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日本の火山活動

第13回  日常生活や登山時において火山噴火にいかに備えるか

執筆者

藤井 敏嗣
東大名誉教授 火山噴火予知連絡会会長
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活火山と常時観測火山

活火山というのは現在噴火しているか、将来的に噴火の可能性のある火山のことです。しかし、長期的な火山噴火予知の手法が確立していないため、わが国では最近1万年間に噴火したことがある火山を活火山と呼ぶと決めています。日本には、この定義に基づいた活火山が110あります(前回コラム参照)。このうちの47火山は気象庁が24時間体制で監視している常時観測火山です。現在、これ以外に3火山で観測点の設置作業が行われていて、完了すると常時観測火山は50に増えることになります。

噴火警戒レベルとは

2016年1月の時点で、常時観測火山のうちの32火山に活動の状況に応じて噴火警戒レベルが導入されています(図1)。噴火警戒レベルの数値は、火山噴火の大きさや激しさに応じて変わるのではなく、居住地にどの程度噴火の影響が及ぶのか、その大きさに応じて変わります。噴火の規模が少しくらい大きくても、その火山周辺に人が住んでいない場合は噴火警戒レベルがレベル3(入山規制)のままということがありますし、火口の近くに居住地がある場合には、ごく小規模な噴火でも居住地に被害が生じる恐れがあるため、レベルが4や5になり、避難が必要になることもあるのです。このように噴火警戒レベルは、噴火の影響が及ぶ範囲と、それに応じて取るべき防災行動を基準にした「災害情報」なのです。

もうひとつ重要な点は、噴火を予知してから噴火警戒レベルが引き上げられるとは限らないということです。噴火の予知は大変難しいので、噴火が発生してからレベルが引き上げられることもありますし、逆に噴火するかどうか分からないけれど、少し異常が見られる場合に、安全のために引き上げられることもあるのです。
火山を監視している気象庁によって噴火警戒レベルが4や5に引き上げられると、市町村長から噴火の影響範囲に応じた地域に避難勧告や避難指示が出されることになります。噴火警戒レベルが導入されている火山の周辺の市町村では、ハザードマップに避難所などを書き込んだ火山防災マップが各家庭に配布されているはずですから、普段からその場所や行き方を確かめておくとよいでしょう。避難勧告や避難指示が行われた場合は、それぞれの地域で用意されている避難計画に従って避難場所に向かってください。

登山者と噴火警戒レベル

噴火警戒レベルは、もともと居住者の安全に着目して作られているため、これまでは火口に近づく登山者への対策については、あまり詳しく考えられていませんでした。
2014年9月27日に御嶽山が噴火した時、噴火警戒レベルは1で、そのキーワードは「平常」となっていました。このため、噴火警戒レベルについて知っていた登山者でも、何事も起こらない静穏な状態と考えた人がいたとしても無理がないかもしれません。
活火山として正常な状態というのは、いつ小さな噴火が起きてもおかしくない状況を含むものなのです。しかし、「平常」というキーワードでは「静穏だから安心」というイメージを与えてしまうことから、御嶽山噴火の後に見直されて、警戒レベル1のキーワードは「活火山であることに留意」に置き換えられました。活火山に登るとき、登山者は、火口から突然噴火が起こることもありうると思わなければなりません。ほとんどの場合は何事も起こらないのですが、万一に備えておいた方がよいのです。
2014年の御嶽山の惨事の後、気象庁はホームページのトップ画面に「火山登山者向けの情報提供ページ」というボタンを作りました。このボタンをクリックすると、どの火山に警報などが出ているかが一目で分かるページに飛ぶようになっています(図2)※1。
活火山に登る方は、事前にこのページで火山の状況を確認することをお勧めします。また、このページは地形図になっているので、火口がどこにあるか調べやすくなっています。火口の位置を、あらかじめ調べておくことも重要です。

※1 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/map_0.html

突然の火山噴火にあったらどうする?

さて、気象庁から「火山の状況に関する解説情報」などが出ていないからと安心して、レベル1の火山に登ったとして、突然噴火が始まったらどうしたらよいでしょうか。
まず、噴火が始まった火口の位置を確認しましょう。そして、火口からなるべく遠ざかる方向に逃げるのです。ただし、谷筋やくぼ地などは避けましょう。火砕流などは谷筋に沿って流れます。また、有毒な火山ガスも低い場所にたまるからです。
近くに山小屋やシェルターがあれば、ひとまず逃げ込んで、噴火の様子を確かめるのもよい方法です。大きな噴石が飛んできたり、小石や火山灰が大量に空から降ってきたりするような状況であったら、収まるまでしばらくその場でじっとしていることです。
山小屋やシェルターがない場合は岩陰などに隠れて、頭や体をリュックサックなどで保護することも必要です。そのうち視界が晴れ、小石などが降らなくなったら、速やかに下山しましょう。もしヘルメットを持っていなかったら、「万が一」石が降ってきても、頭に当たらないようにリュックサックなどで保護しながら移動するとよいでしょう。

重要なのは火山噴火についての正しい知識

いざというとき噴火から身を守るためには、普段から火山噴火についての正しい知識を身につけておくことが重要です。日本火山学会が発行している「安全に火山を楽しむために」というパンフレット(図3)も役に立ちます(火山学会のホームページ http://www.kazan-g.sakura.ne.jp/J/index.htmlから無料でダウンロードできます)。この中には火山噴火の種類など、火山についての基礎知識も載っていますから、登山の前に一度読んでおくか、印刷して携行するとよいでしょう。
活火山への登山は、地球のダイナミックな活動を実感できる素晴らしい機会です。火山が静かな時には十分な準備をして、火山を楽しみましょう。

(2016年1月31日 更新)