NHKスペシャル

トップページへ

大アマゾン 最後の秘境

第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち

5月8日(日)午後9時00分

黄金を求め続ける、ガリンペイロ。法律なき世界に生きる男たちの実態

「一発当てたら取れたら億万長者、駄目な奴は野垂れ死ぬ!」

まるで古い古い童話の中に出てくる歌詞のような一節。

でも、これは現代のお話です。2016年の今も、黄金を求めては穴を掘り、いつか当たるかもしれない一発にその生涯を捧げ続ける男たちがいます。

身分証明書などのIDを一切持たない孤児、殺人を犯した者、金に運命を狂わされた者……。そんな男たちが行き着くのは、アマゾンの密林の奥、無数の滝を遡った先にある、金鉱山。

彼らの俗称はガリンペイロ。ポルトガル語で”金を掘る者ども”という意味です。ガリンペイロたちの暮らしは、既成の法律とは無縁の世界。時に仲間を殺めることすら、いとわないのです。

(c)Eduard MAKINO

酒、女、ドラッグに包まれたガリンペイロたちの、生々しい生きざま。NHKは世界で初めて、50日間の密着取材を行うことに成功しました。取材に訪れたのは、近隣の街場を出てから5日、地図にもない川を遡っていった、深い深いアマゾンの奥地。

「この場所を明かしたら、誰かが死ぬことになる」と警鐘を鳴らされているため、それ以上詳しい情報をお伝えすることはできません。

取材班は交渉の末にガリンペイロから倉庫のような小屋を与えられ、24時間彼らの監視下で、今回の番組を作り始めました。

大アマゾン2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」放送直前。

ガリンペイロとは一体、どんな欲望と文化を持つ人々なのか。 訳ありでアマゾンの奥地に辿り着いた彼らの心にも、希望や愛情はあるのか。ブラジル人からも恐れられ、罵られるガリンペイロたち。彼らと50日間過ごして見えてきた10の実態を、放送に先んじてお伝えします。

1.黄金を掘る欲望のみが必要とされる

“ガリンペイロ”は、ポルトガル語で金鉱採掘人。アマゾンの奥地に、100人前後の集落がいくつか存在します。彼らの仕事は実に単純。ただ黄金だけを探し、穴を掘り続けていくだけです。

「俺の人生にも可能性はあるはずさ!」

笑顔でそう語る、街場から流れてきたばかりの新参者の若者もいれば、

「俺はもうここを出て行きたい。黄金探しなど無意味だ!殺してくれ!」

と酒に溺れて泣き叫ぶ、中年のガリンペイロもいます。

確かに数十年に一度しかこない黄金の“大当たり”に出会うことができれば億万長者になれるとはいえ、その可能性は限りなく低いもの。彼らは万に一つの可能性に賭けて、何年も何年も黄金を掘り続けているのです。

そして、日々採掘される僅かな黄金の7割は、彼らの土地を支配する統治者”ヘイ・ド・オーロ(金の帝王)”に捧げなければいけないのです。

2. ベテランも新人も関係なく、取り分は一緒

ガリンペイロの金鉱採掘は、複数人のチームに分かれて行われます。その日集落にやってきた新人でも、何十年も穴を掘り続けているベテランの老人も、採掘した金を分け合い、同じだけの報酬を与えられるのです。

平等と言えば平等ですが…チームの中に取り分に見合わない労働者がいれば、その者は徹底的に見下され、存在することをも否定され続けます。

取材班は50日間の密着中に、簡易的に作られた「墓」をいくつも目にしました。ガリンペイロのものです。彼らは先の見えない金鉱山での暮らしに耐え切れず自害したのか、それとも役立たずとして殺されたのか……。

しかし、墓に囲まれたその異様な風景は、ここでは日常。かつての仲間たちの屍を超えて、男たちは毎日黄金を採掘し続けるのです。

3.夜明けと共に働き始め、暗くなるまで穴を掘る

ガリンペイロたちは、夜明けと共に活動を始めます。起床時刻はおよそ4時半。まずは甘いコーヒーを一杯飲んでから穴を掘り、8時半くらいに朝食としてクスクスを食べ、そしてまた、穴を掘るのです。

