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落雷・突風

第18回  身近にある風災害

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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「風災害」とその危険性

これまで、身近に存在する「風災害」について、第7回コラム(*1)では「つむじ風、海上竜巻、ガストネード」などを紹介し、第16回コラム(*2)では「突風被害」を紹介しました。
しかし2017年5月以降も「風災害」に関する日本各地の被害が報告されており、本コラムでも、継続して「風災害」への備えや注意事項などを取り上げたいと思います。
今回のコラムでは、私たちの身近なところで、ここ1年間ほどの間に発生したいくつかの「風災害」とその危険性について、改めて検証します。

晴れた日の身近な危険

2017年5月27日から28日にかけて、東京23区内、大阪市内、福岡市内など、各地でつむじ風が発生した映像がニュースで流れました。晴れた日にグラウンドなどで土埃(ほこり)を巻き上げて突然発生する渦は、親雲である積乱雲が存在しないため、竜巻と区別して、塵旋風(じんせんぷう)、つむじ風などと呼ばれます(*1 第7回コラム)。

つむじ風はさまざまな要因で発生しますが、強い日射が原因のひとつです。日射で暖められた地上付近の気塊は上昇気流になりますが、周囲の風の変化を受けて回転することで渦が形成されます。砂漠で発生するつむじ風(砂嵐)も同じメカニズムです。運動会でつむじ風が発生する理由は、晴れた日に行うことが多い、相対的に広い運動場が存在する、周囲に風に変化を与える校舎などが存在する、被害を受けやすいテントが数多く存在する、目撃者が多い、などの要因が重なっていると考えられます。今回、この2日間でつむじ風が多発したのは、5月末としては比較的晴天が続いたため、地表面が乾いていた点、加えて当日の気温が上昇したため、上昇気流が生じやすい環境が整っていた点が大きかったと考えられます。さらに、運動会シーズンと重なったため、各地で画像や映像が残されたといえます。

つむじ風の寿命は、数十秒から数分程度と、竜巻に比べて短く、水平スケールも巨大竜巻に比べて小さいですが、それでも直径で数m~数十m、高度は数十m~発達したもので数百mに達することもあります【図1】。つむじ風の風速(回転速度)は、20m/s前後ですから、竜巻のスケールでいえばF0(17〜32m/s)、JEF0(25~38m/s)未満に対応します(*3 第15回コラム)。しかしながら、20m/s未満の風速でも、テントなどはたとえおもりを付けていても、つむじ風にあおられればあっという間に宙に舞ってしまいます。晴れて無風の場合でも、つむじ風は地上付近で複雑な動きをしますから、つむじ風が発生したら、渦から離れる、テントなどから離れる必要があることを頭に入れておきましょう。

エア遊具にも危険がいっぱい

2016年3月30日午後、小田原市内の公園でエア式の滑り台(エア遊具)が風にあおられて横倒しになり、11人が重軽傷を負いました。当日は午前中から強風を警戒して、通常取り付ける1個20kgのおもりの数を10個に増やしていました。風速が10m/s以上で営業を停止するという内規があり、担当者が事故直前に風が強くなったのに気付き、台上の子どもが滑り終わるのを待って中止しようとしたやさきの事故でした。

一般に、エア遊具の事故では、定員オーバーといった運用上の問題や機材の故障などの原因もありますが、圧倒的に強風による事故が多いのが実状です。強風事故の場合、ウェイト(おもり)やステイ(杭[くい])による支持力不足が主な原因ですが、風が強くなってきたときに早めに中止するなどの判断が遅れるという、運用管理面の問題もあります。インターネット上には、エア遊具が空高く飛ばされてしまう映像が多く存在し、エア遊具の飛散事故の頻度が高いことが分かります。風洞実験による飛散開始風速は、10m/s程度とかなり低い風速となり、わずかな風速の増加でも横ずれや横転の危険性があります。日本エア遊具安全普及協会の「安全運営10か条」でも、屋外設置の場合は風速計を必ず取り付け、風速基準に沿って運用方針を決定するとの規定が示されました。ただし、つむじ風のような突然の風に対応することは難しく、使用者側も絶対に安全であるという過信は禁物です【図2】。

局地的豪雨と突風

7月初旬以降(2017年7月19日現在)、北海道から九州までの各地で局地的な豪雨が相次ぎ、九州北部をはじめとして甚大な被害に見舞われました。いずれも梅雨前線帯で、大気が不安定になり積乱雲が発達したことによる豪雨であり、積乱雲が同じ場所で発生を続けてライン状に並んだ、“線状降水帯”が再びクローズアップされました。
また、台風第3号の周辺では、熊本市、和歌山県みなべ町、埼玉県草加市などでの突風被害が報告されました。台風のレインバンド(帯状の降水帯)も積乱雲の集合体であり、台風の中心から数百km離れた場所でも竜巻等の突風が生じるのです(*4 第9回コラム)。

発達した積乱雲の中では雨滴が成長して雨が強まり、大粒の雨滴は下降気流を強めるため、豪雨時には風も強まります。特に雲内の水滴が急速に冷却されて生じる雹(ひょう)は、落下しながら空気を引きずるために下降流が強まり、大粒の降雹時にはダウンバーストが発生します(*5 第2回コラム)。7月18日に東京23区内で直径数cmの雹が観測されましたが、地上では横なぐりの暴風雨という状況でした。雹の落下時には、単に氷(固体)が落下するだけではなく、氷の粒を含んだ突風により構造物が破壊され、被害が増大するのです。さらに、豪雨時には落雷も集中します。停電による交通障害、通信障害は、避難行動に大きな支障をきたします。
局地的豪雨は、“雨”、“風”、“雷”の同時現象であることに十分注意する必要があります【図3】。

(*1)第7回 怖いのは竜巻だけではない! 自然界にまだある危険な「渦」/小林文明
(*2)第16回 身近な渦 ~神奈川県厚木市で発生した突風被害~/小林文明
(*3)第15回 日本版改良フジタスケール(JEF)/小林文明
(*4)第9回 台風と竜巻の関係/小林文明
(*5)第2回 すさまじい下降流、ダウンバースト/小林文明

(2017年7月31日 更新)