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地震全般・各地の地震活動

第1回  活断層と内陸大地震

執筆者

遠田 晋次
東北大学災害科学国際研究所 教授
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地震と断層

23年前の1995年、阪神・淡路大震災では住宅倒壊が相次ぎ、6,434人もの尊い命が失われました。野島断層という活断層が約2000年ぶりに動いたことが原因でした。本コラムでは、局所的に甚大な被害をもたらす活断層について解説します。

地震とは、数十年~数万年にわたって岩盤内に蓄えられたひずみが、数秒~数十秒間という短い時間で振動として解放される現象をいいます【図1】。このひずみの解放が、岩盤内の亀裂である断層によって行われます。

断層が地震の原因と分かったのは西暦1900年前後のことです。日本では岐阜県と愛知県を襲った明治24年(1891年)のマグニチュード(M)8の濃尾(のうび)地震がきっかけとなりました。濃尾地震では約80kmにわたって地表に断層が出現し、地面が最大8mも食い違いました。地震を引き起こすのは断層ですが、地震の規模は断層の「大きさ(断層の長さ、断層の幅)」と「ずれ」の量(3つの要素を掛け合わせたもの)で決まります。Mが1つ増えるとエネルギーが32倍になり、2つ大きくなると1000倍にもなります。この「エネルギーが1000倍」ということを分かりやすく言うと、断層の長さ、幅、ずれの量がそれぞれ10倍(10x10x10)大きい、ということになります。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)は、2016年4月16日に発生した熊本地震(M7.3)の1000倍程度の大きさの地震だったのです。

日本列島の内陸では、深さ15kmよりも浅い岩盤で地震が発生します。M3程度以下の小地震は日常的に至る所で発生しています。これらの小さい地震は、動きを地表で確認することができません。ところが、M7弱程度の地震になると、断層の長さは15kmにも及び、ずれは1mを超えます。そのため、地震を引き起こした断層(震源断層)が地表に顔を出すことになります。これを「地表地震断層」といいます【図2】。

活断層によって作られる地形

地表地震断層は1回の大地震で出現するものです。活きている断層、すなわち「活断層」は数千年~数万年間隔でこのような動きを繰り返します。1回の地震では2mしかずれなくても、10回動けば20m、100回地震を起こせば200mのずれになり、崖や川・尾根のずれとなって地形に現れます。これが地表で認識できる活断層です。さらに活動が続くと最終的には盆地(平野)と山地に分かれます。日本の起伏に富む地形の多くが、この活断層の産物なのです。阪神・淡路大震災の前には「関西には地震は起きない」との指摘もあったようですが、京都盆地、奈良盆地、琵琶湖、大阪平野など、水が豊富で人々が住むのに適した近畿地方の平たん地はすべて数万~数十万年間の活断層の営みによるものです【図3】。実は、近畿地方の活断層型の地震のリスクは関東地方よりも高いのです。

地震予知の3つの要素「いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起こるか」のうち、活断層を見つけ出せば、「どこで(場所)」を予知したのも同然です。具体的に個々の活断層を探す際には、航空機から位置を少しずらして撮影した2枚の空中写真を用いて地形を立体的に分析・調査します。崖や谷、尾根、段丘の縦方向、横方向のずれなど、大地が動かなければできない地形を探していきます。その後、現地で地質調査を行って存在を確かめます。このような調査で見いだされた国内の活断層は2000以上に上ります。直下型地震を引き起こす無数の「時限爆弾」が埋め込まれているようなものです。

活断層から大地震を予測する

前述の「いつ、どこで、どのくらい」のうち、残るは2つです。「どのくらい(の規模)」、つまりMは、活断層の長さから推定できます。長さが20kmでM7、40kmでM7.5、80kmでM8程度の地震という目安です。地震の規模予測は、地域防災計画だけではなく、原子力発電所の耐震設計にまで広く用いられてきました。 ただ、日本列島では多くの場所で活断層が網目状に密集しているので【図3】、活断層の長さを決めることは実は簡単ではありません。また、隣り合う活断層が同時に動いて(連動して)、より大きな地震を引き起こすことも分かってきました。最近では、熊本地震も日奈久(ひなぐ)断層と布田川(ふたがわ)断層の連動といえますし、同じ2016年に発生したニュージーランド南島のカイコウラ地震では、10以上の活断層がドミノ倒しのように連動してM7.8もの大地震になりました。連動性の評価は、現在の重要な研究テーマの1つとなっています。

最後は、活断層の調査結果から「いつ」大地震が発生するのかという時間予測です。まず「過去は未来の鏡」とみて、活断層での地震発生の歴史をひもときます。大地震で地表に断層が現れる現象は過去にも起こっています。その痕跡を探すため、バックホー(*1)を使って活断層を横切る溝(トレンチ)を掘り、数m以浅の地層を調べます。地層のずれの観察と年代測定によって地震発生時期を特定し、活断層がどのくらいの間隔で大地震を起こしてきたのか(活動間隔)を推定します。また、最後の大地震からの経過時間も重要です。経過時間が長い方がひずみの蓄積が進んでいることになり、確率が高くなる傾向があります。

(*1)土砂の掘削用に用いられる油圧ショベルの一種

活断層による地震に備える

東北地方太平洋沖地震のような「海溝型地震」と、熊本地震のような「内陸地震」では、同じ地震でも様相が異なります。被災域の広がりや揺れの継続時間はMに比例するのですが、揺れの強さは震源からの距離に関係します。活断層による内陸地震は、地震波が直下から弱まることなく地表に到達します。そのため、震度7の揺れが起こる地域が活断層周辺に生じることになります。

内陸地震の場合、震度6以上の地域では突然の揺れに備える時間が全くありません。最近では揺れが到達する直前にテレビやラジオ、携帯電話から「緊急地震速報」が発せられます。緊急地震速報は地震波を検知・解析して知らせるのですが、直下型の場合は、その猶予がありません。ですから、内陸直下地震における対策は、不意の強い揺れから命を守ることです。その効果的な対策としては建物の耐震補強があります。特に、人口の集中する県庁所在地と政令指定都市の多くが、近傍に活断層を抱えており、しかも、その多くは軟弱地盤の上にあります。阪神・淡路大震災のような災害を繰り返さないためにも、内陸直下地震への万全の備えが必要です。

また、活断層による内陸地震の特徴として「斜面災害」があります。10年前の岩手・宮城内陸地震では、栗駒山(くりこまやま)山麓で地滑りや土石流、斜面崩壊、落石などが多発し【図4】、18人が斜面災害に巻き込まれました。さらに同地震では、斜面崩壊の土砂によって河川が閉塞され、多くの天然ダムが発生しました。歴史地震(*2)の中には、このような地震による天然ダムの決壊によって、村々が流されて消滅したという記録が多数残されています。

(*2)近代的な観測機器を使用する前の時代に起きた地震のこと。古文書などに残された記録をもとに、過去の地震の震域や震源、マグニチュード、津波の規模などを推定する。

(2018年2月28日 更新)