トップページ > コラム > 地震・津波台風・大雨落雷・突風大雪猛暑火山・降灰火災PM2.5・黄砂防災の知恵大規模市街地火災への備え 〜前編〜

火災・防火対策

第7回  大規模市街地火災への備え 〜前編〜

執筆者

山田 常圭
総務省消防庁 消防研究センター 所長
プロフィール・記事一覧

糸井川市に大きな被害をもたらした大規模火災

2016年12月22日、糸魚川市の飲食店で建物火災が発生し、折からの強風にあおられ、焼失面積約4万平方メートル(被災エリア)、焼損(しょうそん)床面積3万213平方メートル、焼損棟数147棟に上る大規模な市街地火災(以下、市街地大火と記す)となってしまいました。こうした市街地大火は、阪神淡路大震災時(1995年)の神戸市や、東日本大震災時(2011年)に岩手県山田町や宮城県気仙沼市などでは発生しているのですが、強風下とは言え震災時以外でこれほどの被害が出た火災は、40年前の1976年の山形県酒田市大火以来と言われています。

今回は、糸魚川市で起きたような市街地大火についての共通した課題、また一般市民として火災の予防や被害軽減にどのように備えればよいのか、身近な対策を紹介します。

市街地大火は、なぜ起きるのか

世界的に見ても、日本ほど多くの市街地大火を経験してきた国はないのではないでしょうか。その大きな要因として、都市域における木造等耐火性の低い建築物の密集化が挙げられます。特に、戦後の急速な戦災復興の過程の中で、防火上脆(ぜい)弱な市街地が形成され、鳥取市、飯田市など、多くの街が灰じんに帰しました(図1)。

たび重なる火災を受けて、都市計画法で防火地域が指定され耐火建築物など防火性能の高い建物が増えてきたこと、また消防力の整備向上などにより、平時の大規模市街地火災の発生は、1970年までにほぼ解決されたかに思われました。しかしながら、酒田市や今回の糸魚川市の火災では、いったん過酷な気象条件が整えば、現在の市街地で大火に至る可能性が皆無でないことを思い知らされました。

市街地大火は、火災の延焼を促進する気象条件と、それを抑え込む消防力のバランスが崩れたときに発生しています。大きくは、(1)大地震によって多数の家屋が倒壊し、同時多発火災が発生、さらに水利不足や道路閉塞等により消防力が極端に低下した場合、(2)強風によって延焼拡大が急速に進み、平時の消防力では消火が追いつかない場合の、2つがあります。

前者は阪神淡路大震災や東日本大震災後に発生したケースで、後者は、今回の糸魚川市を始め過去に我が国で起きた市街地大火の大半のケースが該当します。強風下での火災は、地勢や気象といった自然環境の影響が強く、地域に特有な季節風やフェーン現象による自然災害的な側面が強く出ます。市街地大火が、日本海側や強風が吹き抜けそうな地域に多く、また秋田県能代市(1949、1956年)や大館市(1955、1956、1968年)のように何度も市街地大火を経験している事例も少なくありません(図2)。糸魚川市も今回の火災を含めて昭和以降だけでも4度も火災の災禍に見舞われています(図3)。

二度あることは三度あるといいますが、大規模市街地火災はあってほしくないものです。では、そのための備えをどうするか考えてみましょう。

「NHKそなえる防災」第7回 大規模市街地火災への備え 〜後編〜(山田 常圭)につづく

(2017年7月31日 更新)