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落雷・突風

【Q&A補足】  竜巻はいつ・どこで発生する?

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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2012年5月につくば市で発生したような竜巻は、日本のどこでも発生するのでしょうか?

答えは「イエス」です。ただし、竜巻が発生するための環境条件や地形の影響など、いくつかの条件が整う必要があるため、どこでも頻繁に起こりうるというわけではありません。

2012年5月6日に北関東で発生した竜巻は、つくば市でフジタスケール(第1回コラム表1参照)でF3(70~92 m/s)を記録するなど、わが国で発生した竜巻被害としては、最大級の被害を生じました。主な被害は、茨城県常総市からつくば市、筑西市から桜川市、栃木県真岡市、益子町、茂木町で確認され、死者1名を含む55名の人的被害、全半壊585棟を含む2,400棟以上の住家被害が確認されました。つくば市では、吉沼地区から北条地区にかけてほぼ直線的に被害が発生し、防風林に囲まれた旧家や農業施設、研究所や工場オフィスの被害が連続して認められました。住宅が密集した北条地区では、木造住宅の基礎からの横転、集合住宅の全階に及ぶ被害など、甚大な被害が生じました(写真1)。

その後の専門家による解析から、基礎から横転した住宅周辺では秒速100mを超える風が吹いていたと推定され、少なくとも局所的にF4(93~116m/s)以上の竜巻であった可能性が示唆されています。竜巻の直撃を受けた真岡市の小学校では、多くの窓ガラスが割れ、教室内がめちゃくちゃになっていました。竜巻が発生したのがたまたま休日だったので人的な被害はありませんでしたが、もし平日であればちょうど給食の時間でしたので、大変なことになっていたでしょう。
(写真2)は、真岡市での農業施設(パイプハウス)の被害です。上空から一見しただけでは元の形が想像できないほど、竜巻渦によって破壊され変形しています。北関東竜巻の被害は、日本でもF3スケールあるいはそれ以上の竜巻が人口密集地で発生すれば、何が起こってもおかしくないことを物語っています。

これまでわが国で発生し、甚大な被害をもたらした主な竜巻のスケールをみてみましょう。1990年12月11日に千葉県茂原市で発生した竜巻は、F3、被害長6.5km、最大被害幅は500 m、1999年9月24日に愛知県豊橋市で発生した竜巻は、F3、被害長19km、最大被害幅は550m、2006年11月6日に北海道佐呂間町で発生した竜巻は、F3、被害長1.5km、最大被害幅は300mとされています。つくば竜巻は、F3、被害長17km、最大被害幅は500mと推定されていますから、そのスケールからもわが国で発生した最大級の竜巻といえます。

竜巻の発生頻度と発生場所

では、日本ではどのくらいの頻度で竜巻が発生しているのでしょうか。ここでは、1997年から2006年までの10年間にわが国で発生した250個の竜巻について、Fスケールごとの発生頻度をみてみましょう(図1)。F3の竜巻は10年に1度、F2(50-69m/s)の竜巻は年2個程度であり、ほとんどの竜巻はF0(17-32m/s)~F1(33-49m/s)スケールであることが分かります。F0スケールの発生頻度が相対的に少ないのは、比較的軽微な竜巻被害がカウントされず見逃されていることを意味しています。2008年に年間100個を超える竜巻が報告(気象庁)されたように、今後関心が高まり一般の人からの報告が増えたり、現地調査、レーダー観測が進めば、発生数はさらに増加する可能性があります。竜巻のような短寿命で局所的な現象は、その存在を捉えることが難しいので、いまだに発生実態は不明なのです。

日本で発生する竜巻の3割弱は海上で発生し、約3割は海岸線から10km以内で発生しています。すなわち約6割の竜巻が、人口や経済活動の集中する海岸線で発生しています。竜巻の発生場所を市町村ごとの行政区分で調べてみると、全体の1/4が、人口10万人以上の都市で発生したことが分かります(図2)。また、人口100万人以上の都市でも竜巻被害が報告されています。たとえF0~F1クラスの竜巻でも、大都市で発生すると甚大な災害に直結する可能性が高いため、十分に考慮する必要があります。

しばしば複数の竜巻がほぼ同時に発生しますが、これは竜巻を生み出すポテンシャルのある積乱雲が複数発生し、そこから複数の竜巻が発生したり、1個のスーパーセルから複数の竜巻が発生する場合があるからです。2012年5月6日に北関東で発生した3本の竜巻は、おのおの独立して発生し、被害長は20~30kmに及びました。わが国でこれだけの規模の竜巻が、ほぼ同時に発生した北関東の事例は珍しいといえます。

竜巻対策=発達した低気圧や台風に備えること

暖候期(4~9月)のサンダーストームにより中西部で発生が集中する米国と異なり、わが国の竜巻は、さまざまな大気擾乱(じょうらん:大気の乱れ)に伴い年間を通じて全国で発生しています。第1回コラムの(図2)で示したように、温帯低気圧に伴う竜巻は北海道から沖縄まで季節を問わず発生している一方で、台風や冬季季節風下で発生する竜巻は特定の季節に特定の場所で発生しています。台風に伴う竜巻は、台風のレインバンドが特定の条件下で進入しやすい宮崎県、高知県、愛知県、関東平野に集中しています。西高東低の冬型気圧配置下では、日本海上で形成される降雪雲に伴い竜巻が発生します。停滞前線に伴う竜巻のほとんどは梅雨前線周辺で発生した竜巻で、前線活動が活発な九州や四国で発生しています。局地的な雷雨に伴う竜巻の多くは、夏季に発生する熱雷に伴うもので、関東、中部や九州の山沿いで発生しています。夏季に山沿いを中心に熱雷が数多く発生しますが、竜巻の発生数が相対的に少ないのは、安定気塊である太平洋高気圧に覆われた状態で風が弱く、竜巻発生に必要な風の鉛直シアーの効果がほとんど働かないことに起因しています。

このように、台風や寒気南下に伴い発生する竜巻が多いことを反映して、わが国の竜巻発生頻度は9月にピークがあり、9月~11月にかけてが日本の竜巻シーズンといえます(第1回コラム図2参照)。気象擾乱別の竜巻発生割合をみると、約半数が温帯低気圧に伴い発生し、台風に伴う竜巻は1/4を占め、全体の3/4は天気図に現れる大規模な擾乱に伴い発生することが分かります(図3)。すなわち、竜巻そのものは予測できなくても、発達した低気圧や台風に備えることが、竜巻対策にもつながるのです。

2006年11月の道東(佐呂間竜巻)や1990年12月の関東(茂原竜巻)で、甚大な被害をもたらすような巨大竜巻が発生するとは、当時予想もされていませんでした。最後に繰り返しになりますが、発達した低気圧に伴う竜巻は、日本のどこでも発生するのです。

(2013年9月30日 更新)