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地震全般・各地の地震活動

第16回  余震活動の推移と予測

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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群れを成す地震

2016年4月の熊本地震では、顕著な前震活動と、内陸の地震としては過去最も活発な余震活動がありました。一般に地震は群れを成して発生する傾向があり、その中で地震規模(マグニチュード、M)が最大のものを「本震」、それより前に発生したものを「前震」、あとで発生した地震を「余震」と言います。

熊本地震は当初、本震―余震型の地震活動と考えられていました。4月14日夜のM6.5という大きな地震の直後、それより小さな地震(M5.8やM6.4など)が多数発生しました。しかし、16日未明のM7.3の大きな地震の発生により、14日夜の地震は前震で、あとから起きた地震が本震であったと判明し、前震―本震―余震型の地震ということが分かりました(*1)。

大森・宇津公式

熊本地震のように、いったん大きな地震が発生すると引き続き地震の起きることは古くから知られていました。東京帝国大学(当時)の地震学講座初代教授の大森房吉博士は、余震数が本震からの経過時間に半比例して減少することを発見しました。後に、宇津徳治博士が厳密には半比例ではなく、次式で表される「大森・宇津則(公式)」を提唱しました【式1】。

大森・宇津則は、ある基準より大きい余震が単位時間(例えば1日や1ヵ月)に何回発生するかを表します。この公式から導き出されるのは、「余震活動は時間とともに減少していく」ことです。【図1】のグラフからも分かるように経過日数に伴って地震の回数が減っていくことが予測できます。もちろん実際の余震数は、単調には減少せず多少の増減があります。

一方、大きな地震の発生頻度と小さな地震の発生頻度の間には規則性があります。地震の規模(M)別の頻度は、グーテンベルク・リヒター則(GR則)に従っています(*2)。つまり余震のMが大きくなるにつれ、その数は減ります。大森・宇津則と、GR則を組み合わせると、本震t日後に、ある規模(M)の余震数を予測することができます。

気象庁は2016年4月14日のM6.5の熊本地震のあと、15日午後3時30分の報道発表の中で、「今後の余震活動について、ところによって震度6弱以上の揺れとなる余震が発生する可能性は、4月15日午後4時から3日間で20%、震度5強以上となる可能性は40%です」と述べました(*3)【図2】。余震の推移予測が定量的にできれば、被災者や、災害現場で応急救命活動や復旧活動に従事する人には有益な情報になります。

余震発生予測と防災情報

実は、「3日間で20%」という確率は、通常時に比較して大変高い確率を示したものでした。通常、九州中部では30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率はおよそ20%です。30年は、3日の3000倍の長さなので、3日以内に発生する確率にすると、20%の約3000分の1になります。つまり、余震予報によって、強い揺れに見舞われる確率は、通常時に比較して約3000倍であることを示したのでした。

しかし、この余震の確率予測の発表は、「今後発生する地震は、最初の大きな地震に比べて小さい地震が起きます」と受け取られ、実際に発生したM7.3の大地震への備えを怠る原因になったという指摘がありました。さらに、3日間で20%という数字も、発生しない可能性の方が高いという印象を与えたと批判がありました。

気象庁は、4月16日M7.3の地震のあとには余震の確率予測を発表しませんでした。熊本地震の推移は、確率計算の前提となった本震―余震型ではなく、前震―本震―余震型であったために、本震―余震型に基づいた評価方法が使えなくなったからでした。そこで、地震調査研究推進本部は、新しい余震活動の推移予測の方法を再検討して、「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」を決めました(*4)。

この新しい方法では、地震発生直後に、最初の大地震と同程度の地震への注意を呼びかけ、約1週間後、余震確率に基づいた数値的見通しを述べることになりました。ただし、確率ではなく、最大震度6弱以上となる地震の発生確率は、「当初の1/5程度」「平常時の約100倍」等ということにしました(具体的な数字は、地震により異なります)。さらに、付近に活断層などがある場合は、存在することを注意喚起することになりました。大きな地震が続発する傾向のある地域では、最初の地震より大きな地震が発生する可能性についても言及することや、「余震」という用語は、これ以上は大きな揺れが来ないと誤解される恐れがあるので、防災上の用語としては使わず、単に「地震」ということになりました【図3】。

気象庁は、今後この方針に従って情報を提供することになりました。2016年9月26日の沖縄本島近海の地震では、地震発生約1時間後に「過去の事例では、大地震発生後に同程度の地震が発生した割合は1~2割あることから、揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、最大震度5弱程度の地震に注意してください。 特に今後2~3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くあります」と、呼びかけました。

前震、本震、余震とは、一連の地震活動が終わったあとには明確に定義できる概念ですが、時事刻々と変化する防災情報としては不適切です。つまり、まず本震であることを見極めてその余震の活動予測を行うことは、防災の現場ではできないということです。ただし、地震学的には、すべての地震は過去に発生した地震の余震であるというモデル(ETAS(イータス)モデル)(※)によって、地震活動を表す試みも行われています【図4】。

(※)1980年代に尾形良彦博士によって開発された地震活動の特徴を見る世界的標準モデル。Epidemic Type Aftershock Sequence の頭文字。

過去の事例や、他の地域での経験をもとに地震活動の推移を法則化し、時々刻々と得られる地震データなどから、将来の地震活動の概略を予測することができます。気象庁などの公的な機関から発表されるこうした情報を上手に活用して、緊急対応や復旧活動時の防災に役立てる必要があります。

(*1)第15回 熊本地震/平田直
(*2)第3回 地震の大きさ、場所、発生時期にも規則性がある?/平田直

参考文献:
(*3)気象庁(2016)、「平成28年(2016年)熊本地震」について(第6報)
http://www.jma.go.jp/jma/press/1604/15g/kaisetsu201604151530.pdf
(*4)地震調査研究推進本部・地震調査委員会(2016)、大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方
http://www.jishin.go.jp/main/yosoku_info/honpen.pdf

(2016年10月31日 更新)