんな場所に50日間に渡って滞在し、密着取材を行ったNHKの国分ディレクター。

(c)Eduard MAKINO 

50日間のガリンペイロとの共同生活。日本に戻られた国分ディレクターに、現地の様子を聞きました。

(ライター:塩谷舞)

現地で協力してくれた仲間たちを危険にさらすわけにはいかない

——放送前に番組を見せていただいたのですが……かなり危険な取材ですよね。殺人を犯した人が何人もいて、しかも彼らは銃を持ってる。命の危険は感じなかったんですか?

国分:秘密の金鉱山の頭目である男(通称<黄金の悪魔>)から、ドスの効いた声でこう言われました。「場所を誰かに話したら、誰かが死ぬことになる」 と。。

結構微妙な言い回しですよね。誰かとは誰なのか、はっきり言わない。それが怖かったです。まあ、突発的なことでも起きない限り、NHKスタッフが殺されることはないだろうと思ってはいましたが、その頭目に行きつくまでに、沢山のブラジル人が協力してくれています。地元の船頭さん、ドライバー、引退したガリンペイロ、取材のための現地コーディネーターも。いろんな人たちの情報や紹介でようやく彼に行きついたわけです。

ですから、「誰かが死ぬ」と言われると、とてもビビる。余りに「誰か」が多すぎるので。脅し方をよく知っている、あるいは、脅すことに馴れている人物だと思いました。ですので、僕自身が命の危険を感じることはありませんでしたが、彼のことは怖かったです。

——そんな中でも、最も命の危険を感じた瞬間は?

国分:番組でもでてきますが、酔っ払ったガリンペイロが弾の入った銃を持ってフラフラとやって来たときですね。たぶん、ひょんなことから暴発するんです。だから、とても危ないと思った。

おそらく、彼らは頭目(ボス)からキツく言われていたと思うんですよ。憶測ですけど、「あいつら(取材班)に手を出したら殺すぞ」みたいに。でも、酒に酔っているときは、彼らもガードが下がりっぱなしというか…全部忘れちゃってるというか…。実際、あの場所では年に2~3人が銃で死んでいるのですが、殆どが酔った上での喧嘩です。たぶん、人は、突発的に人を殺すんです。

もっと接近すれば、いいシーンが撮れたはずだという考えもあるかもしれません。でも、巻き込まれるのはイヤだったので、距離感を保って取材をしました。結果として、それで良かったな、と思っています。

50日間の食料は、ガリンペイロと同じもの

——50日の間、食料はどうされていたのでしょう? 持参されたのですか?

国分:いや、現地でガリンペイロと同じ食料を、食費を払って食べていました。ガリンペイロも黄金で月2グラム払っていますが、それと同じです。

——実際食べていたものは?

国分:基本的には、米とフェジョーン(豆をぶっかけたもの)ですね。

でもそれだとすぐに飽きてしまう。だから、たまにガリンペイロたちが釣った魚をもらったりしていました。今回の取材だけではないのですが、これまでにけっこういろんなものをアマゾンで食べているんです。野ブタ(見た目はイノシシですね)、バク(でかいです)、カピバラ、アルマジロ、ワニ、各種の鳥、各種の猿、もういろいろです。でも、一番美味かったのは、今回の取材で食べた、パカというネズミでしたね。

パカはすごく美味しいんですよ。ガリンペイロたちはいつも罠を仕掛けているのですが、なかなかとれない貴重品なんです。

ですから、パカが手に入ると、ガリンペイロたちはすぐにバーベキューパーティーを開きます。「お前にもあげるよ」と誘ってもらいました。肉は貴重なので、狩りの獲物は保存用に干しておいたりもするんですが、パカだけはうまいからすぐに食べちゃう。ウサギや鹿肉に近い味ですね。美味しいんです。ま、料理をした人も上手だった、あるいは、こちらが肉に飢えていたせいかもしれません……。だって、日本に戻ってきた今は大して食べたくないですから。

3日間の地獄の腹痛。フレッシュジュースには気をつけろ

——お腹を壊したりしませんでした?

国分:彼らが食べるものには火が通っていますからね。まぁ大丈夫でしたよ。

今回の南米取材で腹を下したのは一度だけ。ガリンペイロの集落にいた時ではなく、街場でフレッシュジュースを飲んだときです。

大アマゾンシリーズの第4集で、イゾラドという近代文明を一切持たない民族を取材しています。それでペルーの奥地にずっと滞在していましたが、そこにはガリンペイロの集落にあるようなぬるい缶ビールすらなかったんです。

——禁酒生活を送っていたんですね。

国分:はい。滞在が長かったので、街場に戻って来たときにどうしてもビールが飲みたくなりまして……お店でビールを頼んだら在庫を切らしていたようで「買ってくるから、それまでこれを飲んでおいて」とジュースを渡されたんです。それでつい、油断して(笑)。

——それに当たったのですか。

国分:普段はナマ物は避けていたんですけどね、喉が渇いていたから我慢できなくて……。僕を含む3人がゴクゴク飲んだ。1人だけ、どうしてもビールを美味しく飲みたいからとジュースは我慢していました。

するとジュースを飲んだ3人は30分後には地獄のような腹痛を起こし、上からも下からも止まらなくなりまして……

——30分で?

