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火山噴火

第8回  霧島連山・新燃岳噴火~2017年10月の噴火とその背景~

執筆者

石原 和弘
京都大学名誉教授 火山噴火予知連絡会会長
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6年ぶりの新燃岳噴火

霧島連山の新燃岳では2017年10月11日午前5時半過ぎに、2011年9月7日以来約6年ぶりの噴火が発生しました【写真1】。今回の噴火は、2011年の噴火の際に噴出して山頂火口を埋めた溶岩の東端付近で発生しました。噴火は約1週間続き、10月17日未明に収まりました。火山灰の放出量は数十万トンと推定されます。2011年1月26日の噴火【写真2】から6日間に噴出した火山灰や溶岩は放出された約4,300万トンですので、今回の噴火の規模は2011年の100分の1程度といえます。

宮崎・鹿児島両県の自治体等は、霧島山火山防災協議会において事前に対応方針を協議していたので、10月5日深夜の噴火警報(噴火警戒レベル2)、10月11日早朝の噴火開始による噴火警戒レベル3への引き上げなどの事態に冷静に対応することができました。とはいえ周辺の地域では、降灰により野菜の出荷ができなくなる、ホテルや旅館の宿泊キャンセルが出るなど、少なからず噴火の影響を受けました。

今回の噴火は、前触れなしに突如発生したわけではありません。噴火の前兆と、その背景にある2011年噴火前からの霧島山の火山活動を振り返ります。

2017年10月噴火の前兆と経過

今回の噴火は、火山活動が静穏な状態から次第に活発化して約2週間で噴火に至るという、分かりやすい経過をたどりました【図1(1)~(5)】。

2017年9月下旬から10月上旬にかけて、新燃岳地下の浅い部分を震源とする火山性地震(主にB型地震※)の発生頻度が1日数回から数十回へと増加し【図1(5)】、地震の振幅も増大しました【図1(4)】。10月8日以降になると新燃岳火口からの噴気量も増加し、9日午後には新燃岳地下へのマグマの流入に対応すると考えられる傾斜変化と火山性微動が観測されるなど、次第に火山活動が活発化し11日早朝の噴火開始に至りました【図1(1)】。火山ガス(二酸化硫黄)の放出率は、噴火直後の1日当たり800トンから次第に増大、15日には11,000トンに達し【図1(2)】、さらなる噴火活動の高まりも懸念されましたが、19日以降急速に低下しました。

※B型地震:火口直下約3kmより浅い部分で発生するごく微小な地震。通常の地震に比べてゆっくりとした振動であり、火山活動が活発な時期に多発する。

霧島山の火山活動の特徴

霧島山は北西・南東方向に長さが約20km、幅10km余の範囲に林立する20を超える火山体で構成されている火山群の総称であり、「霧島連山」と呼ぶにふさわしい山容といえます【写真3】。有史時代より、新燃岳とその南東約4kmにある御鉢(おはち)で噴火を繰り返してきました。1768年には韓国岳北麓の硫黄山でも噴火が発生しました。明治・大正年間には御鉢で頻繁に噴火しましたが、1959年の新燃岳噴火以降は、火山活動の中心は新燃岳に移行しました。

現在までの半世紀余の火山観測によれば、火山性地震は、霧島山北西端の飯盛山、韓国岳、大浪池、御鉢などの地下でも発生していて、新燃岳以外でも火山活動の高まりが認められます。例えば、2003年から2005年にかけては御鉢で火山性地震が頻発、火山性微動も観測され、噴気も活発化しました。噴火のおそれもあったため、周辺の自治体は御鉢と高千穂峰への登山を一時的に規制しました。

霧島山の活動を予測するには、新燃岳だけでなく、霧島山全域を視野において、地震や地殻変動などの観測をもとにマグマの動きを見極めることが大切です。

最近の地震活動~出口を探るマグマ

地震観測は、マグマが出ようとしている場所を捉えるのに適しています。2015年1月から2017年10月までの霧島の中央部の震源分布を【図2】に示します。火山性地震が集中して発生しているのは、韓国岳、硫黄山、えびの岳、大浪池と新燃岳付近の5kmより浅い場所です。震源が2kmより浅い地震が発生し始めると火山活動が高まり、頻発すると噴火の危険性が高まることが知られています。【図2】で震源が2kmより浅い火山性地震が発生している場所は、新燃岳と硫黄山を含む韓国岳の北麓周辺の2か所です。これらの震源の位置が時間とともにどのように変化してきたのかを次に紹介します。

