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台風の基礎知識

第11回  台風被害に備えるために ~警報や注意報を理解し防災に役立てましょう~

執筆者

市澤 成介
元気象庁予報課長
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台風時に発表される暴風・波浪(高波)・高潮に関する警報や注意報

気象現象の中で日本に最も甚大な被害をもたらすのは、台風の直撃によるものです。大雨被害や洪水被害に加え、暴風被害、高波・高潮被害などが発生するため、気象台から大雨、洪水の警報・注意報に加え、それぞれの現象に対する警報・注意報などが発表され、警戒するように呼びかけられます。

今回のコラムでは、暴風、波浪(高波)、高潮に関する情報を中心に、その情報が持つ意味や、その活用方法と留意事項をまとめます。大雨と洪水については、前回のコラム(第10回 大雨災害に備えるために/市澤)をご覧ください。

警報などの発表基準

被害の発生が予想される暴風・強風、波浪(高波)、高潮については、「風の強さ、波の高さ、上昇する海面の高さ」ごとに、その現象の激しさの度合いに応じて、それぞれ注意報、警報、特別警報の3段階で発表されます。【表1】に示すように、注意報と警報については明確な基準が示されています。

ただ特別警報の発表条件は、「過去に甚大な被害が発生した1959年の伊勢湾台風や1934年の室戸台風級の台風の直撃が予想される場合」となっており、大雨、暴風などの個々の現象の危険度ではなく、複合災害として「甚大な災害が起こるおそれが極めて高い場合」に特別警報が発表されます。このため発表される場合は、大雨、暴風、波浪(高波)、高潮の各警報は全てが特別警報に切り替わります。
なお南西諸島については、「猛烈な強さ」の台風通過が予想される場合のみの発表となります。

各注意報・警報で示されている内容と注意すべき点

風の強さを表すには、10分間の「平均風速」と「瞬間風速」の2種類がありますが、強風注意報や暴風警報の発表基準では、予想される最大の平均風速(最大風速)が用いられています。

瞬間風速が強いときに被害が多くなるため、各種の防災気象情報には最大風速と最大瞬間風速が併記して発表されます。一般的には、最大風速に比べ最大瞬間風速は1.5倍程度ですが、大気の状態が不安定な場合や周囲の地形の影響などにより「3倍を超える」こともありますので、注意が必要です。

波の高さは、波の谷と山の高さの差である「波高(はこう)」で示され、「有義波高(ゆうぎはこう)」と「最大波高」が用いられます。波は一つ一つの高さの変動が大きいので、ある地点で一定時間(例えば20分間)に観測される波の高さのうち、高い方から数えて全体の3分の1にあたる波について平均した波高を「有義波高」と呼び、この間の最大の高さを「最大波高」と呼びます。波浪注意報・警報の発表時には「最大波高」ではなく、「有義波高」が用いられます。これは、「有義波高」が目視観測による波の高さに近いためです。

波浪警報が発表されたとき、示される波の高さは「最大のものではない」ことに注意が必要です。「1.5倍を超える高波も来る」と思ってください。

高潮は、海面が異常に上昇する現象です。海面の高さを「潮位」といい標高で示されますが、高潮注意報・警報の発表時でも「標高」が用いられています。

高潮は、主に台風による気圧の降下により海面が持ち上がる「吸い上げ効果」と、沖から海岸に向かって吹く風のため海岸付近の海面が上昇する「吹き寄せ効果」によって起こります。「吸い上げ効果」は気圧が低いほど大きく、「吹き寄せ効果」は海岸に向かう風が強いほど大きくなりますが、風向変化や海岸線の形状によって変動します。

海面は干・満潮を繰り返しているため、満潮時に台風の接近が重なると「より高い高潮」を起こすことになりますから、高潮注意報・警報には満潮時刻も合わせて示されています。

各警報が発表されるタイミングと警戒すべきこと

参考として、2017年(平成29年)10月23日、静岡県に台風21号が上陸したときに静岡地方気象台が発表した各防災気象情報を、気象要素の変化とともに時間軸に沿って整理したものを示します。気圧(hPa)の下降と風速の強まり具合が、台風の接近する様子をはっきりと示しています【図2】。

1)波浪(高波)警報
台風が接近すると、最初に発表されるのが「波浪(高波)警報」です。台風の周りで暴風によって発生した波が、台風に先行する形で沿岸に到達するためです。波浪(高波)警報が発表される状況では、高い波が防潮堤を越えるようになり、海岸付近を通る道路や鉄道も波の影響で止まることがあります。海岸付近は危険な状態ですから、近づかないでください。
なお、沖合の状況を知りたい場合は「地方海上分布予報」を活用してください(*1)。

2)暴風警報
台風の暴風域がかかり始める数時間前には、「暴風警報」が発表されます。
気象庁ホームページでは【図3】のように、警戒すべき時間と3時間刻みの風向と風速が表示されます。これに加え台風進路予報図や、台風の暴風域に入る確率情報なども掲載されるので、ぜひ確認して早めの備えをしてください。

暴風警報が発表される状況では、街路樹の倒木、看板の落下や割れたガラス片の飛散等が起こり、屋外は危険な状況です。気象庁の「台風の暴風域に入る確率」情報を確認し、危険な状況になる時間帯には屋外に出ないことが大切です【図4】。

なお、台風から離れた場所でも竜巻等の突風を伴うことが多いので、気象庁ホームページの「竜巻注意情報」や「竜巻発生確度ナウキャスト」で、その危険性も確認してください(*2)。

3)高潮警報
高潮の危険性が高まる5~6時間前までに「高潮警報」が発表されます。高潮現象が起きている時間帯では、すでに暴風や大雨のために屋外で行動することが困難な状況なので、高潮警報が発表された段階では躊躇(ちゅうちょ)することなく避難してください。海面が防潮堤の高さを超える状況になると、津波と同様の破壊力のある海水が内陸に向かって流入しますから、安全な場所への早めの避難が必要となるのです。

海面(潮位)の状況は、気象庁ホームページで確認できます。潮位の状況のほか、今後の干満変化や台風最接近時の予想潮位も活用して、早めの備えをしてください(*3)。

なお暴風警報や波浪警報に比べ、高潮警報が発表されるのは「まれ」です。そのため、この警報が発表される台風は「より危険度が高い」と言えます。

台風への備えは早めに

台風の進路予報は次第に精度が上がっており、数日前から台風の影響の有無を判断できるようになっています。暴風、波浪(高波)、高潮の各注意報・警報も早めに発表されます。しかし、台風が日本に接近する3日前の段階では、各警報はまだ発表されていませんので、「台風進路予報」や「台風の暴風域に入る確率」などの情報を活用して、台風の影響が大きくなってからの屋外行動をしなくてもすむよう、事前対策を講じてください。

台風の進路によっては、状況が大きく変化します。また台風は進路予報の中心線を進むわけではありませんので、台風の予報円を参考に幅を持って考え、影響が大きい場合を想定した「余裕を持った」対策を講ずるよう心がけてください。


(*1)
地方海上分布予報: http://www.jma.go.jp/jp/umimesh/df00.html?element=wavh

(*2)
竜巻注意情報: http://www.jma.go.jp/jp/tatsumaki/
竜巻発生確度ナウキャスト:
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/index.html?areaCode=000&contentType=2

(*3)
潮位観測情報: http://www.jma.go.jp/jp/choi/

(2018年8月31日 更新)