2016年3月、グーグルの開発した囲碁の人工知能が、世界最強と言われる韓国人の棋士に圧勝し、世界に衝撃が走った。囲碁は、人類が発明した最も複雑なゲームと言われ、人工知能が人間を凌駕するのはまだ10年はかかると言われる中での出来事だった。
このまま人工知能が進化していけば、どんな未来が到来するのか。
番組のリポーターとして世界各地を取材していくのは、将棋界・最高の頭脳、羽生善治さん。圧倒的な思考のスピードと深さで将棋界に君臨し、日々、「人間にしかできないことは何か」を考え続けている。
囲碁の人工知能を開発したイギリスの天才研究者、専門医にも判断できないがんを、画像から精緻に見分ける人工知能を発明したアメリカのベンチャー企業、人工知能に感情を持たせる研究を続ける日本企業など、人工知能開発の最前線を取材。人工知能が人間に何をもたらすのかを探っていく。

語り 林原めぐみさん

「こんなところまで進んでいるんだ」ということを伝えたい

サイバー空間の中で制約を受けず非常に早い進歩 しかし…

社会の中で実用的に活用される段階に来ている

誰が言ったのでしょうか。
「人が脳で描ける事は実現が可能だ」と。
ライト兄弟が、現代の空港を見たら・・・
街中に溢れる旅客機で行く海外旅行のパンフレットを見たら・・・
どう思うのでしょうか。
星座に神話を重ねたギリシャ人がロケット打ち上げを見たら、夢は失われるのでしょうか。
21世紀。私たちが夢中になって見ていたアニメや映画の世界が、現実として、今、目の前にあります。
それは、演じる楽しさを失われたような、少し複雑な気持ちです。でも、もし、その複雑さの中に希望を見るとするならば、アニメや映画の世界では「必ず悪は滅びる」という約束事があるということ。
何を「悪」とするかは難しい問題ですが、多くの人の中に「ソレ」が必ずあるということ。
しかし、現実の世界には、そうした分かりやすさはありません。新しい技術は、静かに、そして淡々と社会に入り込んで来ます。
生まれてくる無垢な技術と、その無垢な技術の使い手となる資格とは。まだ、演じる場所は残されているように思います。世界をリセットするのも、世界をリバースするのもエンターテインメントの役割ですからね。


人工知能に出来ないことはもはやないかもしれない

絵を描くとか、自動運転とか、医療の診断とか、これだけ汎用的というか、幅広く、いろいろな世界で進歩が起こっています。今までだったら、人が最も得意とすることなど、AIが関与するのは考えもしなかったことでも、もう具体的なところまで来ているのを目の当たりにすると、「この世界だけは特別で、絶対AIが入ってくる余地がない」ということはないのではないでしょうか。 「これは人間しかできない」とか、「これはAIには出来ない」ということはないということを前提に考えているほうが、いいのではないかなと思います。

人工知能の進化をどう受け入れていくのか?

技術の進歩に対して、それをフォローする制度やルールを作っていくのは、難しいことかもしれませんが、少なくともどんな未来が来ても、それに驚かないという意味で、なんというか「心構え」というのでしょうか、それを持っておいたほうがいいと思います。 より社会に広く浸透していくときには、コンセンサスは必ず必要になるはずです。こうした議論はこれから先、個々の案件でたくさん出てくるでしょう。ですから、導入にあたって、こうしたコンセンサスを考えるべき時がきていると感じます。

実感のわかなかった未来予想図が、そこにある気がしてきました

もうずいぶん昔に言われたことなんですが、カーネギーメロン大学の金出先生というロボットの研究をしている科学者が、「ものすごい未来が来たときに、道を歩いていて向こうから来たのが人なのか、AIなのかわからなくなる時代が来るかもしれませんよ」と。聞いた当時は、「へぇ」というくらいの感じだったのですが、取材を通じていろいろな話を聞いてくと、「ああ、もしかしたらそういうことも可能性としてはあるのかな」というように思うようになってきました。 最初聞いたときには、全然リアリティのない話だと思っていましたが、今、聞いたら、「あ、別にそういう可能性があってもおかしくはないな」と。小さな可能性かもしれませんが、あってもおかしくないなと思います。でも私にとってそういう未来は、今は「不思議」としか言いようがなく、他にいい表現を思いつきません。

人工知能が描いた肖像画