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台風の基礎知識

第10回  大雨災害に備えるために ~警報や注意報を理解し防災に役立てましょう~

執筆者

市澤 成介
元気象庁予報課長
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注意報・警報・特別警報が持つ意味とは

大雨や暴風などによって災害が起こるおそれがあるとき、気象台からはさまざまな防災気象情報が発表されます。特に、6種類の「特別警報」、7種類の「警報」、16種類の「注意報」は、発表状況がテレビなどで報道されるように、とても重要な情報です。この注意報、警報、特別警報は、災害発生の「危険度の高まり」に応じて段階的に発表されます。

本コラムでは、平成29年(2017年)7月5日に九州北部地方で起きた豪雨災害に関して、発表された大雨と洪水に関する警報や注意報などを中心に、その情報が持つ意味や、活用方法、留意事項をまとめます。

「大雨」と「洪水」に関する警報・注意報など

1)「大雨」
大雨は「土砂災害」と「浸水害」の危険度に応じ、注意報、警報、特別警報の3段階に分けて発表されます。発表基準は、土砂災害では「土壌中に浸み込んだ雨水の量を示す土壌雨量指数」、浸水害では、「降った雨が地表面にたまった量を示す表面雨量指数」となっています。特別警報は、広い範囲が対象で、極めて異常な場合に発表するため、発表基準は警報・注意報と異なっています【表1参照】。

2)「洪水」
洪水に関する特別警報はありません。中小河川については、気象台が注意報、警報の2種類を発表します。発表基準は流域雨量指数です。大河川については河川管理者と気象台が共同で4段階の「洪水予報」を発表します。特に、「氾濫発生情報」は、大雨における特別警報に値するものですので、注意が必要です【表2参照】。

各種防災気象情報の発表内容 ぜひ確認してほしい情報

【図1】に、平成29年7月九州北部豪雨災害が発生した当日の、警報や注意報などの発表内容と、朝倉市のアメダス観測点の10分間雨量を、時系列で示しました。

大雨については注意報、警報、特別警報の順に、そして警報では、浸水害と土砂災害に分けて発表されています。これに加えて、警報発表下で「土砂災害警戒情報」と「記録的短時間大雨情報」が発表されました。土砂災害警戒情報は、気象台と都道府県が共同で発表する情報で、土砂災害の危険度がより高まった市町村が示されます。記録的短時間大雨情報は、短時間に猛烈な雨が降ったとき、速やかにその事実を伝える情報で、いつ被害が発生してもおかしくない状況を示しています。

洪水については、注意報、警報の順に発表されていますが、朝倉市内を流れる筑後川については、氾濫注意情報、氾濫警戒情報、氾濫危険情報の順に発表され、特に「氾濫警戒情報」は大雨特別警報の発表後であり、この情報が極めて異常な状態を示すことが分かります。

1)注意報発表段階で確認すべき情報
注意報が発表されたとき、「府県気象情報」(福岡県の場合では「福岡県気象情報」)や気象庁ホームページなど(*1)で、注意報に示される「今後の推移や警報の予告」などを確認し、注意警戒を要する現象や時間帯などを把握すること、これが災害への早期の備えとして非常に重要です。発表時点では注意報でも、警報への切り替えがありえるため、状況の変化を確認できるのです。もちろん、雨の降り方にも注意を払う必要があり、高解像度降水ナウキャスト(*2)などで、雨域の動きや発達度合いをぜひ確認してください。

(*1) 府県気象情報
下記の「全般気象情報」の画面で該当府県を選択。
気象庁ホームページ: http://www.jma.go.jp/jp/kishojoho/
(*2)高解像度降水ナウキャスト
気象庁が、全国の気象レーダーや雨量計の観測データなどを利用して、250m解像度の降水分布を30分先までの短時間予報として提供。
気象庁ホームページ: https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/


