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豪雪災害

第2回  最近の雪の特徴 ―雪が降らない地域での大雪被害とその対策―

執筆者

上石 勲
防災科学技術研究所雪氷防災研究センター センター長
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最近の大雪

2016年は1月中旬までは暖冬で雪も少なかったのですが、1月下旬になって急に寒気が入るようになりました。ふだん雪の降らない西日本でも大雪となったり、沖縄で雪が降るなど、雪や寒さによる被害が相次ぎました。また、長野県では、雨氷(うひょう)※によって樹木が倒壊し、長期にわたって道路が通行止めになるなど珍しい被害も発生しました。

※雨氷:雪が落ちてくる途中で、気温の高いところで水となり、さらに落下途中の気温がマイナスになった空気で冷やされた雨粒。雨粒は温度がマイナスでも凍っていないが、地上に落ちて物に接するとすぐに凍りつく性質がある。

2014年2月の南岸低気圧による大雪被害

2014年2月14~15日、九州から北海道までの主に太平洋側の各地で大雪による被害が発生しました。甲府では今までの観測記録の2倍以上となる114cmの積雪を観測するなど、各地で観測史上最大の積雪となりました。鉄道や道路などの交通インフラは各地で寸断され、山梨県が孤立するという異常事態となりました。物流にも大きな影響を与え、ある大手小売業では数十億円の損害があったと言われています。

この大雪によって26人が犠牲となり、負傷者は1000人以上に上りました。簡易駐車場などの建物はいたるところで倒壊し、その下敷きになって亡くなった方もいます。ちょうど休日だったため大災害にはなっていませんが、体育館のような大きな建物も被害を受けました。農業用ハウスも各地で倒壊し、農業被害は1000億円を超えています。このような建物の被害は群馬県や埼玉県で多く発生しており、大量降雪後の雨が原因となっていることが分かってきました。
日本損害保険協会の資料によれば、保険金の支払額が3200億円を超え、1970年以降の国内の風水害では3番目に多い額となっており、大規模な台風被害と匹敵する被害の大きさとなっています。さらに、スイスにある保険会社の調査によれば、2014年における世界の自然災害の中でも保険損害額は25億ドルで3番目、経済的損害額は50億ドルと最も大きな額となっています。

山梨県や埼玉県の山間部では多くの雪崩が発生し、道路や建物に被害を与えました。道路には数多くの雪崩が発生しており、山梨県では道路上にたまった雪崩の堆積物が高さ15mにもなるという現象もみられました(図1)。このような雪崩の影響もあって、道路の通行止めが長引き、集落の孤立も大きな社会問題となりました。
2014年2月のような大雪被害の原因については、現在調査研究を進めているところです。被害をもたらした気象条件として、現在分かっているのは次の3点です。
(1)広い範囲で大量の降雪があった。
(2)大量の降雪後に大量の雨が降った。
(3)崩れやすい雪が降った。
低気圧の動きが通常の南岸低気圧よりも遅かったことも、広範囲に大雪の被害をもたらした原因となったようです(図2)。

また、場所によって雪と雨の割合が違っていたことも分かっています。甲府では、降り始めから降り終わりまで気温がマイナスで推移したため、ずっと雪となりましたが、前橋や熊谷では降水の途中で気温が上昇したため雪から雨に変わっており、時間降水量のピーク時には雨となっています。また、東京では、雪よりも雨の割合が多くなっています。群馬県や埼玉県の農家からは、雪から雨に変わったタイミングで農業用ハウスが潰れだしたとの証言を得ています。これは、雪がスポンジのように雨を吸い込み、積雪の重量が重たくなったことが影響しているものと考えられています。

調査研究の結果、雪崩が多く発生したのは、甲府のように気温が降水中ずっとマイナスで、40cm以上という大量の雪が降った範囲と重なることが分かってきています。また、低気圧が原因で降る雪は上空の気温が低く、水蒸気が少ないところで発達した柱状結晶や雲粒付結晶ではない六角形の結晶をしており、冬型の気圧配置で降る樹脂状の雪よりも形が単純で、グラニュー糖や乾いた砂のように、崩れやすい性質があることも分かってきています。

南岸低気圧による大雪に備える

このような大雪に備えるには、どうしたらよいでしょうか。まずは、準備を怠らないこと。雪国では当たり前ですが、除雪用のスコップや長靴、滑りづらい靴、防寒具を用意しましょう(スコップは除雪の効率を格段に向上させます。その他、そなえる防災「特集 雪の少ない地域の雪対策」(http://www.nhk.or.jp/sonae/special/oyuki2/index.html)を参照してください)。また、情報を収集して余裕を持った行動をとることが大切です。
南岸低気圧による大雪の予測は難しいのが現状です。こうした点を踏まえて大雪が降る可能性を考慮して行動することも必要です。

大雪による損害を低減するために

南岸低気圧の大雪は企業活動にも大きな影響を与えることを踏まえると、予測情報を活用した物流システムなどサプライチェーンの柔軟な運用なども必要となってくるでしょう。そのためには、降雪予測の更なる進歩が期待されるところです。防災科学技術研究所では、冬型の気圧配置による大雪だけでなく、南岸低気圧による大雪にも注目しています。南岸低気圧の降水が雪になるか、雨になるかは、気温が0℃か1℃か2℃の微妙な違いの影響を受けます。太平洋側には積雪を測るセンサーも少なく、現状を把握することも困難です。雪の量を安価で測るセンサー開発や、レーダーの情報から雪の量を推定する方法の研究開発も進めています。できるだけ早く、これらの技術を確立して役立つ情報提供ができればと考えています。2014年2月の南岸低気圧による大雪後の調査では、NHKの記者と行動を共にすることも多くありました。そのときに、「『先週の雪は20〜30%重い』専門家が指摘 落雪の衝撃大きい」というように、私の言った雪の危険性、注意点などを、NHK甲府放送局ではテロップ(テレビ画面の文字情報)などで、一日中放送しました。これにより、大雪の被害の拡大が抑えられたと確信しています。今後も、このようにマスコミと協力して、災害情報を提供していきたいと思っています。

(2016年3月17日 更新)