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台風の基礎知識

第9回  新しい防災気象情報

執筆者

市澤 成介
元気象庁予報課長
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気象状況の変化に対応するために

近年、集中豪雨や台風等による被害が相次いで発生しています。そして、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化していると言われています。こうした気象状況の変化に対応するため、気象庁は2017年(平成29年)6月から、新しい防災気象情報の発表を始めました。このコラムでは、2017年8月初めに奄美大島に接近し、記録的な大雨をもたらした台風第5号について、気象庁等から発表された新たな防災気象情報をもとに解説します。

警報級の可能性を伝える

8月1日朝の「台風5日進路予報」図によると、6日朝には九州方面に向かう予想となり、奄美大島も予報円内に入りました。これを受け、鹿児島地方気象台は午前11時に、「警報級の可能性」という情報を発表しました。この情報は、台風や低気圧などによる大雨や暴風、波浪等の現象が「警報級となるおそれ」が出た場合に、その可能性の高さに応じて「高」、「中」を示して発表するものです。

奄美地方には、3日頃から暴風と波浪の警報級の可能性を「中」として発表しました。その理由は、台風の動きが遅く、接近の度合いや台風の強さ・大きさの予想が不確実なため、警報級の可能性が高いとまで断定できないものの、台風接近による影響は考慮すべきとして発表したと思われます。さらに3日夕方になると、台風第5号は非常に強い勢力となって西北西に進み、5日には奄美大島を通過する予想となりました。鹿児島地方気象台は午後5時に、 (1)波浪に関しては今晩にも「警報の発表を示唆する形」で可能性が「高」、(2)暴風に関しても4日朝から可能性が「高」、(3)大雨については4日の時点では可能性「中」とし台風が最接近する5日~6日には「高」に、それぞれ高めた内容の警報級の可能性を発表しました(図1)。

警報内容を時系列で分かりやすく色分け表示し発表

4日朝、名瀬(なぜ)測候所は発表中の波浪警報に加えて暴風警報を発表しました(図2)。警報内容は、3時間刻みで、警戒を要する時間帯を赤色で、注意を要する時間帯を黄色で表示し、それぞれの時間帯ごとに現象の強さを、大雨の場合は1時間の最大雨量で、暴風の場合は最大風速と風向で、波については最大波高で示します。

これまでの警報では、定型化した文字表現(文章形式)で警戒すべき時間や注意すべき時間帯を示していましたが、今回の図表形式への改善によって、警戒すべき時間などを視覚的に読み取ることにより、対処すべき行動の判断が容易にできるようになりました。降雨現象などが激しい時間帯には屋外での行動を差し控えることが重要ですが、改善された警報の活用により「状況が悪化する前に、避難行動や防災対策が完了できる可能性が高まる」ことが期待されます。

大雨による災害の危険度やその切迫度をメッシュ(領域)情報で提供

台風の接近で、奄美大島には台風を取り巻く強い雨雲がかかり、記録的な大雨となった所があったり、土砂災害や浸水害等が多発しました。気象庁はこうした際、大雨や洪水の警報の発表に加え、災害の危険度が高まる地域や広がりが分かる分布図の発表も始めました。その発表例として、5日午前5時の奄美大島付近の降雨域、土砂災害の危険度、浸水害の危険度、洪水警報の危険度、の各情報を並べました。それぞれの危険度分布には違いがあることが読み取れます(図3)。なお気象庁では、既に土砂災害については「土砂災害警戒判定メッシュ情報」を発表していましたが、新たに「大雨警報(浸水害)の危険度」を地図上1km四方の細かさで、また「洪水警報の危険度」は全国のほぼ全ての河川を流路毎に分布図に表して、発表するようになりました。

このように災害の形態別の危険度を示すのは、雨の降り方によって、それぞれの災害の起こり方に違いがあるためで、それぞれの危険度は、雨の降り方や降雨域の広がり、地形や都市化率なども組み入れて算出されるのです。

危険度は、「今後の情報等に留意」「注意」「警戒」「非常に危険」「極めて危険」の5段階で表示されます。自宅の近くに「非常に危険」や「極めて危険」の情報が発表された場合は、いつ被害が発生してもおかしくない状況です。既に夜になっている場合などは、危険な屋外へ避難するより、屋内の安全な場所(例えば、一階よりも二階)に身を置くなどの次善策をとって、安全確保に努めることも「避難の選択肢」に入れてください。

新しい防災情報の活用

改善された警報の発表では、「警戒すべき時間帯」や「現象の激しさ」が「色分け表示された3時間刻みの時系列表」になったことで、警報内容が分かりやすくなりました。さらに降り始めた雨に対しては、土砂災害、浸水害、洪水害の危険度が詳細に地図上に表示され、私たちは「災害の危険度の高まり」や「その変化」を詳しく知ることができるようになりました。台風接近よりかなり前の段階から、想定される被害状況を十分に理解・把握し、備えておくことは非常に重要です。それは、現実に直面する切迫度に応じて、最善の行動を、速やかに実行できることにつながります。誰かの指示を待つのではなく、自らが警報等の情報を活用し、どう行動するかを常に考えていただきたいと思います。

最後に、これまで述べてきたことを提言として(図4)にまとめました。特に、地域の防災に関わる方々の参考になれば幸いです。

(2017年9月30日 更新)