彼らの社会は、成果報酬制。採掘した黄金の量によって取り分が決まるため、時間が許す限りひたすらに穴を掘り続けます。

平日は夜更かしすることもなく、疲れ切った身体を休ませるガリンペイロたち。その小屋には蚊やブヨ、ゴキブリやサソリ、タランチュラ、そして毒蛇が現れることも……。

4.日曜日、クリスマス、大晦日には休暇を取る

ガリンペイロの休暇は毎週日曜日。土曜日の仕事が終われば夜は飲み明かし、日曜日には稼いだ金を使い切るまで飲み、騒ぎ、踊り続けます。

もともとはブラジル国民でキリスト教徒だった者も多いガリンペイロ。昔の風習からクリスマスにも休みをとりますが、信仰心はさほど強くありません。

彼らが信じるのは神ではなく、黄金だけなのです。

ですが、信仰心はなくとも、クリスマスは彼らにとって何よりの楽しみ。集落の統治者がセスナで肉を運び、ガリンペイロたちに大量の肉をご馳走するからです。

ガリンペイロたちにとって、そんな贅沢はクリスマスと、カーニバルだけ。あとは質素な料理を食べて、一日中肉体労働をするのみです。

5.表の顔は神父、裏の顔はガリンペイロを統治する金の帝王

集落でガリンペイロたちを統治するのは、ヘイ・ド・オーロ(金の帝王)と呼ばれる者たち。彼らは金鉱山を所有するガリンペイロの頭目で、警察権力と対峙するほどのパワーを持っている……ということ。

そんな大富豪であるヘイ・ド・オーロの中に「ローマ教皇」というあだ名を持つ者がいました。

彼の表の顔は、なんと町一番の教会を持つ神父。表ではブラジルの村人たちに慕われる神父でありながら、裏ではジャングルに3つの金鉱山を持ち、自身の操縦するセスナでガリンペイロたちを金鉱山に運んでは彼らから莫大な利益を得ていたのです。

彼を尋ねたところ「表の顔をつぶすわけにはいかない」と、取材を拒否されました。

6.単身赴任で稼ぎにやってくるサラリーマン・ガリンペイロ

ブラジル国民から無法者と蔑まれ、恐れられるガリンペイロ。しかし、街場で肉体労働をするよりも平均2、3倍の稼ぎがあることも珍しくはなく、中には単身赴任としてやってくるサラリーマン・ガリンペイロもいます。

「ここで稼いだ給料で、ミルクや玩具を買うから」と、街場町に一時帰宅する様子も。

ただ「お前は何人殺した?」という武勇伝が飛び交う中で、彼らは小馬鹿にされながら日々を過ごすのです。

7.金鉱山を転々としている女たちとの関係

ガリンペイロは男ばかりの集落。しかし週末になると、どこからともなく女たちが現れて、彼らと共に踊り、飲み、そして一夜の相手を決めて小屋へと消えていくのです。

その女たちは、金鉱山を転々として、ガリンペイロたちの相手をするしたたかで強い女たち。生まれた村を逃げてきた女もいれば、金鉱山で生まれた女もいます。

寂しさを埋めるため彼女らにのめり込むガリンペイロもいれば、戯言混じりに求婚するガリンペイロも……。

刹那的な夜を過ごした結果、子どもが生まれることも。そんな子たちは女たちと共に金鉱山を転々とし、外の世界を知らずに育っていくのです。ガリンペイロとして働く男の中には、そうして生まれた者も少なくはありません。

8.集落には数人の女性がいて、男たちの食事を作る

集落の中にも数人だけ、長期間ガリンペイロと共に暮らしている女性がいます。男たちのためにコーヒーを淹れたり、クスクスを作ったりする食事係の女性です。

各集落によって、彼女たちの立場は様々。最も強い男の妻となる女もいれば、複数のガリンペイロたちと関係を持つ女も。彼女たち一人ひとりにもまた、壮絶な物語があるのです。

9.待遇が良いのは、機械を修理できる男

ベテランも新人も、取り分は同じガリンペイロ。彼らには、上下関係も、昇格という概念もありません。しかしどうやら、少し良い待遇の男たちがいるようです。

それは、機械を修理できる技術のある者。

とはいえ、彼らは工事現場にあるような重機を使うのではなく、金鉱採掘に使うのはツルハシとスコップ、そして何十年も使い続けている高圧放水器だけ。それはけっして複雑な機械ではないものの、文明から離れたガリンペイロの集落に於いては、機械を修理できる者の身分が幾らかは高くなるようです。

しかし表向きは全員平等。裏で特別な報酬を得ているのではないか……と思われます。

10.彼らは妄想し、自らの歴史に嘘をつく

「これまでに何人殺した」「刑務所でこんなことがあった」と武勇伝を語ってくれるガリンペイロもいますが、実はそこで語られる多くのことは現実と入り混じった彼らの妄想。

しかし想像できるでしょうか。

毎日毎日、何十年も金脈を掘り続け、汗と埃と泥にまみれて、出世もせず、いつ殺されるかもわからない人間関係の中で過ごす男たちの心の内を。

彼らに許される僅かな娯楽は、自分を物語の主人公にしたような、儚い妄想だけなのかもしれません。

5月8日(日)午後9時00分

第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち

関連記事

トップページへ