片田 敏孝先生の
いのちを守る特別授業 第一回

2012年8月22日(水曜)【Eテレ】午後6時55分〜7時45分 再放送

片田先生の津波避難の三原則を学ぼう

津波から命を守る方法はただ一つ、素早い避難です。そのためには自分で判断して、行動することが不可欠です。自分の命は自分で守るということですね。そこで片田先生が考えたのが「津波避難の三原則」です。ここからは、釜石の子どもたちのようにちゃんと逃げられるように避難の三原則を勉強しよう。

津波避難の三原則 ①「想定にとらわれるな」
もし津波が来たら 自分の家は大丈夫?

授業で使われたのが津波ハザードマップ。予想される津波の高さを赤や黄色に色分けして地図にしめしたもので、危険な地域が一目でわかります。田辺市の場合、南海地震、東南海地震、東海地震の3つが同時に起きるいわゆる「3連動」によってM8.6という大きな地震が起きた場合を想定してつくられました。生徒たちには自分の住んでいる場所に赤いシールを貼ってもらいます。こうしてハザードマップを自分の問題としてとらえさせます。色がついていない白地のところに住んでいると津波は来ないと思って、安心してしまいますよね。

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「想定」を超えて押し寄せた釜石の津波

ここで片田先生が見せたのが釜石のハザードマップ。赤い線が大きな被害を出した明治三陸津波が到達したところです。その後、堤防をつくるなどの対策により、津波が来る範囲は狭くなっています。ところが今回の津波では、それを大きく超えて津波は釜石の町を飲み込みました。最初に警報が出たときの気象庁の予想の高さは3メートル。実際には15メートルにもなりました。色がついてないと安心していた子どもたちもびっくり。

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ハザードマップって何?

さらに片田先生は意外な結果を子どもたちに語り始めました。同じマップに、亡くなった方・行方不明の方がどこに住んでいたのか、その場所に印をつけてみました。すると多くがハザードマップでは津波は来ないとされていた白地の部分に住んでいる人であることがわかったのです。逆に赤色など危険な地域の人の方が避難を行い、助かっているのです。
ハザードマップとは何なのか?片田先生は子どもたちに問いかけます。答えは「あくまで予想」なのです。

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想定にとらわれるな

片田先生の津波避難の三原則、一番大事なことは「想定にとらわれるな」。
津波がいつくるのか、どれくらいの大きさになるのか、的確にはわかりません。相手は自然、どんなことが起こるかわからない。なのにハザードマップを見ると、ああよかったと安心してしまう。片田先生は釜石の子どもたちに「ハザードマップを信じるな」と教えてきました。もし信じて避難していなかったら、多くの子どもが犠牲になっていたかもしれません。でもハザードマップそのものは悪いものではありません。どのあたりが危険かということすらわからなくなってしまうから。大切なのは知識ではなく自然に向き合う姿勢なのです。「想定」に頼らず自分たちで判断するのは、大人でも難しいことです。でも、いざというときには想定以上のことを判断しなければならないのです。

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津波避難の三原則 ②「最善をつくせ」
「想定にとらわれるな」を守り、生き抜いた子どもたち

大津波から互いに協力しながら避難し、生き抜いたのが釜石東中学校と鵜住居小学校の子どもたちです。学校は、ハザードマップでは白地の地域にあり、最初、鵜住居小学校の子どもたちは校舎の3階に避難しました。釜石東中学校ではグランドで練習していたサッカー部の生徒が最初に「想定にとらわれるな」の教えを守り、避難を始めます。グランドに地割れが出来たほどの地震だったといいます。そして校舎に向かって「津波が来るぞ!逃げるぞ!」と大声を張り上げて走り出しました。鵜住居小学校の校舎にも同じように「逃げるぞ!」と声をかけながら走ったそうです。その声を聞いた小学生たちも校舎から降りてきて、一緒に避難を始めます。

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これは津波のあとの鵜住居小学校の様子です。子どもたちが避難していた3階に軽自動車がつっこんでいます。津波は屋上を越えていきました。もし、中学生と一緒に逃げていなければ大変なことになっていたでしょう。

