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地震全般・各地の地震活動

第17回  全国地震動予測地図

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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地震による揺れの予測

1995年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災を起こした地震)や2016年熊本地震などの地震規模(マグニチュード、M)7程度の地震は、日本全国のどこかで毎年発生しています。しかし、阪神・淡路大震災のときも、熊本地震のときも、地元では地震による強い揺れに見舞われる可能性が正しく理解されず、「自分の住んでいるところでは、まさか震災になるとは思わなかった」と言われました(*1)。

1995年6月に発足した地震調査研究推進本部は、このような間違った認識を改めてもらうとともに、日本中のどこでも強い揺れに見舞われる可能性があることを理解してもらうために、科学的な証拠に基づく地震動の予測地図を策定することにしました。約10年かけてこの地図の第1版が完成し、現在では「全国地震動予測地図」としてほぼ毎年発行されています。最新版は2017年4月27日に公表されました(*2)。

確率論的地震動予測

地震による被害が起きるのは、強い揺れに見舞われるからです。被害を減らすためには、どのような被害になるかを前もって知り(予測)、その被害を少なくするために、揺れに耐えられる強さを持った建物や社会基盤となる構造物を作り(防御)、たとえ災害が発生しても被害を最小限にする社会の仕組みを作る(対応)ことが必要です。「被害を予測する」ことの第一歩は、「揺れを予測する」ことからです。そして「その揺れで生じるであろう被害への防御や対応を考える」ことになります。

まず「揺れを予測する」とは、日本中のそれぞれの場所が見舞われる揺れの強さ(震度)と回数(確率)の予測を行うことです。具体的な予測の例として、日本中の各場所で、30年以内に震度6弱以上の強い揺れに見舞われる確率を表した地図「全国地震動予測地図」があります。地震調査研究推進本部が発表した2017年度版の地図を、【図1】に示します。

この地図は、「地下の地震が発生しやすいかどうか」と、「地盤が軟らかくて揺れやすいかどうか」の二つの要素が考慮されています。西南日本の太平洋沿岸域で確率が高くなっているのは、南海トラフからフィリピン海プレートが日本列島下に沈みこむことによって発生する大地震の発生数が多いからです。さらに、札幌、東京、名古屋、大阪などの大都市がある平地では地盤の軟らかいところが多いので、山地に比べて揺れやすくなっています。

揺れにそなえる

「揺れの予測」の次に、「想定される被害への防御と対応」です。「震度7の強い揺れが、100年に一度発生することが分かれば、そこに建てる建物は震度7に耐えられるようにしなければなりません。耐震化されていない木造家屋は、震度6弱の強い揺れがあると倒壊する可能性があります。

2016年熊本地震でも耐震化されていない家屋には大きな被害がありました。【図1】は全国を見渡したときの揺れの確率を示しているのですが、大ざっぱすぎるので、ご自分の住所での揺れまでは分からないかもしれません。そこで、防災科学技術研究所(NIED)では、地震ハザードステーション(J-SHIS)(*3)を公開して、住所を入れると地図が拡大され、揺れの確率の他に、その地域のいろいろな情報が表示されるようにしています【図2】。

地震動の予測には、「30年以内に震度6弱以上に見舞われる確率の図」以外にも、「今後 30 年間に その値以上の揺れに見舞われる確率が 3% となる震度」【図3】などいろいろな図が作られています。確率を一定にして、その確率以上の可能性のある最小震度が示されています。3%の確率とは、おおよそ1000年に一度の頻度となる確率です。

これらの地図から読み取れることは、日本ではどこでも強い揺れに見舞われる可能性があることです。国や自治体の防災対策、企業の事業継続計画(BCP)の立案、地域や家庭の防災への準備に、ぜひ活用して欲しいと思います。

また都市では特に揺れが強くなります。同じ都市でも、旧河川や沼を埋め立てた場所では、さらに強い揺れに見舞われます。建物を建てるときには、地盤の強弱を十分考慮する必要があります。法律で定められた耐震基準は、最低限度の身の安全を確保するために定められたもので、強い揺れがあった場合に住み続けられることを保証するわけではないことを十分理解してください。

参考文献:
(*1)第15回 熊本地震/平田直
(*2)地震調査研究推進本部・地震調査委員会(2017)、全国地震動予測地図
(*3)国立研究開発法人 防災科学技術研究所(2017)、地震ハザードステーション(J-SHIS)
http://www.j-shis.bosai.go.jp/

(2017年5月31日 更新)