国分:はい。止められない。しかもそれが丸3日間続いたんです。3人ともです。

——仕事にならない。

国分:なりませんでしたね。あれほど辛いことはなかったです。

——それは一般旅行者みんなに伝えておきたいことですね……。フレッシュジュースには気をつけろ、と。

もし女性が取材に行ったら……隣で全裸の男がアピール?

——では、ガリンペイロ取材時には、どこで寝泊まりしていたんですか?

国分:ガリンペイロの集落はいくつかありますが、そこに向かうための拠点がありまして。その拠点近くに使っていない倉庫があったので、寝床としてあてがわれました。

倉庫は壁も屋根もあるし、環境は悪くなかったのですが、そこから実際の取材場所までは10km離れてるんです。

——かなり遠いですね。

国分:はい。ですから日帰りで取材しようと思ったら往復20km歩かねばならないし、現場での取材時間も限られてしまう。何回かはやりましたが、辛いというか、ロケにならないので、ボスに頼んで鉱山近くに二カ所、小屋を作ってもらいました。ま、20分でできるような小屋ですけど。よって、ロケのやり方は、拠点をベースにして、小屋Aに3泊、小屋Bに4泊して、また拠点に戻って来る。そんな感じですね。拠点は充電もできるし、水も豊富にあるので。戻って来るとホッとしました。

——ちょっと過酷すぎませんか……? ストレスも大きかったのでは……?

国分:いや、別に。娯楽で来たわけじゃないので。

まぁ虫とかは嫌いですし、朝はすごく寒いのですが……耐えるしかないですよね。「なんかすげぇこと起きないかな〜」と思いながらぼけ~としてたら、50日が過ぎちゃって、これで番組になるかな~という感じでした。

——その環境の中で、ぼけ〜と50日間カメラを回す、ということが修行のようですが……このような取材に備えてメンタルを鍛えられているんでしょうか?

国分:いえいえ、むしろメンタルは弱いほうですよ。ですから気にしすぎないように、「鈍感になろう」とは意識しています。鈍感にならないと、しんどいですからね。

——なるほど……。取材班は全員男性だったんですよね。女性が行くのは危険でしょうか?

国分:女性も行けなくはないですよ。ただ、あたらしい女性が集落に来たと知ったらガリンペイロたちはすぐ裸になって、ずっと横でアピールし続けるんですよ。「あなたが応じるまでここを離れない」というメッセージです。

僕らが街場から連れていった料理係の女性も、ずっと裸でアピールされ続けた結果、3日で帰ってしまった……。うまくやり過ごせればいいのでしょうけど、そんな手練手管を持っている人って、ブラジルでも少ないのかもしれませんね。

ちなみに、私もメンタルは弱いし、とても神経質なので、たいそうきつかったです。

ガリンペイロには、日本人にない野獣感がある

国分:彼らは、何と言うか、もう、野獣なんですよ。彼らが飲んで、酔っ払って、女性たちと踊っている姿を見るとね。まさに野獣さながらなわけです。すごいんですよ。

法律を遵守して、コンプライアンスに則って……という僕らの暮らしとは別の次元で生きている人たち。それがガリンペイロだったんです。僕は、そんな自分自身のcode(=規則,おきて)で生きている人に無性にひかれてしまうんですよね。

彼らは「黄金を掘る」という欲望のみに従っていて、あとは何でもアリ。

もちろんガリンペイロになりたいとは思いませんよ。ですが、彼らには、少なくても僕にはない“野獣性”があったと思うんです。しかも、ちょっと切ない“野獣性”とでも言うのでしょうか…その生々しい彼らの姿が少しでも伝われば、うれしいですね。


国分拓(こくぶん・ひろむ)

2009年、奥アマゾンのヤノマミ族を150日間にわたり取材したドキュメンタリー番組「NHKスペシャル ヤノマミ~奥アマゾン 原初の森に生きる~」を制作。同番組を書籍化した『ヤノマミ』(NHK出版/新潮文庫)で2010年に第10回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞、2011年に第42回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞する。これまで手掛けた番組に、「ファベーラの十字架」「南相馬 原発最前線の街に生きる」「沢木耕太郎推理ドキュメント 運命の一枚」など。

5月8日(日)午後9時00分

第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち

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