最善をつくせ

子どもたちが目指したのは、訓練のときに避難場所に決めていた「ございしょの里」という福祉施設です。ここに小中学生600人に一緒に逃げたお年寄りや保育園児も集まりました。そのとき中学生は「先生、ここじゃだめだ」と言い始めたのです。
中学生の頭にあったのは、「もう少し先に、より高い避難場所がある。こっちの方が絶対安全だ」ということでした。やまざきデイサービスセンターという福祉施設です。ここに向かってみんなで避難を始めます。中学生は小学生の手を引きながら走って逃げました。保育園児を抱えて逃げた子ども、最初に避難した施設のお年寄りの車いすを押しながら逃げる子どももいました。みんなで走ってやまざきデイサービスセンターに逃げ込んだ、わずか30秒後、津波は建物のすぐ裏にまで到達しました。もうギリギリのところで助かりました。
避難した場所で、子どもたちは、さらに次の行動を自分たちで考えたのです。

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片田先生の津波避難の三原則の2番目は、「そのときに出来る最善をつくせ」。釜石の子どもたちは、とにかく最善をつくすことで難を逃れることができました。
相手は自然、どんなことだって起こりうる。たとえば避難場所も、どこかに固定するのではなく、そのときに考えられる一番安全なところを目指して、走って、走って、走って、逃げるということです。

津波避難の三原則 ③「率先避難者たれ」
非常ベルがなった!さあ君は逃げられるか?

授業の一番はじめに、「わかっていても逃げられない人間の弱さ」の話をしました。それを乗り越えるには、どうしたらいいのか。三原則の3つめは「率先避難者たれ」。
片田先生がたとえに出したのが非常ベルのお話です。子どもたちにも想像出来る身近な話題から考えてゆきます。学校で非常ベルがなったことがあるか聞いたところ、小学校時代に経験がある子どもたちが。でも津波警報と同じで、やっぱり逃げられなかったそうです。

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自分は大丈夫 それが人間

人間は「自分は大丈夫だ」「前も大丈夫だった」とか思ってしまう。たとえば「津波に飲み込まれて、瓦礫の中で死んでゆく自分」なんか想像できない。誰も出来ない。それは、みんな、そういう状況に自分がおかれているなんて思いたくないからなんだ。
非常ベルがなったとする。みんな意味はわかっていても「まさか自分が火事に巻き込まれるなんて・・・」と思いながら、不安でしょうがなくなって、隣の友達の様子を見ながら、みんな逃げようとしないし、自分だけ逃げるのも格好悪い、恥ずかしいと思って、みんな、慰めあうようにそのままで、最後は一網打尽で死んでゆく。そんな風になってしまいます。

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率先避難者たれ

逆に君が一番、最初に逃げ出す。そんなことをイメージしてみよう。いま非常ベルがなって、だーっと一人で逃げるんだ。そうすると、みんな動揺して、一緒に逃げなきゃって動き出すんだ。一人じゃ逃げられない、だけど、誰かが逃げ始めるとみんなで逃げられるという構造になっている。
真っ先に君が逃げることは、君の命を守り抜くと同時に、みんなを巻き込んで逃げてゆくことにつながる。君が勇気をもって逃げ始めることで、みんなの命を助けることになるんだ。釜石東中学のサッカー部の子どもたちが、まさに“率先避難者”。素早い避難が小学生や地域の幼児やお年寄りの命を救うことにつながった。

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片田先生から高雄中学校のみんなへ

一番大事なのは、みんなが、自分自身が津波に打ち勝つんだっていう強い思いをきょうは持ってくれること。そして、それをもう一息頑張って、君たちから大人たちにその思いが伝わり、地域に広がり、そして大人たちもそんな思いになって頑張ってくれる。そして、そんな中でおじいちゃんやおばあちゃんや逃げるのが大変な人も、みんなで生き抜こうってそんな思いにこの地域みんながなって、いつの日か津波が来るけど絶対に犠牲者なんか出さないっていう誓いをみんなでできること、それをきょうの授業でしてくれるならば、きょうの授業はよかったなというふうに先生は思っています。次の授業までにみんなで相談しよう。どんな取り組みにしていくかということを、またみんなとお話ししたいというふうに思います。
きょうはこれで授業を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

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