2)警報発表段階で確認すべき情報
大雨警報は「大雨警報(土砂災害)」あるいは「大雨警報(浸水害)」と、かっこ付きで警戒すべき災害名が示されるので、この警戒すべき災害名を参考に防災対策を進めてください。
大雨や洪水の警報発表時には「土砂災害警戒判定メッシュ情報」、「大雨警報(浸水害)の危険度分布」、「洪水警報の危険度分布」(*3)で危険な地域や河川を確認してください【図2参照】。これらの情報は10分ごとに更新されるので、最新の情報を活用し、災害の危険度の変化を確認して避難行動などに役立ててください。

(*3)
土砂災害警戒判定メッシュ情報: https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/
大雨警報(浸水害)の危険度分布: https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/inund.html
洪水警報の危険度分布: https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html

なお、洪水警報の発表は中小河川を対象としているので、大河川の状況については、指定河川洪水予報の発表の有無を確認してください。


3)大雨特別警報の発表時に確認すべき情報
「大雨特別警報」は、極めて異常な状況となったときに発表されるものですから、まずは身の安全確保を第一に行動を取る必要があります。そのためにも、「危険度分布」情報などで周囲の状況を確認するほか、自治体が発表する避難情報や河川管理者が発表する水位情報も、ぜひ積極的に把握するよう努めてください【図3参照】。

防災気象情報を活用するうえでの留意事項

1)深夜の警報発表への備え
朝倉市の例で考えた場合、7月5日の13時過ぎに大雨となった状況が12時間ずれていたら、警報発表が深夜になり、避難が困難を極めることになります。気象台では、深夜に大雨が降りそうだとしても、夕方の段階で警報発表に踏み切る決断がつかない場合もあります。このため気象台では少しでも災害の危険度が高くなると思う場合、夕方に「警報級の可能性」という情報を発表します。
深夜の警報発表にも対応していただけるように事前の備えとして発表しますので、こうした情報を活用して、より安全な行動を取ってください。

2)危険度分布図を活用する
大雨警報は市町村が対象であり、個々の危険地域を特定したものではありません。また、対象の市町村内全域で危険度が高くなるとは限りません。
ご自分の地域の危険度の状況を知ることが大切ですから、前述の「危険度分布図」などにより確認することを、強くお勧めします。

3)大雨警報の発表基準は、雨の降り方の強さではない
「雨がやんでも大雨警報が解除されないのはなぜでしょう」という質問を受けることがあります。これは、「大雨警報の発表基準」が雨の降り方の強さではなく、土壌に含まれる雨水の状況を示す「土壌雨量指数」や地表面にたまる雨水の状況を示す「表面雨量指数」を用いていることによります。
土砂災害の危険度は土壌中の水分量に関連しているので、雨が降りやんでも土壌中の水分量が危険な状態が続く間は、警報が継続されるのです。

4)記録的短時間大雨情報が連発する状況は災害が起こっている
数年に一度程度しか起こらないような、短時間に猛烈な雨が降ったときに発表される情報が、記録的短時間大雨情報です。
まれにしか発表されないこの情報が、同じ地域に複数回発表される状況は、確実に被害が発生する危険な事態だと認識してください【表3参照】。

5)大雨特別警報が発表されてから避難行動を取るのでは遅すぎる
大雨特別警報は、極めて異常な降雨状況になった時点で発表されます。すでに各所で被害が拡大している可能性が高く、極めて危険な状況となっているのです。「大雨特別警報が出たら避難しよう」などとは考えず、大雨警報の発表段階で「早めに避難行動を取る」ことが大切です。


大雨に関する警報・注意報や情報について、段階的に発表される流れと、利用法について述べてきました。過去の大雨災害の事例では、いつも同じ雨の降り方ではないので、【図4】で示した時間経過に沿った対応を基本として、状況変化に柔軟な対応ができるよう、各種の防災情報をぜひ活用していただきたいと思います。

(2018年6月29日 更新)