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地震全般・各地の地震活動

第14回  まだ続いている東北地方太平洋沖地震

執筆者

平田 直
東京大学地震研究所教授、地震研究所地震予知研究センター長
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東日本大震災は続いている

2016年3月11日で、2011年東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震と略す)発生から5年が経ちます。2016年1月14日現在、全国47都道府県で、約17万8千人が避難生活を続けています(復興庁による)。地震直後の約34万4千人に比べれば減っているとはいえ、当初の約半数の人がいまだに困難な生活を余儀なくされているのです。この意味においても、東日本大震災はまだ終わっていません。一方、地震学的な意味でも、M(マグニチュード)9の超巨大地震の日本列島への直接的な影響はまだ続いています。今なお被災者が避難生活を続けているという事実は、震災からの復興を考えるためにも、次の大地震に備えるためにも重要です。

地震後の地殻変動

東北沖地震は、太平洋プレートの動きによって、日本海溝から東北の太平洋沿岸の地下にある地殻とマントルにおよそ500年かけてためられた変形が、約3分間で一気に解放された現象です。この地震に伴って日本列島は大きく東に移動しました(1)。国土地理院によれば、本震時に宮城県石巻市の牡鹿半島は東に5.3m動き、1.2m沈降しました。海上保安庁や東北大学の観測によると、地震時に太平洋沖の海底では数十mの東向きの水平変動が観測され、海洋研究開発機構の精密海底地形調査によれば、太平洋プレートの沈み込み口に近い海溝付近では50cmも東に動いたと考えられています。これらの変動は、地震時のプレート境界での破壊がおおよそ3分継続したことで生じたのです。
地殻変動はその後も継続しました。三陸海岸では、地震後1週間で東に20cmを超える大きな移動が観測され、その後5年たった今でも東へ移動し続けています。牡鹿半島の地震後の東への累積変動は、2015年末には1mを超えています。東北沖地震の前には、東北地方は東西に縮むように変形していました。例えば、岩手県の太平洋沿岸にある山田町は、2~3cm/年の速さで西に動いていましたが、地震時に逆方向の東向きに2m移動し、地震後も東進し続け、現在でも1cm弱/月の速さで東に向かっています(動きはすべて、長崎県福江を基準としたもの)。地震後の地殻変動は、地震前の日本列島の定常的な動きよりずっと大きいのです。
さらに、震源断層地の真上にあたる太平洋沖の海底では、陸上に比べてはるかに大きく動きました。地震時の大きな東進だけでなく、地震後にも海底は複雑に動いています。陸上と同様に東向きに運動している場所と、しばらくして逆に西向きに動き始めたところがあります(図1)。こうした地殻変動は、プレート境界で地震後もゆっくりと地震時と同じ方向にずれ続けている効果と、地殻・マントルの内部で地震時の急速な動きによって生じた変形がゆっくりと解消される効果が重なったものと考えられています。

引き続く余震と誘発地震

2011年3月11日14時46分の本震発生後、たくさんの余震が発生しました。この余震活動は、現在でも東北地方太平洋沖を中心に続いています(図2)。本震発生直後にはM7を超える大きな地震が頻発し、3月11日に3回、4月に入って2回、7月に1回など次第に減少しつつも、2012年、2013年、2014年にそれぞれ1回と、現在までに計9回発生しました。現時点で最大の余震は、本震後約30分後に茨城県沖で発生したM7.6の余震です。沿岸に近い所で発生すれば有感になるM5以上の余震数でみると、本震発生後の最初の1年間で666回、1年後から2年後までの1年間では84回と着実に減っていますが、それでも、2014年には30回、2015年には39回、今年になっても1月6日に1回発生しています。

余震がいつまで続くかを正確に予測することは難しいのですが、東北沖地震の余震が数年で終わることはありません。例えば、東北沖地震と同じような巨大地震である2004年12月のスマトラ島北部西方沖地震(M9.1)では、地震が発生してから7年半後の2012年4月に、M8.6の地震がスマトラ島の西方で発生しました(3)。この地震が2004年の地震の余震か、それに誘発された地震であるかは研究者によって意見が分かれていますが、超巨大地震の影響を受けて発生したことは間違いありません。東北地方の太平洋沖でも、M8を超える巨大地震が東北沖地震の余震域、その沖合側、北側あるいは南側の隣接部で発生する可能性は、今でもあると考えるべきです。再び大きな津波が沿岸を襲う可能性があることを前提にして備える必要があります。

地震後の地殻変動と余震活動が今でも継続していることは、M9という超巨大な地震が、5年経った今でも日本列島に影響を及ぼしている証拠です。この影響は、東北地方にとどまらず、関東を含めた日本列島全体に及んでいます。関東などでは、地震活動が現在でも東北沖地震の前に比べて活発です。逆に静穏化しているところもあります。日本列島は、超巨大地震の発生で不安定になり、現在も不安定な状態が続いているのです。もともと地震の発生しやすい関東地方では、大きな地震が起きる可能性は大きくなっていると考えるべきです。これは、次の巨大地震に備える必要性と、どのように備えるかを考えるうえで、忘れてはならないことです。

文献
(1)第10回  超巨大地震後の余震と地殻変動、図2
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20140901.html
(2)海上保安庁(2016年)、東北地方太平洋沖地震後の海底地殻変動観測結果、第284回地震調査委員会資料
(3)第10回  超巨大地震後の余震と地殻変動、図3

(2016年2月29日 更新)