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地震全般・各地の地震活動

第15回  熊本地震

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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震度7を観測した2度の地震

2016年4月に熊本地方を襲った大地震(熊本地震(1))は、日本が地震列島であることを改めて知らせてくれました。熊本県上益城(ましき)郡益城町では、4月14日午後9時26分のM(マグニチュード)6.5の地震と、16日午前1時25分のM7.3の地震で、震度7の揺れが2度観測されました。震度7が観測されたのは2011年東北地方太平洋沖地震以来のことで、28時間を経て同じ場所で震度7が観測されたのは、観測史上初めてです(図1)。日本では周辺の海域も含めれば、M7程度の地震は毎年1~2回発生しています(第5、11回コラム/平田直)が、それでもM7.3の内陸の浅い地震は、近年では1995年兵庫県南部地震、2000年鳥取県西部地震以来です。内陸の浅い地震が都市のそばで発生すると大きな被害をもたらします。

前震・本震・余震

熊本地震では、顕著な前震活動がありました。一般に地震は群れを成して発生する傾向があり、マグニチュード(M)が最大のものを「本震」、それより前に発生したものを「前震」、後で発生した地震を「余震」と言います。今回は、14日夜の地震(M6.5)の後、中小の地震が多発し、この段階では、本震―余震型の地震活動と考えられていました。ところが、16日未明に、M7.3の地震が発生し、最初に発生した地震が前震で、後から起きた地震が本震であると分かりました。その後、16日午前4時前に阿蘇地方で震度6強、16日午前7時に大分県中部で震度5弱、さらに19日午後6時前には熊本県八代(やつしろ)市で震度5強の激しい揺れを伴う余震が発生し、引き続き多数の余震が発生しました(図2)。

今回のようなケースで最初の地震が前震だと判断できれば、防災上有益な情報になります。しかし、前震かどうかを判断することは、現在の地震学では大変難しく、事実上、できません。確実に言えるのは、大きな地震が発生すれば、必ず余震が発生するということです。M7.3の地震があれば、M5〜6程度の余震があるのは普通です。注意しなくてはならないのは、余震は、地震の規模が本震より小さくても、発生する場所が自分のいる場所に近く、震源が浅ければ、本震の時の揺れより大きくなる可能性もあるということです。

余震は、通常考えられているより長い期間続きます。2004年新潟県中越地震(M6.8)では、本震発生2週間後にM5.9の余震が発生し、最大震度5強が観測されました。さらに2か月後にも震度5弱の余震が起きました。熊本地震では、新潟県中越地震よりも活発に余震が発生し、日本の内陸で発生した地震としては、最大の余震数となっています。

余震以外にも注意すべきことがあります。九州では、1889年の明治熊本地震の際に、その後の6年間でM6クラスが4回発生しました。1916年には熊本県八代でM6クラス、その10か月後に大分でM6クラスの地震が発生し、1975年には阿蘇山から北北東15kmでM6クラスの地震が、その3か月に大分で、1997年3月と5月には鹿児島県薩摩地方でM6~7の地震が発生しています。

この7月、政府の地震調査委員会は一連の熊本地震について、熊本県熊本地方および阿蘇地方では、最大震度5強程度の強い揺れを伴う余震が発生する可能性は低下した、という見解を出しました(2)。しかし、強い揺れを伴う余震が起きる確率は小さくなったものの、余震活動は当分の間は続くので、熊本地震の周辺では、突然の揺れに見舞われることに注意して復旧・復興活動を行う必要があります。

地震断層と活断層

熊本地震は、九州地方にある布田川断層帯・日奈久断層帯の一部区間で発生しました(3)。この地震では、地震に伴って地表に大きなずれ(地表地震断層)が出現しています。益城町堂園(どうぞん)では、2.2mのずれが発見されました(図3)。こうしたずれは、断続的に約30km連なっていることが観測されています。国土地理院のGNSS(全球測位衛星システム)などの測量結果から地下の断層(震源断層)でのずれは平均で4m、気象庁・気象研究所が地震波を解析した結果では、最大6m程度のずれが推定されています。

九州中部には多くの活断層があり、中小の地震活動も活発な地域です。日本には約2000の活断層があり、地震調査委員会はこのうち約100の主要活断層での地震発生の可能性を検討し、地震による揺れについて考え方をまとめています。本震が起きた布田川断層帯の布田川区間では、平均のずれの速さが0.2m/千年で、1回のずれは約2mと考えられ、30年以内に地震が発生する確率は「ほぼ0%から0.9%」とされていました(4)。しかし、「0.9%」と言われても実感が湧かないと思います。
そこで、地震調査委員会は、活断層を個別に評価するだけでなく、地域の危険度を総合的に評価する方法を導入しました。「活断層の地域評価」と呼ばれるもので、九州地域、中国地域、関東地域の評価はすでに公表されています。九州中部でM6.8以上の地震が30年以内に起きる確率は「18〜27%」、九州全体では「30〜42%」とされています(図4)。

近年、九州では2005年福岡県西方沖の地震(M7.0)以外に大きな地震はなく、「九州には地震がない」と思われていたかもしれません。しかし、実際には大きな被害をもたらした地震は過去にもあり、今回も熊本地震が発生しました。震度7を2度続けて経験した熊本地震の教訓は、最初の大きな揺れに見舞われた家屋では引き続き強い揺れを受ける可能性が高く、特に地震直後の2~3日は厳重な注意が必要だということです。熊本地震で犠牲になった人の死因の多くは圧死と言われています。いったん避難した後で、損傷を受けた家屋に引き返してはなりません。一刻も早く学校や公共施設の耐震化を進めることも求められます。私たちは、今回体験したような強い揺れが日本中どこでも起こり得ると考えて、備えなければなりません。

文献
(1)「平成 28 年(2016 年)熊本地震」(気象庁による命名)は、4月 14 日 午後9 時 26 分以降に発生した熊 本県を中心とする一連の地震活動を指す。
(2)地震調査研究推進本部・地震調査委員会(2016年7月11日)、2016年6月の地震活動の評価
http://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2016/2016_06.pdf
(3)地震調査研究推進本部・地震調査委員会(2016年5月13日)、平成 28 年(2016 年)熊本地震の評価 
http://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2016/2016_kumamoto_3.pdf
(4) 地震調査研究推進本部・地震調査委員会(2013年)、九州地域の活断層の長期評価(第一版)

(2016年7月31日 更新)