トップページ > コラム > 地震・津波台風・大雨落雷・突風大雪猛暑火山・降灰火災PM2.5・黄砂防災の知恵日本版改良フジタスケール(JEF)

落雷・突風

第15回  日本版改良フジタスケール(JEF)

執筆者

小林 文明
防衛大学校地球海洋学科教授 理学博士
プロフィール・記事一覧

何故フジタスケールを変えるのか

F(フジタ)スケールは、藤田哲也博士が1971年に提案した被害のスケールで、竜巻やダウンバースト(積乱雲からの強い下降気流)の風速を推定する尺度になります(第1回コラム参照)。Fスケールは、通常用いられる風力段階の上限33m/sを下限値に、音速(330m/s)を上限とし、その間を12等分した尺度です。その中で便宜上F1~F5とF1以下のF0の6段階で表現してきました。
しかし、提案から半世紀近くが経ち、構造物の変化や施工方法が変化し、同じ風が吹いても被害の程度は異なってきました。Fスケールを見直す主な理由は、(1)被害状況と風速の対応が十分に検証されていない。(2)被害対象が限られていた(住家、非住家、ビニールハウス(農業用ハウス)、煙突、アンテナ、自動車、列車、数t(トン)の重量物、樹木)ため、現代の多様な被害状況に対応していない。(3)屋根瓦などの日本固有の構造物に対応していない、という3点です。アメリカでは、Fスケールの改良版(Enhanced Fujita scale)/改良フジタスケール)が2007年から用いられています。
日本でも2013年からFスケールの改訂作業が始まり、2016年4月から日本版EFスケール(JEF)が用いられるようになりました。アメリカではEFスケール決定に際して、専門家の経験をもとに、被害ランクの修正が行われました。一方日本では、風洞実験や数値シミュレーションなどの最新の研究成果をもとに、各被害指標の限界風速を決定するという、より厳密な手法を用いて風速推定の精度向上を図りました。
「Fスケール」の表を【表1】とし、「JEFスケール」の表を【表2】にします。JEFにおける風速のランクは、下限値が「14(m/s)×JEF+25(m/s)」、上限値が「14(m/s)×JEF+38(m/s)」という式で決定されています。
例えばJEF1の場合、下限値は14×1+25=39(m/s)、上限値は14×1+38=52 (m/s)となります。(計算式の“JEF”の部分には、【表2】の「各ランク」欄の“数値(0~5)”を当てはめます)

JEFの風速推定方法

具体的な風速の推定方法は、次のようになります。まず、「被害の状況」に相当する「被害指標(DI(Damage Index))」を30個(アメリカのEFスケールでは28)定義しました。具体的には、「木造住宅」、「鉄骨系プレハブ住宅」、「鉄筋コンクリート集合住宅」、「仮設建築物」、「大規模な庇(ひさし)」、「鉄骨倉庫」、「木造非住家」、「園芸施設」、「木造畜産施設」、「物置」、「コンテナ」、「自動販売機」、「軽自動車」、「普通自動車」、「大型自動車」、「鉄道車両」、「電柱」、「地上広告板」、「道路標識」、「カーポート」、「塀」、「フェンス」、「道路の防風防雪フェンス」、「ゴルフ場ネット」、「広葉樹」、「針葉樹」、「墓石」、「路盤」、「仮設足場」、「ガントリークレーン(橋型クレーン)」の30個のDIです。
各DIに対しては、被害の程度(DOD(Degree of Damage))が設定されます。竜巻被害調査では、個々の被害に対して、(1)DIとDODを決定し、対応風速を求める。(2)各被害で求めた風速のうちの最大値を、その被害を代表する風速(評定風速)とし、(3)JEFスケールを決定する、という手順を踏みます。
なお、Fスケールとの継続性を考慮して、基本的に両スケールで評定結果はできるだけ同じ階級になるように考えられています。例えば、“FスケールでF2の竜巻は、JEFでもJEF2となる”ように設定されているため、過去のデータと現在のデータとは継続性があり、同等に扱うことが可能です。

実際の被害事例

2016年6月20日、岩手県奥州市で発生した突風被害は、竜巻によるものと認められました。被害は、住宅、物置、樹木など多岐にわたりましたが、現地調査の結果、針葉樹の幹折れから推定された約45m/sという風速が最大風速となり、「JEF=1」と判定されました。この事例が、JEF評定の第1号となりました。

(2016年7月31日 更新)