トップページ > コラム > 地震・津波台風・大雨落雷・突風大雪猛暑火山・降灰火災PM2.5・黄砂防災の知恵低気圧に伴う突風の発生には、要注意!

落雷・突風

第21回  低気圧に伴う突風の発生には、要注意!

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
プロフィール・記事一覧

2018年3月1日から2日にかけての事例

2018年3月1日から2日にかけて、発達した低気圧の通過に伴い、日本列島の広範囲で強風が吹き荒れました。この時期の南岸低気圧は、太平洋側の降雪だけでなく、竜巻など突風も伴います。

2018年2月28日に東シナ海付近で発生した低気圧(温帯低気圧)は、翌3月1日午前9時に関東上空で988hPaと発達し、2日午前9時には北海道の東で962hPaにまで急速に発達しました【図1】。このように、急速に発達する低気圧は、爆弾低気圧(*1)と呼ばれています。全国的に強風が吹き荒れ、特に東日本から北日本では被害も相次ぎました。電柱の倒壊やビル工事現場で足場の倒壊などが報告され、北海道では吹雪により車の立往生が発生しました。また、茨城県では突風の被害も報告され、行方市では1日午前7時40分ごろ「竜巻」が発生(最大風速40m/s、JEF1(気象庁))し、車が横転したり窓ガラスが割れたりしてけが人も出ました。また、鉾田市でも午前8時ごろに突風被害が生じました(最大風速35m/s、JEF0、原因は不明(気象庁))。

茨城県内で発生した竜巻は、ちょうど低気圧が関東上空を通過した時刻に対応しており、発達した雲の下で発生しました【図2】。さらに気象レーダーの解析からは、寒冷前線上の積乱雲エコー(※)に伴っていたことが分かりました。

(※)エコー:気象レーダーから電波(マイクロ波)を発射し、戻ってきた電波の強さ(レーダーエコー)で、雨や雪の強さ(降水強度)を観測します。

低気圧に伴う竜巻

わが国で発生する竜巻の多くは、温帯低気圧や台風(熱帯低気圧)に伴い発生しています【図3】。

特に、日本で報告された竜巻の約半数が低気圧に伴って発生しており、北海道から沖縄まで日本全国で、季節を問わずに発生しているのが特徴です(第1回コラム「日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ」の【図2】(*2))。

低気圧に伴う竜巻の発生場所を、Fスケールの大きさ別に前線上に相対的な位置で表してみると、多くの竜巻が寒冷前線上とその前面の暖域で発生していることが分かります【図4】。特に、F2以上の強い竜巻は、寒冷前線上と寒冷前線の前面(プレフロンタルライン)で発生しています。千葉県茂原市の竜巻(1990年12月11日、F3)、山形県酒田市の竜巻(2005年12月25日、F1)、北海道常呂郡佐呂間町の竜巻(2006年11月7日、F3)、茨城県つくば市の竜巻(2012年5月6日、F3)など、顕著な被害を生じた竜巻はいずれも低気圧に伴って発生したものです。また、同じ時期の事例として、1978年2月28日に発生した竜巻(*3)も発達した低気圧の暖域で発生したものでした。

急速に発達する低気圧に要注意!

「台風には対策をしたけど、低気圧は大したことがないと思った・・・」という声をよく耳にします。私たちは、これまでの経験から台風には事前の備えをしますが、年間数十個が日本周辺を通過する低気圧への備えをする人は少ないようです。台風は発生直後からその動きが把握でき、上陸する数日前から雨量や最大風速などの予報が出せるようになってきました。一方、日本付近で急速に発達する低気圧は、その正確な予測が難しいのが現状です。特に「爆弾低気圧」は、日本海や本州南岸で突然発生して、台風並みの強さになるため、天気の急変を伴い、山や海での事故につながりやすくなります。つまり、爆弾低気圧に伴う暴風、雨、雪は、台風より怖いといっても過言ではありません。しかし、その備えが十分に行われているとは言えません。

また、低気圧に伴い発生する竜巻などの突風は、発達した低気圧の通過時に集中して発生しています。冬季の南岸低気圧や日本海上で急速に発達する低気圧だけでなく、寒気の南下に伴う寒冷低気圧(寒冷渦)も春や秋には観測されます。低気圧の通過は時間を選びませんから、竜巻などの突風もいつ起こってもおかしくないと言えます。急速に発達する低気圧には、台風と同等あるいはそれ以上の注意が必要なのです【図5】。

(*1)爆弾低気圧はbombの訳語であり、緯度φにおいて低気圧が24時間に、24(sinφ/sin60)hPa以上中心気圧が降下した温帯低気圧と定義されます。北緯45°で計算すると、約20hPaに相当します。
Q&A「今春、日本列島を襲った爆弾低気圧、通常の低気圧と何がどう違うの?」
(*2)第1回 日本中どこでも起こりうる竜巻の怖さ/小林文明
(*3)1978年2月28日夜に発生した竜巻(F2)は、神奈川県川崎市から千葉県鎌ケ谷市にかけて約30kmにわたって被害をもたらし、中でも地下鉄東西線の列車が、荒川・中川橋梁で転覆した事故は当時としても社会に大きなインパクトを与えました。

(2018年5月31日 更新)