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災害時の防災

生かされなかったマンション防災計画

2011年10月24日(月) NHK生活情報ブログより

※このリポートはNHK生活情報ブログに掲載された記事です。

阪神大震災以降、多くのマンションで防災計画が作られてきました。このマンションの防災計画、東日本大震災の際には効果があったのでしょうか?

宮城県内で行われた調査の結果が、先日、公表されました。それによりますと、およそ4割のマンションで「効果がなかった」あるいは「あまりなかった」と答えています。防災計画がなぜ生かされなかったのか、取材しました。

およそ150世帯が暮らす仙台市内の14階建てのマンションです。地震で建物の一部が壊れ、電気や水道など全世帯のライフラインが一斉に止まりました。こ うした災害に備え、準備していたのが防災計画です。計画を基に「安否確認」や「避難の方法」なども決め、訓練も毎年実施していました。
しかし、震災直後から想定外の課題に次々と直面します。

【課題1・避難の支援】
その一つが避難の支援です。
マンションの10階に暮らす84歳の吉田博さんと79歳の澄子さん夫妻は、余震の不安から、近くの広場に避難しようとしました。
足が弱く、歩くのに「つえ」が必要な博さん。手伝ってくれる人が見つからず、自分たちだけで階段を使い、20分かけてようやく外に出ました。
夫婦は 「誰もいなかったんです。私たちが最後ぐらいだったかもしれません」と話していました。

このマンションでは、各世帯から、家族の情報をカードで提供してもらっていました。お年寄りや障害がある人など、避難する際に支援が必要な人がどこにいるか、このカードで把握していました。なぜ、この情報が生かされなかったのでしょうか。

実は、集めたカードは「個人情報」だとして金庫で厳重に管理されていました。
地震が起きたときには、管理組合の役員が金庫を開け、避難係がカードの情報を基に避難を支援することになっていたのです。

ところが、地震が起きたのは平日の昼間。役員はマンション内にいなかったため、カードを取り出すことができませんでした。
管理組合では「誰が安否確認を行って、誰が避難を手伝うかなどを決めていたんですが、機能させようにも、人がいませんでした」と話しています。

【課題2・備蓄品が運べない】
2つ目の課題は備蓄品です。
このマンションでは、備蓄していた水や食料などを、地震後、1階のロビーに置くことにしました。 住民は、地震でエレベーターが使えず、1階から階段で運ばなければなりませんでした。

6階に住む池田賢司さんは、多いときには1日に4往復、両手に水を持って運びました。池田さんは腰痛に苦しむようになりました。池田さんは「その後、疲労とか痛みとかを感じます」と話しています。
運ぶのが大変で、高層階の多くの人が、下の画像のように備蓄品があるロビーで寝泊まりするようになり、多いときはおよそ60人に上りました。

【課題3・避難所が使えない】
3つ目の課題は、避難所が使えなかったことです。
ロビーでの生活が続き、備蓄品も減ってくるなかで、住民たちは避難所に避難できないかと考えました。
住民の1人は「ものすごく必死でした。何とか早く行って食料ももらおうと思いました」と話しています。
避難所はマンションから10分ほどの中学校です。しかし、入ることはできませんでした。体育館はすでに避難してきた人たちでいっぱいでした。受け入れの余裕もなく、食料の配布も受けられなかったのです。

避難所を訪れたマンションの住民は「『大変申し訳ないけれど、何とかそちらのほうで確保できないか』と逆にお願いされました。そういう状況を見れば、自分たちのマンションの中で解決するしかないと思いました」と話しています。

仙台市は、マンションの住民が、ライフラインが止まることで避難が必要になるとは考えていませんでした。震災復興本部の小島博仁副本部長は「マンションは、建物そのものはしっかりしていましたが、そうした不都合が出てきて、長期になったというのは想定外でした。マンションに対する防災の考え方は課題だと改めて認識しています」と話していました。

住民たちは、今、防災計画をどう見直せばいいのか、検討を始めています。
議論では、住民の代表たちが「マニュアルがどこにあるかも決めておいて、居住者にお知らせしておいて、何かのときは必ずここを開けなさいと」とか「中層階に備蓄的な部分を設けて、そこから取るような形にすれば」などと意見を出し合っています。

マンションの防災に詳しい専門家は、全国のマンションが同じような問題を抱えていて、防災計画を見直す必要があると指摘しています。
マンション管理センターの廣田信子主席研究員は「地震はそのたびに全く違った状況になりますので、そもそも、想定外が当たり前だと思ったほうがいいと思うんです。臨機応変に対応できるマニュアルにしておかないと、何をどうしたらいいのか分からないということになりがちだと思います」と話していました。

マンションの防災計画、さまざまな課題が浮かび上がってきましたが、では、具体的にどう見直していけばいいのでしょうか?。
まず、避難の支援ですが、VTRで話を伺った専門家は、そのときにいる人たちが、おせっかいと思わず、お互いに声を掛け合ったり、支援が必要な人は声を上げたりすることが必要だと話していました。
次に、備蓄については、都内の高層マンションなどで、いくつかの階に分散して置いておくという取り組みも始まっているということです。
そして、避難所の問題です。これについては、行政と連携して、マンション自体を避難所と位置づけてもらい、水や食料などの支援を受けられるようにする、そういう仕組み作りが必要だという指摘も出てきています。