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豪雪災害

第3回  雪の性質と最近の雪の災害

執筆者

上石 勲
防災科学技術研究所雪氷防災研究センター センター長
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平成28年~29年(2016年~2017年)の特徴ある雪とその被害

平成28年(2016年)11月24日には、南岸低気圧によって、山梨県河口湖町で23cmの積雪を記録するなど、記録的な「早い」雪による障害が発生しました。その後、平成29年(2017年)1月24日に鳥取市では57cm。2月11日には91cmという、33年ぶりの大雪となりました。2月12日現在、西日本での大雪は続いており、鳥取市で平年の約10倍以上の積雪深となっています【図1】。

鳥取県をはじめ中国地方では、この2回の大雪により、幹線道路が渋滞となって、自動車の立ち往生が各所で発生しました。また、雪かき中に転落したとみられる事故などが相次ぎ、西日本でも雪の影響で亡くなる人が出ました。このように、集中的に大雪が降るのは最近の大雪の特徴です。

平成26年(2014年)2月の南岸低気圧による大雪

平成26年(2014年)2月の大雪では、西日本から関東甲信、東北地方太平洋側、北海道の道東地方まで、広い範囲での大雪となりました。山梨県内では、気象庁の観測点で甲府市114cm、河口湖143cmと、これまでの記録より2倍の雪が降り積もり、道路や鉄道が一時すべて機能を失い、県全体がしばらくの間孤立状態という異常な事態になりました【写真1】。また、車庫等の倒壊や一酸化炭素中毒、凍死といった要因で犠牲になる人が多く、路面の積雪や凍結による転倒等が原因と考えられる負傷者も相次ぎました。さらに、カーポートや農業用ハウスも多数倒壊しました。また、【写真2】のように多数の雪崩が発生しているのが確認されました。山間部の道路の通行止めが続いたのは、この種の雪崩が頻発したことと大いに関係しています。

普段は雪が降らない人口密集地に大雪が降ったこの例では、5000億円以上の経済損出があったものと試算されています。

雪の性質と災害

1.降雪の種類と雪氷災害
「雪は天から送られた手紙」(※)と、世界ではじめて人工雪を作った北海道大学の中谷宇吉郎(なかやうきちろう)博士は、有名な言葉として残しています。新潟県長岡市で観測された鼓型(つづみがた)の結晶【写真3】や柱状、角板状の結晶は低気圧によって降ることが多く、冬型の気圧配置で大陸からの季節風が原因で降ることが多い樹枝状の結晶よりも形が単純なため、マイナスの雪温であれば崩れやすいことが最近の研究で分かってきました。平成26年(2014年)2月の大雪は、南岸低気圧によりこのような崩れやすい雪が降り、気温がマイナスで推移したため、山沿いで雪崩が多発したようです【図2】。

(※)中谷宇吉郎 雪の科学館
http://kagashi-ss.co.jp/yuki-mus/yuki_home/

気温が0℃以上でも雪が降りますが、その雪は水分を含んでおり、ものに接触すると付着しやすい性質となります。これが「着雪」という現象です。最近の信号機はLEDのものも多くなり、着雪しやすくなっています。

2.積雪と雪氷災害
降雪が積もったものを「積雪」といいます。積雪は、固体である氷、気体である空気、液体である水から出来ています。雪は温度が0℃かマイナスで、0℃の雪は液体の水も共存しています。降った雪が道路に積もり、その上を車両が雪面を往復すると「圧雪」が出来たり、いったん融解したものが凍結すると、氷の性質が優勢となって滑りやすく、「スリップ事故」や「歩行中の転倒」などの事故につながります。また、氷はマイナスよりも0℃の方が滑りやすく、水分を大量に含んだ「シャーベット状の雪」でもスリップしやすくなります【写真4】【写真5】。

平成28年(2016年)2月の新潟県長岡市の大雪では、大量降雪後に急激に温度が上昇したため、道路上の圧雪が一挙にシャーベット状の雪となって滑りやすくなり、スムーズな道路通行が阻害されました。寒暖の差が激しく、気温が0℃を境に上下すると、いろいろな道路雪氷に変化するため、路面管理も難しくなります。

上記のように気温が0℃の雪は水分を含んでいて着雪しやすく、いったん着雪してしまうと、その上にさらに雪が積もりやすくなって、「冠雪」となり、これが落下すると「落雪」になります。気温が上昇すると屋根に積もった雪が溶けて、積雪底面の摩擦が小さくなり、落雪しやすくなります。また、標識や橋に雪が付いて、それが落ちると、通行車両のフロントガラスを割るなどの大きな事故となります【写真6】【写真7】。着・冠雪対策は雪国でも昔から検討されてきていますが、電気代のかからない方法としては、現在でも一部通行止めにして、下から棒で落とす手法が一般的に実施されている対策です【写真8】。雪のつかない素材や難着雪の塗装の開発は、現在の大きな課題です。

積雪では、降ったばかりの雪結晶の形がだんだん丸くなり、密度も大きくなるのが一般的です。雪の結晶が1mm以上と大きくなって「ざらめ雪」になると、半分が氷または水、半分が空気で重たく、屋根がつぶれたり、「除雪」が困難になります。最近では【写真9】に示すように、平成26年~27年(2014年~2015年)冬期は大量降雪と無降雪期の高温、降雨のため、雪が重たくなり、たくさんの構造物が倒壊しました。積雪の重さを直接測るなど、破壊の危険性を察知する必要があります。

気温がマイナスだと粒同士の結合が少なく、強風になると「吹雪」が起きやすくなります。雪粒が舞い上がり視程を悪くしたり【写真10】、吹きだまりを形成させます【写真11】。

積雪と降雪の最近の傾向と雪に対する備え

新潟県長岡市にある防災科学技術研究所雪氷防災研究センターの過去48冬季の記録では、日最大降雪量(1日の降雪量において最大の値)のベスト10には平成17年(2005年)以降が4割を占めています【図3】。最近は暖冬と呼ばれることも多いですが、時間的・場所的に集中して雪が降ることはむしろ多くなっているといえます。

また、気温の変化によって雪害も大きく変化しています。以上のような雪の害に対処するには、次のようなことを心がけてください。

・不要不急の外出を自粛する
・大雪や気象情報を早めに収集する
・時間にゆとりを持った行動をする
・屋根雪などの落下や、屋根雪による建物倒壊を警戒する
・滑りやすいところを注意深く見て行動する
・側溝は雪が降ると見えにくくなるので、転落に注意する
・手袋や帽子を着用し、荷物を背負うなどして両手を開け、転倒に備える

3月中は、まだ大雪になる可能性もあります。雪の少ない地域の人も油断せず、雪に対する備えを引き続きお願いします。

(2017年2月28日 更新)