2013年以降、新燃岳の火山活動が沈静化に向かう一方で、韓国岳の北麓周辺と大浪池付近では、2014年初めから地震が多発し始めました。さらに2015年末からは硫黄山直下の深さ1~2km付近に震源が集中する傾向が顕著になり、二十数年ぶりに火口内に地熱異常が出現しました。地熱異常域が次第に拡大して噴気活動も活発化し、2017年5~6月には1日当たり10~20トンの二酸化硫黄の放出が観測されるなど、噴気活動も高まりました【写真4】。この間、B型地震も観測され噴火が懸念されましたが、2017年8月以降、噴気活動が緩やかに低下し、9月上旬以降は地震活動が急速に低下しました。9月下旬以降は、硫黄山に代わって新燃岳の直下の地震活動が活発化し、10月の噴火に至りました。

このように時系列で追っていくと、2017年10月の新燃岳の噴火は、新たな霧島山の火山活動の始まりではなく、2011年の新燃岳噴火から続く霧島連山の火山活動の一コマであることが分かります。

地下のマグマの動きと霧島山の今後

2011年新燃岳噴火から今回の噴火に至るまで、霧島連山の活動の高まりに関係するマグマの動きがGPS(GNSS)観測で捉えられました。

【図3】に示した霧島山全域を取り囲む一辺20数kmの三角形のGNSS基線では、2009年から今回の噴火までに、三辺がともに伸びる、すなわち霧島山の地面が膨張した時期が(1)~(5)までの5回あり、それぞれの期間に火山活動の高まりが認められました。マグマが地下深部から霧島山に上昇して地盤の膨張を引き起こしたと考えると、最近9年間に、5回のマグマ上昇があったことになります。

2011年1月26日に始まった新燃岳噴火の際には、5日間に約4,300万トンの火山灰や溶岩が噴出し、噴火前の約1年間、期間(1)の膨張を一気に解放する急激な収縮が生じました。急激な収縮といっても、基線が短縮した長さはわずか2cm程度です。霧島山周辺の多数のGNSSデータを併せて解析し、推定された地盤収縮の源は、新燃岳の北西5~6 km、えびの岳付近の深さ6~10 kmの場所になりました。推定された「収縮源」付近にマグマ溜まりが存在すると考えられています。

2011年1月の噴火直後から地盤は再び膨張(期間(2))に転じましたが、2011年12月ごろ、噴火直前の膨張量の8割程度まで進んだところで膨張は停止し、新燃岳の火山活動は緩やかに低下しました。それから約2年後に3回目の膨張(期間(3))が始まりましたが、その影響は、新燃岳ではなく、前述したように韓国岳の北麓周辺の火山性地震の増加をもたらし、2015年末からの膨張(期間(4))で、二十数年ぶりに韓国岳北麓の硫黄山の噴気活動再開を引き起こしました。

2017年7月ごろからの5回目の膨張(期間(5))は、硫黄山の火山活動をさらに活発化させる気配をみせたものの【写真4】、9月には活動が低下し、2017年10月の新燃岳噴火に至りました。 5回目の地盤の膨張は、10月半ばに停止しました。

今回の新燃岳噴火をもって一連の霧島山の火山活動は終息するのか、あるいは、霧島連山のどこかで火山活動が再開するのか、即断はできません。GNSSで観測された5回の地盤の膨張は、時間とともに小さくなり、膨張する期間も短くなる傾向が認められることから、霧島連山の火山活動は終息に向かっているともいえます。しかし現在の地盤の膨張量は2011年噴火前を上回っているので、霧島連山の地下には大量のマグマが蓄積されていて、今後大噴火発生の可能性があるとも考えられます。

いずれにしても、霧島連山とその山麓では、数年~10年程度の間隔で火山活動の高まりや噴火、群発地震を繰り返してきた長い歴史があります。今後とも火山観測を継続して行い、火山活動の推移を注意深く監視することが大切です。

(2017年12月28日 更新)