コズミックフロント☆NEXT

私の宇宙絶景

Robert Gendler

10月29日(木)の放送より
冨田 勲さん「燃え尽きながら地球に帰還した“はやぶさ”」

Q. この写真を選んだ理由は?

冨田 やっぱり地球へ帰ってきたというのは、感激ですね。しかもこれを狙っても、なかなかこうはいかないと思うんだけれども、故障続きの「はやぶさ」が、なぜこの角度にピッタリ狙うことができたか、「私を撮って下さい」と言わんばかりの角度でね。これは僕にとっては奇跡ですね。

これは、僕は神の力というか、宇宙にそういう不思議な力が存在して、そうとしか思えないですね。それで美しいんですよね。キレイな線になっているし。

最後の結果は、帰ってきましたというあたりが、やっぱり宇宙に関する人間が手を施した中での、最も不思議であり、神秘的でありね。そういった現象ではないんでしょうかね、これは。やっぱりこれしかないですね、選ぶとしたら。

2010年6月13日、燃え尽きながら地球に帰還した「はやぶさ」 JAXA
Q. 2011年に組曲「惑星」に新曲「イトカワとはやぶさ」を入れたのはどのような思いからですか?

冨田 「イトカワとはやぶさ」を新たに加えたわけですけれども、糸川博士に対するレクイエムというか・・・僕ははやぶさ戦闘機というのを見たのは、第二次大戦の時。僕は名古屋や岡崎にいたのですが、B-29が戦隊を組んで、名古屋に爆弾を落として引き上げていく。そこにものすごく速い飛行機が追っかけてきて、あれが「はやぶさ」だって言う。その印象がずっと残っていたんですよ。
それで終戦になって、糸川博士が「はやぶさ戦闘機」を設計されたというのを聞いて、それですっかりファンになったんです。中学2年か3年の頃です。

Q. 糸川博士と冨田さんの接点はどのようなものですか?

冨田 僕の『プラネッツ(惑星)』。これはやっぱり宇宙にかける大きな夢が、この曲にはあると思って、音を組み始めて、組んでいる時にもう、膨大な宇宙が僕の頭の中に現れちゃったんですよ。

それで、これはひょっとしたら、バレエ音楽に合うんじゃないか、っていうことで、当時の貝谷バレエ団に売り込んだんですよ。するとある日、主宰者の貝谷八百子さんから直々の電話があって、「先日、お持ち頂いた『プラネッツ(惑星)』なんですが」と言うから、これは採用になったのかな、と思ったら、「実は糸川博士がうちのバレエ団にお入りになって、どうしてもこの曲に合わせて、バレエをやりたいんだとおっしゃるんですよ」と。
それで、糸川先生がバレエをされるコーナーを作って、糸川博士は盲目の科学者っていう役で、バレエをされたんですね。ソロを踊ってらっしゃるんですが、僕は、糸川博士のオーラが出ているような気がするんですよ。
何か1つのことに熱中する・・・糸川博士が設計したはやぶさにしても、日本国にとってとか・・・そんな考えは何もないんですよ。ただ空を飛ぶものを作りたいという、それだけですよね、糸川博士は。

バレエ公演に出演する糸川英夫博士(1977年) 画像提供:冨田勲
Q. 糸川博士のバレエに冨田さんの『プラネッツ(惑星)』が流れて、どう思いましたか?

冨田 あれは「土星」のイントロですかね、1番つまらないところを選ばれたんです。「火星」のような宇宙に向かってどんどん進んでいく、するとバーッと宇宙が開けてくる、そういうところではなかったんです。遠慮されたんですかね。
でも、すごくやっぱり、らしい・・・、あのオーラみたいもの。そんなに派手ではないけれども、何かあるんですよね。だから、僕はすごく満足したし、だいたい糸川博士が踊ってくれたこと自体に、もう客席にいて舞い上がっちゃいますよね。

Q. 冨田さんが、はやぶさの最後の写真を選ばれたのは、そういう思いもあったのですか?

冨田 今の糸川博士の話は、ちょっと結びつくかどうかなんですが、でも、不思議と言いますか、何かこの広い宇宙の中に起きたやっぱり不思議な現象としか言えないのかな。
でも、やっぱり宇宙にかける夢というものは、生き物はみんなそれを持っているんじゃないんですか。例えば、最初は地球上でも、海にしか生き物はいなかったはずで、それが生活環境も全然違う陸の上に這い上がってきたわけでしょ。今までの水中だと視野が狭いですよね。そこで初めて、宇宙、星、銀河などを見たわけですよね。そのために体の構造も自ら改良して、地上に合うように順応して生き長らえた。我々もそうですし、今、宇宙に何かこう憧れる気持ちがあるっていうのは、それの延長なのかなと思ったりするんですよね。

冨田勲さん(左)と糸川英夫博士(右) 画像提供:冨田勲