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落雷・突風

第17回  最近の落雷事故から学ぶ

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
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身近に起こりうる雷撃の実例

第12回コラム<2012年8月18日落雷事故(大阪)>(*1)で具体的な落雷事故を検証しましたが、その後も雷撃による人的被害は後を絶ちません。今回は、ここ数年国内で報告された落雷事故の事例を振り返り、落雷から身を守るポイントを再度確認します。

2013年7月8日の事例(釣り)

午後3時50分頃、東京都北区の荒川の中州にいた男性3人が落雷を受け、1人が死亡、2人がやけどなどのけがを負いました。当日の関東地方は、猛暑の中で大気が不安定になり、積乱雲が各地で発生し雷雨に見舞われました。釣りに来ていた3人は、突然の雷雨のため近くの小屋に避難しましたが、風雨が強くなったので危険を感じて、高さ15m以上ある大木の下に移動して雨宿りをしていたところ、雷撃に遭いました【写真1】【図1】。3人は側撃雷(第5回コラム<雷から身を守る>(*2))を受けたと考えられ、木に最も近かった人が死亡、次に近かった人は洋服が裂けやけどを負い、最も離れていた人は比較的軽傷で済みました。

3人とも雷撃による強い衝撃を受けましたが、3人の被害の違いは、まさに“木の側は最も危険”、一方“約4m以上離れて木のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲(保護域)”にいれば安全であることを物語っています。現実には、雷雨の中で木から4m離れてしまうとずぶ濡れになってしまい、勇気のいる行動ですが、中州のような避難場所がない場合は、保護域内で足をそろえてしゃがみ(雷しゃがみ)(*1)、とにかく命を守ることが大事です。

2016年7月24日の事例(ビーチ)

午後2時45分頃、沖縄県糸満市の美々ビーチいとまんで、ビーチ入口の広場に落雷があり、雷撃により男性4人が負傷しました【写真2】【図2】。当日は大気が不安定になり、落雷の直前には雷注意報が出されて、ビーチでは遊泳が中止され、人々は建物に避難する最中の事故でした。広場はビーチの管理棟やトイレ等の構造物に面していましたが、落雷はこれらの相対的に高い構造物ではなく、地面に落ちました。つまり、例え周囲に高い構造物があったとしても、水平距離で数10m程度離れていると、このように地面に落ちることも珍しくありません。

2016年8月4日の事例(野球)

午後3時55分頃、埼玉県川越市の高校のグラウンドに落雷があり、野球の試合に来ていた高校1年生が、一塁付近で雷撃に遭いました【写真3】【図3】。同様の運動グラウンドにおける事故は、2014年6月24日に、横浜市内の公園でグラウンド整備中の男性2人が雷撃に遭い、1人が重傷となった事例や、2014年8月6日に、愛知県扶桑町(ふそうちょう)の高校のグラウンドに落雷があり、マウンドに立っていた投手が意識不明の重体となり、翌日亡くなった事例がありました。

「雨が強くなったために試合を中断し、5分ほど経って晴れ間が見えたために再開した。」
「晴れ間が見えていたので大丈夫と思った。」
「周囲で雷の音はしていなかった。」
などの証言があり、また埼玉のグラウンド周辺には計12本の避雷針があったこともわかっています。

一般に、急速に発達する積乱雲(雷雲)の真下では真っ暗になりますが、少し離れた場所では晴れていても不思議ではありません。積乱雲の最盛期に形成される最初の落雷が自分の近くで発生した場合、その落雷までの間に雷鳴は聞こえません。また、積乱雲が通り過ぎても近くに別の積乱雲が発生することも多々あります。さらに、避雷針の保護域はせいぜい数10m程度ですから、広いグラウンドに立っている人へ雷の落ちる可能性は極めて高くなります。

落雷から身を守るポイント

今回のような事例は、多くの人が経験する可能性がある状況といえます。これらの被害事例からいえることは、落雷が起き始めてからでは遅いということです。つまり、急速に発達する積乱雲に対しては、空模様が怪しくなった段階で、雨雲レーダーなどの情報を確認して、退避行動に移る必要があることを意味しています。

第5回コラム<雷から身を守るために>(*2)で落雷から回避する術を述べましたが、“落雷の性状”と“急速に発達する積乱雲の特徴”を理解することが、改めて身を守るポイントといえます【図4】。

◯早めに構造物の中や車中に退避すること!
万一、周囲に構造物がない場合は、保護域内で“雷しゃがみ”をして雷雲の通過を待ちましょう。

◯海や山のレジャー、お祭りや野外コンサートなどのイベント時は要注意!
山の稜線や海上などは逃げる場所がありません。また、多くの人が集まる場所では直ちに全員が退避行動をとるのは困難です。野外などで雷鳴が聞こえたらすぐに退避行動に移ることが重要です。大気が不安定な時は、行動予定を再検討することも必要です。

◯こまめに気象情報のチェックを!
携帯電話などで周囲の雷雲をチェックする習慣を身につけましょう。2016年12月21日より、気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」で雷の発生場所を表示するようになりました。(*3)

◯行動や行事の再開は“30分ルール”を!
気象情報が得られない場合の目安は、「雷鳴後30分たって次の雷鳴が聞こえない」ことです。30分経って雷鳴が聞こえないようなら行動を再開してもいいでしょう。

◯万一雷撃を受けた場合は、直ちに心臓マッサージを!
直撃雷を受けた場合でも、早い対応(心臓蘇生)により一命を取り留められる可能性があります。AEDがある場合は、AEDによる電気ショックを実施しましょう(*4)。しかし、屋外でAEDが近くにない場合は、すぐに心臓マッサージ(*5)を行いましょう。

(*1)第12回 2012年8月18日落雷事故(大阪)/小林文明
(*2)第5回 雷から身を守るために/小林文明
(*3)気象庁 高解像度降水ナウキャスト
http://www.jma.go.jp/jp/highresorad/
(*4)心肺蘇生法と一緒に AEDを使った心肺蘇生法
(*5)救急車がくる前に!心肺蘇生法

(2017年1月31日 更新)