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火災・防火対策

第6回  身近な製品火災の実態と火災安全対策

執筆者

山田 常圭
総務省消防庁 消防研究センター 所長
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求められる製品火災対策

火災というと建物火災のように大規模なものを思い浮かべがちですが、電気用品や燃焼機器、自動車など、日常生活に欠くことのできない身近な製品から不本意な火災が多々発生しています。こうした製品火災の大半は規模も小さく、出火直後に消し止められ大事に至っていませんが、中にはリコール製品から出火し5人が死亡した福祉施設の火災(写真1)や住宅が全焼した火災も少なからずあります。

製造物責任法(1995年)や消費者安全法の制定、消費者庁の設立(2009年)等、我が国においても消費者の安心・安全確保が強く求められてきており、消防庁では製品火災対策の取り組みを強化してきています。今回はこうした製品火災の実態と火災安全対策について紹介します。

多種多様な製品火災の実態

製品の火災の中には使用者の誤使用で出火する場合も多々ありますが、ここで言う“製品火災”とは、製品の設計や製造等の欠陥によって生じたもののことです。海外製スマートフォンの発火の危険性が高いため、飛行機への持ち込みが禁止になったことは記憶に新しいところですが、こうしたものが該当します。

各消防本部で起きる個々の製品火災では、使用者側の過失によるものか、製品自体の瑕疵(かし)によるものか、判断がつかないものもままありますが、全国規模で事例を集めてみますと、類似事例が起きていることが分かり、当該製品に内在する危険性が明らかになってきます。

消防庁では、消費者の安心・安全を確保するため、火災を起こす危険な製品の流通防止を目的として、“自動車等”、“電気用品”および“燃焼機器”の3種類の製品火災を対象に、全国の消防機関から調査結果の報告があったものについて、発生件数や「製品の不具合により発生したと判断された火災」の製品情報等を取りまとめ公表(※1)しています。

図1は、全国の消防本部から報告のあった製品火災の推移を示したもの(※2)です。最近の5年では次第に減る傾向にありますが、それでも毎年770件~950件起き、そのうち、リコールとなった製品を含め明らかに不具合によると判断されたものが2~3割を占めています。以下、各々の製品種別ごとの火災発生状況について紹介します。

(1)燃焼器具の火災

裸火(はだかび)を使用する石油やガスを燃料とする燃焼器具は、もともと火災発生の危険が潜在的に高いと考えられ、製品の安全検査体制も他の製品に比べ整備されてきました。こうしたこともあり製品火災件数は年間80件~100件程度にとどまっています。 
製品の不具合により発生したと判断された製品内訳としては、表1に示すように、給湯器や風呂釜が挙げられています。具体的には、燃料オイルのパイプシール部の不具合により油が漏れ内部が焦げたり、ガスバーナー部品に亀裂が入りガス漏れが生じたりする構造上の不具合のほか、点検・修理の際の作業が不十分であった場合には、空だき防止装置が作動せず火災のおそれがある事例も社告等で報告されています。

(2)電気用品の火災

表2には、身の回りの多種多様な家電製品中、製品の不具合から出火に至った主な製品を示しています。電気用品の製品火災では、ヒーターやちゅう房周りの熱源となる製品が多く、最近では、パソコン・電動アシスト用充電器の事例も多く見られます(写真2)。充電器には高い電圧が得られエネルギー密度が高いリチウム電池が広く使われています。内部が薄い膜で積層化しているため、電池パック内の絶縁が不良あるいは外部からの衝撃でショートし発火のおそれがあるほか、過充電により酸素や二酸化炭素を発生させ、電池破損、急速な化学反応による熱暴走につながり燃焼に至ることも出火原因の一つです。

エアコンや洗濯機では、モーターの加熱や、振動によるリード線の断線によるもの、洗浄液等の導電物質の接続端子への付着による発煙・発火事故が発生しています。その他、電子基板やコンデンサーからの発火等の部品からの出火の報告もあります。
最近の電気用品はマイコン制御されているものが大半です。電子基板の火災規模自体は非常に小さいのですが、過熱防止といった安全上重要な制御機能の喪失によってさらに大きな火災につながるおそれがあるため、小さいからといって無視できません。

(3)自動車火災

自動車は、エンジンや車軸等の機械的な構成要素のみならず、制御系の電子機器等が複雑に組み合わさってできているため、火災原因を特定することは容易ではありません。燃焼機器や電気製品の不具合の特定率が、おおむね3~4割程度であるのに対して、自動車では1割程度にとどまっています。不具合が判別した車種としては、表3に示すように軽自動車、乗用車、トラック等、種々の車種で火災が発生しています。不具合の原因としては、電装部品の作動を制御する回路が不適切なため方向指示灯が点灯したままになり発熱して焼損し火災に至るおそれがあるといった制御系の問題、スターターモーターにおいてモーターコイルとシャフトの嵌合(かんごう)力が不足しているため始動時にモーターコイルがずれ、ブラシホルダーが破損、ショートして発火するおそれがあるといった機械的な問題、またさらには点灯用の樹脂製カバーの材質が不適切なため、長時間点灯を続けるとバルブの熱でカバーが溶損し火災に至るおそれがあるといった材質選定の問題等、車種ごとに特有のさまざまなリコール内容が報告されています(写真3)。

その他、一時期大型バスの走行中の火災が多く発生して社会問題となりました。エンジン回りの不具合により出火のおそれがあるリコール事案も報告されていますが、国土交通省等の調査報告(※3)では、平均的な車齢(約12年)を超えた老朽化した車両、特に17年を超える古い車両や、点検整備不良により火災が発生していることが分かっています。

製品火災の火災安全対策

製品火災は、火災が起きてみて初めて瑕疵(かし)が分かるため、消費者が事前に対策を講じるのは非常に困難ですが、使用中、製品から異臭がする、過度に発熱がある、正常に動作しない等、何らかの不具合が発生した場合、直ちに継続使用をやめ、購入元かメーカーに問い合わせてみることがまず必要になります。

また、最近では各メーカーを始め、消防庁、経済産業省、消費者庁、国土交通省等では、随時リコールや不具合情報をネット上で公表(※1,4-6)しています。そうした安全情報をもとに使用中の製品が該当するかどうか確認することも、製品火災から身を守るうえで重要です。

日々技術革新が進み、新しい製品が世の中に出てきているため、火災原因は多様化・複雑化し、火災原因の特定も容易ではありません。メーカーは言うに及ばず、省庁の垣根を超えた情報共有、原因調査技術の高度化等の連携が、新たな製品火災の原因究明と再発防止対策の立案にますます必要になってきています(写真4)。

(参考文献)
※1:消防庁「製品火災に関する調査結果一覧」
※2:消防庁「消防白書 平成28年度版」pp.73、第1-1-28図
※3:国土交通省、一般社団法人 日本自動車工業会他「バス火災事故防止のための点検整備のポイント」平成28年4月
※4:消費者庁「リコール情報サイト」
※5:経済産業省「製品安全ガイド リコール情報」
※6:国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」

(2017年2月28日 更新)